Planar 50mm F1.4

Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #2 ピント問題その1

個人的に初期玉神話は崩壊しました(苦笑)。

というよりも、結局はS/N関係なくただの当たりかそうでないかだけなんだなあ、というのが素直な感想です。工業製品には公差があり、まれに感触が良い固体が混じるなんて聞きますがまさにそんな感じ。

ぼちぼち実写比較を始めていたのですが、S/N:581の固体はどうも一眼レフでピントを外すミスショットが多く、しかたがないのでまた定規を撮影してみたら驚きの結果が出ました。以下、呼び方が面倒なので581番台をA、79番台をBとして味気なくいきます。


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Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #1 外観

比較するのはPlanar 50mm F1.4のS/N:581(1975年の最初期)とS/N:79(1990年代の安定生産期)なので、おもにAEJとMMJの違いとなります


鏡胴の色味が違いますが、実物でも黒の質感が違います。これはおそらく消耗の差で、外観のマット具合は個々によってばらつきます。写真ではうまく撮れていませんが、T*の赤がAEJは朱色と表現できる明るい色合いで、これはAEタイプに共通する明確な違いです。
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Planar 50mm F1.4のクモリ

Planar 50mm F1.4がクモる症状が増えているみたいです。

このクモリはPlanar 50mmのレンズ構成で唯一、貼り合わせがある4枚目と5枚目のガラス接合面で起こります。一般的にはバルサム切れなんて呼ばれる症状ですが、いつの頃からか天然樹脂ではなく合成接着剤などが使われるようになったらしいので、その劣化で持病のようなクモリが出るとのことです。

ZEISS
http://www.zeiss.de/content/dam/Photography/new/pdf/de/downloadcenter/contax_yashica/planar_t_14_50_ger.pdf

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実際のところ、レンズ内部の悪化にはさまざま原因や症状があるので、こういうケースだからこうと簡単には決めつけられません。ですが、この50mmの場合には決まって同じ箇所、かつ製造年の新しいレンズにも出てしまうということで、ほぼ原因のあきらかな不具合となっています。

バルサム切れについて詳しく解説できるような知識はありませんが、レンズ内部にニュートンリングが発生する症状が一番分かりやすく、その他接合面のクモリ、ボツボツした劣化などもひとまとめにされているようです。確かに、ローライの古いHFT Planarには定説どおりのニュートンリングがうっすらと出ていたのを覚えていますが、こちらはクモリの症状はなく画質低下も見られませんでした。


ちなみにこのニュートンリング、一見、バルサムか?と疑ってしまいますが現行のNOKTON 58mm F1.4でメーカーの回答も正常とのこと。つまり、このレンズはすべての個体がこう見えるらしいです。

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なんとなく解せないものがあるので自分でも調べてみましたが、どうやらメガネレンズで見られる現象らしく、価格コムでもちらっとこの現象について触れている投稿もありました。縞自体はバルサム剥がれのような不均一性もなく、蛍光灯のみで観察できる事例なので以下の説明にあるような製造上の都合なのかもしれません。

「プラスチックハードコート応用技術」 シーエムシー出版

4 ハードコート膜の高屈折率化
干渉稿とはレンズ基材とハードコート素材の屈折率に差があり、膜厚が不均一であると生じる現象である。 ~中略~ 特に三色を基本とする蛍光燈下では、その干渉稿の見え方も顕著である。 ~中略~ 干渉稿を無くすには膜厚を均一にすることよりも、ハードコート膜の屈折率とレンズ素材の屈折率を合わせること、即ち、レンズ素材とハードコート面の界面反射を無くすことが抜本的対策であることは言うまでもない。

教えて! goo
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/5264257.html

先日めがねを購入したのですが、レンズ表面に光が反射しているところを見ると緑と紫の縞模様が見えます。
今まで何回もめがねを変えていますが、このような現象は始めてです。

これはめがねの品質によるものなのでしょうか?
それとも避けられないものなのでしょうか?

