近頃、人気沸騰の可変ND(バリアブルND)にはとても複雑な特性があることをご存じでしょうか?

この特性を理解しないままに可変NDを買ってしまうと、「やっぱ安物はだめだ―」「けっこう高かったのに使いものにならないよー」などの誤った評価をしてしまいがちです。それを防ぎ、ビギナーの皆さんが事前に正しい情報収集ができるように、超かんたんに可変NDの解説をしたいと思います。


まず、可変NDにはふたつの特性があります。

1、ND値を上げるほど色ムラが大きくなる
2、広角レンズほど色ムラが大きくなる

これは可変NDの仕組み上、絶対に避けられない特性なので、高いフィルターを買っても同じです。特に20mmを切る超広角レンズと可変NDの相性は最悪です。(※メーカーも使用を推奨していません)

28mmレンズ
ND2 - ND4 - ND8 - ND16 - ND32

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50mmレンズ
ND2 - ND4 - ND8 - ND16 - ND32
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このふたつの特性が合わさって極端に強くなった色ムラは、X状に変形して画面の階調をめちゃくちゃにします。これが有名なX字ムラで、X字ムラが出ないと宣伝しているメーカーは、単にフィルターの回転角を制限してND400などの大きな数値を使わせないようにしているだけです。

【可変NDのおもな種類】
ND2-32……減光量を5段までの回転角に制限してX字ムラを防いでいる。
ND8-128……ND2-32を元にして全体を2段分暗くしている。X字ムラは出ない。
ND2-400……減光量はほぼ最大まで使えるが、X字ムラが出る。

では、そこまで大きくないND値で色ムラがすごく出る、色ムラは気にならない、と言っている人たちの違いはなんなのでしょうか? その答えは、

「メーカーによる組み立ての差(もしくは個体差)によって、色ムラの出る位置が違うから」

可変NDの濃い色ムラは全方向に出るのではなく、片側の斜め、上下、左右のいずれかに出ます。つまり、この色ムラはフィルターのねじこみと同時にクルクルと回転し、最後に停止した位置が(フィルターがきちっと締まった位置が)色ムラの出る位置となるのです。


21mmレンズ ND32
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これを見れば、どれがベストかは一目瞭然でしょう。一般に色ムラが目立たないと言われる可変NDは、色ムラの濃い部分が上下に隠れているのです。(※当然、レンズ側のフィルターねじがどこで止まるか?の相性問題もありますし、ステップアップリングを間に挟んでもフィルターの停止位置はずれます)

この色ムラが上下に来なかった場合には、フィルターを緩めて色ムラの位置調整をすることもできますが、ゆるゆるのフィルターで写真を撮るのは無理があるので、テープで固定するなどの工夫が必要になります。


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重要な事柄はもうひとつあります。それは……

「可変NDはPLフィルターの2枚重ねでできているので、PL効果がある」

ND+PLでお得じゃないか!と思われるかもしれませんが、ND値最大=PL効果最大ではない難しさがありますし、画面内の空や水が勝手に暗くなったり明るくなったりするのは、こだわりのある風景写真には向きません。

したがって、可変NDのなりゆき任せのPL効果を嫌う方は、“反射除去効果がない”と明言されている高級品を選ばなければなりません。

Kenko
NDフィルター バリアブルNDX II

従来のバリアブルNDXはフィルター無しと比べるとわずかに黄色みがかっていた。だが「バリアブルNDXⅡ」はニュートラルな色味を実現した可変式NDフィルターだ。

また偏光膜を使用しながらもPLフィルターのような反射除去効果はなく、減光効果のみを得ることができる。


では、このような高級品とそれ以外はなにが違うのでしょうか? それは、可変NDの具体的なしくみにあります。

【高級品】PL効果なし
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【中級品】PL効果あり
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【初級品】PL効果あり
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一般に、PLフィルターの値段はCPL>PLなので、可変NDもCPLが使われている製品のほうが高価です。さらにPLフィルター2枚分となる偏光膜はニュートラルグレーを崩し、最悪、解像力にも影響を与えるので、本来、可変NDはかなりコストがかかるものだということが分かると思います。

特にグレーバランスは改善が難しく、中級品でもこれぐらいの色かぶりはふつうにあります。
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自分が使っている可変NDの特性が知りたい方は、まず、目の前にフィルターをかざして、スマホやパソコンの液晶画面を見てください。その状態で(ND値は固定のまま)フィルター全体を回して真っ暗になれば、その可変NDにはPL効果があります。

次に、色ムラの位置を確認するために、使いたいレンズにフィルターを装着して、部屋の壁を撮影してみてください(手ブレしていて構いません)。ND値大きめ、広角レンズであれば必ずどこかが暗く陰ります。逆に標準~中望遠以降のレンズであれば、可変NDの色ムラはほぼ無視できるでしょう。


【可変ND(バリアブルND)の特性まとめ】
  • ND値を上げるほど色ムラが大きくなる
  • 広角レンズほど色ムラが大きくなる
  • 目立つ色ムラは対角、上下、左右のいずれかに出る
  • 色ムラの位置はフィルターねじこみの停止位置によって変わる
  • 一部の高級品以外ではPL効果がある
  • 一部の高級品以外では色かぶりが目立つ

以上が、覚えておきたい可変NDの知識ですが、さらに実写画像を交えた詳しい解説に興味がある方は過去に書いたこの記事をご覧ください。
【超詳細】可変NDフィルター研究 K&F CONCEPT バリアブルND+CPL(ND2~ND32) 82mm