このレンズを好きか嫌いかといったら、CONTAXで他に選択肢がないのでまあなんとなく使っているとしか言えないのですが、画角が平凡な分だけとびきりの感動はないように思います。色は明らかに良いのでアベレージが高いといった感想ですが、このレンズでなければ!といった部分は他社レンズの方が思い浮かぶという……。

なんてネガティブ感のある前置きですが、CONTAXの他のレンズは画角のインパクトと合わせてより個性的なのでこの50mmはそれよりも存在感が落ちる、というのが自分の感想です。



・絞り開放のピントは昔の標準レンズとしてはごく普通で特別なキレはない。
・絞り開放の色収差は平均的。目立たないが極小というわけでもなく、実用範囲内。
・ボケ像も特筆することはなく、背後の丸ボケは昔の過剰補正型ほどではないが輪郭線がやや立つ。
・絞り込めば高解像で申し分ない。
・歪曲は樽型で強く、建物の撮影には適さない。
・周辺光量はごく普通。

・唯一独特な描写と言えるのは発色とコントラストの良さで、これは初期のAE時代の中でも鮮やかかつ濃い部類。
・この色彩表現が日陰、暗がり、逆光、夜景など厳しい撮影条件でも発揮されることで、特に絞り開放の古めかしい描写に味を与える。
・AEJはやや青みがかり相対的にMMJはやや黄色いが誤差の範疇。他のCONTAXレンズほど時代による発色の差はない。

・AEJとMMJで逆光性能に違いがあり、Planar 85mm F1.4 AEGほどではないが正面寄りの光に対して敏感な階調変化が起こるのがAEJ。
・AEJの階調変化とは内面反射の増加によるシャドー浮き、軟調化。それが限度を超えると明確な指向性フレアが発生し画質が破綻する。
・以上の差によって、逆光耐性が低めでクラシックな雰囲気により近いのがAEJとも解釈できる。
・ただし、これは70年代当時のフィルム性能に合わせたZEISSの意図的なチューニングと見る。

・一部で囁かれる当たり玉はごく普通の個体差の範疇で特筆すべきことはない。
・貼り合わせ面(バルサム)の劣化した個体が見られるようになってきたが、ある時期からのMMJはぶつぶつした気泡が発生するクモリとなり逆光性能に直撃する。



というわけで、1970年代のレンズなのに現代に通用する豊かな色彩表現を備えるがその他は平凡で無難、というのが個人的な感想になります。これがなぜなのか?というのは、もともと一眼レフ用50mm F1.4というスペックに設計の幅がなく、各社が同じレンズタイプで改良を続けていった結果、描写も似たり寄ったりになっていることが原因で、その中でもPlanar 50mm F1.4は早くからCarl Zeissが目指していたコントラスト重視という設計思想に豪華なマルチコーティングが合わさることで、他社とは一味違う気持ちの良い色を実現していた、ということです。

Planar 50mm F1.4を正当に評価するなら、カラー時代に発色とコントラストの良さで頭抜けていた完成度の高いMFレンズであり、その現実的な使いこなしは、AEJの弱点を了解しつつ発色の良いオールドレンズとして楽しむか、より万能になったMMJで貪欲にあらゆる場面を狙うか、といった感じです。個人的な思い入れは特にないレンズですが、高級品としての外観/手触りの良さはAFに移行していった他社にはないものなので、それだけで満足できるはずです。



※画像は使いまわしです。

絞り開放からの瑞々しいコントラスト。
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ボケ質の変化はこのレンズに限ったことではありませんが、こんな滑らかさを見せたと思ったら…
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…状況によってはぞわぞわっとした後ボケにもなります。左端。
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歪曲は中距離、被写体に正対してこの程度。
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AEJは反射防止の甘さがクラシカルな味わいをもたらします。
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接写+ピント面から連続したアウトフォーカスという条件が揃うとボケが回り始めます。性能が明らかに不足している時期のレンズではないので通常撮影ではグルグルはまず出ません。
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色収差が目立ちますが、ゴリゴリ現像で色彩を強調しています。
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MMJですが、水面の反射がバルサムクモリに作用したらしくややぽやんとした写り。
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日中の日陰で色がキラキラ。無補正。
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絞りf2.8
現像でコントラストを立てると多彩なニュアンスを含んだ高彩度になります。
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絞りF4
晴天時はまんま現代のレンズ。
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夕景。被写体に意味はありませんが、まさにPlanarという感じの艶が出ていたので。
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夜景でもきちんと色が乗ります。
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50mmのAEJはどことなく枯れた青を出します。
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現代の高画質レンズにはない不完全な収差補正+豊かな色彩表現=Planar 50mm F1.4の強み。
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