品質の問題なら、めがね屋に交換を要求しようと思っています。

よろしくお願いします。

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大学病院の眼科医です。

生地の屈折率と多層膜コーティングの屈折率の違いによって起こる現象です。
屈折率1.74のレンズは多少なりとも起こるようです。
酷い場合は交換してくれるでしょうが、ある程度仕方の無いことでしょう。
レンズメーカーの技術者に聞いた事で、間違いないと思います。

※だいぶあとになって分かったことですが、写真レンズの場合、この種のニュートンリングはバルサム(合成接着剤)と硝材の屈折率の差で起こるらしく、おそらくNOKTONの後群だけに見えるニュートンリングはこれが答えでしょう。


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Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #0 プロローグ

Planar 50mm F1.4の初期玉神話……といっても、もう何のことだかわからない人も多いでしょう。

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あれは2006年あたりの話。EOS 5Dというアマチュアが購入できるフルサイズが登場したことによって、いったん死にかけていたCONTAXユーザーの熱意はよみがえりました。マウントアダプターを使えば、CONTAXのMFレンズ群がフルサイズデジタルで使うことができる!! 

もちろん、EOS-1Dsシリーズ(90万円)に対する格安のフルサイズとはいえ、当時の実売価格で30万円強。実際に、どれほどのひとたちがEOS 5Dを手にできたのかはわかりませんが、それでも、京セラのカメラ事業撤退によって未来の閉ざされたCONTAXレンズに希望の光がささやかに舞い降りたのです。

おりしもADSLの普及によって、インターネットがより身近になっていた時代。CONTAX専門店のWEBサイトによって公開されたPlanar 50mm F1.4の研究結果が、EOS 5Dとの相乗効果によってざわざわとマニア界隈をさわがせていました。いわく――


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その辺写真の機材ブログ。画像と記事は時々整理、日付も変更。

お問い合わせ: ahocontaxmania@gmail.com



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*メインはCONTAXレンズで、その他ROLLEI、HASSELBLADなど少々。レンズ構成ごとにページが分かれていてわりと読み応えあり。ボディはなし。乱発され内容も薄かったこのシリーズの中で唯一面白かったZEISS本。作例よりも語り中心。
*おすすめ。文字の分量は少なめだが書いてあることは濃い。写真よし、記事よし、品よし。
*おすすめ。レンズ描写にテーマを絞っていて文章が読み応えあり。内容的には無難なレンズ本と濃厚なマニア本の中間あたりで、レンズの特徴はそれなりに出ています。いまいち売れなかったのは作例に面白味がないため。
*メーカーの公式本。たしか、MM時代のレンズ群にMTFチャートとプロの作品とZEISS技術者のインタビューなど。メーカー発なので当たりさわりのない内容、コレクター向け。定価4,000円くらいの豪華本だったので、それを目安に購入検討を。
*詳細なボディ解説で、たしかレンズはクローズアップされてなかったはず。あんまり記憶に残っていません。
*「季刊クラシックカメラ 10ツァイスTレンズの描写力、表現力」に参加している築地氏が書いているので兄弟本みたいな内容。平均以上の充実度ですが、わりとあちこちに記事を寄せている人なので内容が重複する印象あり。
*CONTAXレンズを数値評価でばっさり。当時のユーザーの情熱的な声とは対照的に、たいして褒められていないのが面白かったり。
*90年代クラカメブームの隠れた先駆者で、古今東西のレンズを一律で横並びに評価した記事は一部の人たちにじわじわと火をつけました。レンズ評そのものは淡泊なので、ネット時代に参考になるとしたら機材運用に対する現実的なものの見方でしょうか。
*Planar 50mm F1.4はこの67mm金属フードに55-67ステップアップリングを合わせると軽快かつほどほどの深さでベター。
*上記組み合わせの55-67ステップアップリング。
*ここまでのクオリティがいるかはともかく、安心の国産アダプター。中国製を選ぶ方は確実な遠景撮影ができる代わりにミラー衝突の危険が高まることを承知の上で。宮元製作所の直販サイトの方が安いかも。

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