どんっ。
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α7IIにこのものものしいレンズは何かというと、中判用のApo-Makro-Planar 120mmでございます。アダプターの組み合わせはCONTAX 645-EOS+EOS-NEXで、さすがに重いレンズに中国製マウントアダプターの二段重ねだと製造公差のゆるさが仇になるのか、EOSの接続部で縦方向のおじぎが発生してしまいました。

その対策としては、マウントアダプターの板バネをかっちかちに固くすればよいのですが、明確なお辞儀が発生するということはマウント同士のガタが多いということでもあるので、レンズを振り回していれば、いずれ板バネが重さに負けてまたおじぎがはじまるはずです。

重い望遠レンズでもしっかりと中国製マウントアダプターで支えられるようにすると、当然、それ以外のレンズの取り外しが固くなり、ほぼ専用の物となってしまいますがしかたありません。


改造じゃ~~~っ!


で、改造自体はいつもの工作と呼べるものですが、一般的なマウントの概念図を作ってみたのでちょっと寄り道をしてみましょう。


誇張ありきの図ですが、レンズマウントの仕組みはこのようになると思います。カメラ側のマウント座金とレンズマウントの爪には微妙な隙間があり、その隙間を埋めるのが板バネとなります。レンズを支えるのがこれだけだと簡単にずれたりしそうですが、他の接触部にも段差やマウントロックがあるので、これでも十分な剛性感となります。後付けのマウントアダプターでなければ

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中国製マウントアダプターでよく言われるのは加工精度のバラつきですが、レンズ側の噛み合わせに限っては、この板バネの強さ=曲がり具合を調節することで実用十分となります。ところが、使うレンズが重量級になってくると、この加工精度の低さが無視できなくなるのです。

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レンズマウントの爪とアダプターの隙間が大き過ぎると、レンズの傾く力に対して板バネの負担が大きく、縦方向のガタが発生する可能性が高くなります。逆にこの隙間が小さいとどうなるでしょうか。

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レンズの傾きが抑制されることで板バネは安定した反発力を発揮することができ、よりしっかりと長持ちする強度が得られるはずです。さらに、仮の話としてこの隙間がなかったら?

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理論的には完璧な剛性感となるはずですが、パーツ同士の摩擦によりレンズが捻じ込めない事態となるでしょう。このような考察を踏まえた上で、個人的な経験を交えると、三脚座がなくカメラ側で全重量を支えなければいけない重たいレンズの場合、メーカーはレンズマウントのクリアランス(製造公差)を微妙に調整してマウントの噛み合わせをきつくするなどの処置をおこなっているのではないかと思われます。

というわけで、今回、ガタの出たマウントアダプターの組み合わせをじっくりと観察すると、あきらかに上記のクリアランスが大きすぎることが判明したので、これを狭める改造を実行したいと思います。このクリアランスが大きいかどうかの判断は、マウント時にレンズの爪が板バネにかかる直前で捻じこみを止めてどれくらい縦方向にガタつくかを見ることです。



かなり寄り道が長くなりましたが、Apo-Makro-Planar 120mmで完璧な剛性感を得るための改造は、ごくごく簡単な作業となります。画像は分解後のマウント金具裏面ですが、板バネの周囲になにやら塗られているのが分かるでしょうか。これは何をしたのかというと……
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固まると個体化するエポキシ接着剤で板バネ周囲の高さを上げ、噛み合わせ部位のクリアランスをぎりぎりまで狭くしています。これによってマウント同士のガタが最小になり、レンズを完全に捻じこんだ状態では板バネが最大限の仕事をしてレンズを支えることとなります。

これでもう重たいレンズを振り回しても大丈夫っ!(のはず……)
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ずいぶん仕上げが汚いけど、こんなんで精度が保てるの?と思われるかもしれませんが、精度が必要なのは表側のフランジバック基準面です。裏側はあいまいな板バネでレンズを支えていることからわかるように、マウント金具をフランジバック基準面に押しつけることさえできていれば、結果オーライなのです。

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今回はApo-Makro-Planar 120mm専用として、板バネの周囲が軽くこすれるくらいぴったりに調整しましたが、やり過ぎたと思ったらカッターの刃を立てて削ればいいし、足りなければエポキシ接着剤を塗り重ねるだけなので作業は楽です。面倒なのは、パテのように接着剤を盛り上げるので乾燥に時間がかかることぐらいでしょうか。二液を混合させたらしばらく放っておいて、ネバネバしてきたらつまようじで盛るのがコツです。

そうして、現物の噛み合わせ具合に納得できたら、板バネの固さも再調整して完成です。


そんなこんなで、出来上がりましたっ!!
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え? 最初と同じ画像じゃないかって? 
だって、物撮りめんどくさいんだも~ん。も~ん。 ('ェ')

改造後のアダプターの感触は、がっちりとマウント部が食いついて、そのわりには板バネの固さだけに頼らない方式なので捻じこみはスムーズです。ただし、特定条件に最適化してしまったこのマウントアダプターは、当然ながら他のレンズには固すぎてマウントさせることはできません。まあ、もし汎用に戻したかったら接着剤を盛った部分を削ればいいだけですが。


エポキシ接着剤の硬化時間は何種類かあるので、お好みで。

※いちおう書きますが、硬化した接着剤の剥離や削りカスなどによるカメラ内部の物的損害の可能性には自己責任でお願いします。

んで、普通はこんなことしなくてもマウントアダプターの板バネを立たせるだけで十分に重いレンズも支えられると思います。今回は、たまたまCONTAX 645-EOSとEOS-NEXの組み合わせが最悪だったということで。