オールドレンズでなに買おう♪ やっぱ、Carl Zeissってすごそうだし、すごく評判の良いCONTAXのPlanar 50mm F1.4だねっ!

……となると、気になるのがAEJのぎざぎざ絞り。こんなの、絶対にボケ味が悪くなるに決まってるんだからMMJしかありえない。


なんて考えは間違いです。
なぜなら、ボケの形が気になるような状況ではいっさい絞らないから。


この写真、何の先入観もない方なら気にならないのかもしれませんが、写真的にこういう撮り方をしてる人はほとんどいません。なぜなら、このように角ばったボケは人為的過ぎて、自然界のイメージとかけ離れるからです。
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特に草花では丸みを帯びたボケのほうがよく馴染みます。
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ようするに、多くのCONTAXユーザーがAEJのぎざぎざ絞りをなんの文句も言わずに使っているのは、ボケにぎざぎざが出るのがまずい=ボケの丸みが重要な場面では元から絞り開放の選択肢しかないからです。(※MMJを使えばぎざぎざは出ませんが、絞り込めば角ボケになるのは同じなので)

そして、そのことを分かった上で絞り込むにしても、ぎざぎざは常に一定の形で出てくるわけではありません。以下は同じF2ですが、初心者の方はボケの印象がまるで違うことに驚くのではないでしょうか。つまり、ボケ味は光の強度によって変化するものである。


やわらかな木漏れ日ではボケのエッジもやわらかく、ぎざぎざはほとんど目につきません。
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夜景のライトはとても強い光なので、絞り羽根の形はくっきりと出ます。この状況で理想を求めるなら、現代の円形絞りが必要です。
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というわけで、Planar 50mm F1.4のぎざぎざ絞りはそんなに単純な話ではなく、丸ボケの重要度が高い絵柄ではAEJにしろMMJにしろ、絞り羽根の不自然な形が出てしまうので絞り開放しか使わないし、F2以降の角ばったボケが気にならないような絵柄ではボケの重要度が低く目立たないので、AEJのぎざぎざも気にならない、というわけです。



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これがPlanar 50mm F1.4 AEJの現物の形です。このギザギザが発生する理由は、絞り羽根の長さがわずかに足りないからです。F2.0以降で段差を作っている羽根の先をもうすこし延ばせば、きれいに内側のラインが繋がることが想像できると思います。一時期のCarl ZeissがBokeh(ボケ)の形状に無頓着だったのは本当のようで、例えばYASHICA/CONTAX以前の最高級一眼レフだったContarexの交換レンズ群も、中間絞りで星のようなぎざぎざが出現しますし、東西に分裂していた頃のCarl Zeiss Jenaにもまったく同じ絞り形状が存在します。

F1.4
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F2.0
9601
F2.8
9602 
F4.0
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今回、例に挙げたのはPlanar 50mm F1.4 AEJですが、この絞り形状とF値の関係はレンズによって多少変わり、たとえば、Planar 50mm F1.7 AEJはF2.8で絞りがきれいな六角形になりますし、Planar 85mm F1.4 AEGではF4でも角に若干のささくれが残ります。


では、この絞り羽根の形状が、撮影条件によってどのように関わってくるかを詳しく見ていきましょう。


Case.1 薄暗い木漏れ日
F1.4
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F2.0
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F2.8
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F4.0
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意外や意外、あの独特な絞り形状がまったく出てきません。これは背景の光がとてもやわらかいためで、この状況ではAEJかMMJかの区別はつきません。



Case.2 やわらかな木漏れ日
F1.4
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F2.0
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F2.8
13114

F4.0
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やわらかい光で実際に絵作りした画像です。この場合、絞り込んでもボケ味は大差ないのですが、ボケ量が欲しいので作者的に好ましいのはF1.4です。



Case.3 緑の反射
F1.4
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F2.0
13131

F2.8
13132

F4.0
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構図の整理が不十分ですが、なめらかなボケです。これもそこまで光が強くないことが理由で、目を皿のようにしてギザギザを探さなければ普通の六角絞りに見えます。



Case.4 明るい木漏れ日
F1.4
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F2.0
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F2.8
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F4.0
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太陽の光が直接差し込んでくるような状況になると、絞り羽根の形がはっきりと見えてきます。この中に混じる強い丸ボケにはぎざぎざによるつんつんしたとがりが観察できます。



Case.5 温室に差しこむ陽射し
F1.4
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F2.0
13128

F2.8
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こういう場面でF1.4ではボケ過ぎなので、むしろF2.8のほうがまとまりがあります。丸ボケは完全に脇役になっているので、端のほうに見えるボケの角つきも気にはなりません。



Case.6 温室のやわらかい光
F1.4
13124

F2.0
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F2.8
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やわらかなボケのイメージショットという感じで、画面内に目立つ丸ボケがなければ、絞り羽根の形は特に問題になりません。



Case.6 強い逆光
F1.4
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F2.0
13139

F2.8
13140

F4.0
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主役がいませんが、この場面に大きめの人物が入った場合には6角ボケでも気になりません。F2のようにぎざぎざだと写真趣味でない人でもすこし変だと思うかも。



Case.7 夜景のライト
F1.4
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F2.0
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F2.8
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F4.0
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夜景のライトはレンズ内外に付着したゴミや年輪状のスジなど、普段は見えないものが見えてしまうので、このような状況で完璧さを問うのは酷です。丸ボケを生かしたいのなら絶対に絞ってはだめです。



以上の内容をまとめると、このようになります。

  • Planar 50mm F1.4 AEJのギザギザ絞りの見え方は場面によって変わる
  • ギザギザ絞りが問題となるのは硬い光(強い光)の丸ボケを絞ったとき
  • しかし、絞り込むとボケが角ばるので、丸ボケが重要な場合にはそもそも絞らない
  • 絞り込むとぎざぎざが目につくのはF2付近で、F2.8以降はほぼふつうの角ボケに見える
  • 夜景のライトは特殊条件と考えるべき(とても光が硬い)

ただ、この法則はPlanar 50mmをはじめとした標準と広角系には当てはまりますが、Planar 85mm F1.4など口径の大きい中望遠以降ではやや事情が違ってくることにご注意ください。

その解説は、またの機会に~。