ちまたでピントが見えない見えないと大評判(?)のVario-Sonnar 28-70mmを他の単焦点と比較してみました。

ズームレンズなのでできるだけ撮影範囲を合わせる努力はしましたが、それぞれに違う実行焦点距離やF値不明のためにまあだいたいこんなものだろうとゆるく眺めながら、Vario-Sonnarの絞り開放を計測的な画像で確認することが今回の目的です。

比較はこんな感じでVario-Sonnarの各焦点域を見てみます。比較対象となる単焦点レンズは像倍率ができるだけ一致するように三脚を前後させつつ絞りはAEの数値をにらみながらてきとうに絞り込みました。

・Vario-Sonnar 28-70mm(35mm域 F3.5~F4の間?)- Distagon 35mm F2.8(F3.5やや絞り)
・Vario-Sonnar 28-70mm(50mm域 F4付近?)- Planar 50mm F1.4(F4)
・Vario-Sonnar 28-70mm(70mm域 F4.5)- Planar 85mm F1.4(F4やや絞り)


それにしても……定規はいつの間にか傷んできてるし、黒バックは前々から傷スレ多くてスポット修正しまくり。でも、どうでもいい物撮りごときにお金をかけたくないのがこのケチケチBlogの脇の甘さよ。


以下、各三組の画像はおのおのピントブラケットした中からピーク位置、前後のボケ量が同一と思われるものを選び出しています。絵柄は完全一致ができませんでしたが、200線のピント合わせだけは厳密に追い込んでいます。

A: Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ(35mm域)
1595

B: Distagon 35mm F2.8 AEJ
1596

まず第一声、AのVario-Sonnarはこりゃピント見えませんわ…。線は十分に細いのですがコントラスト不足で最短撮影距離なのにだらだらと平坦な目盛りが続いていくだけ。確かに、「F値の暗さ+広角域による被写界深度の深さ」というのはピントの見難い主要因でしょうが、BのDistagonは等倍画像を見ても、いちおうここかな?という強い線は出ています。

AはボケがBよりも硬く、特に後ボケがどこまでもくっきりとしているのが特徴的です。



A: Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ(50mm域)
1597

B: Planar 50mm F1.4 AEJ
1598

50mmはなかなかに似た描写ですが、ボケは厳密に見ると前も後ろもAが硬いです。アサヒカメラによると、この焦点域はやや大きめの過剰補正ということですが、それよりも像倍率がそろわなかったことが描写の差に影響しているかもしれません。(※Bの方がわずかに寄っているために被写界深度の差でボケも大きくなる)

ピントピークはAに微妙な見やすさが出てきて、実際に50mm付近は通常のピント合わせが可能です。



A: Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ(70mm域)
1599

B: Planar 85mm F1.4 MMJ
1600

これはAの70mm(実焦点距離67.9mm)に対しBが85mmと画角がそろわず、パースもぜんぜん違います。絵のそろいがいまひとつなので互いのボケ描写の差はさておき、さすがに実写の印象どおりAのボケは前後ともにバランスよく、ピント位置のコントラストも明確に立っています。Vario-Sonnar 28-70mmのズーム域の中で、まさに一番美しく高画質の領域。



【まとめ】
基本的な話としては“F値の暗いズームレンズの広角側はピント合わせが難しい”ということになると思いますが、キヤノン製のEF28-105mm F3.5-4.5 USMを所有していたときには明らかにそちらの方がピント合わせが楽だったので、Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5の描写にはファインダースクリーン上のピント合わせを困難にするなにかがあることは確かです。

そのなにかとは、開放時のハロによるコントラスト低下と今回のテストにあらわれた後ろ側への被写界深度の深さなのかは断定できませんが、とにかくこの定規撮影で35mmを使った場合にはピントがさっぱり見えずにヤマカン撮影になってしまったことを告白しておきます。

ただし、アサヒカメラの記事によると、このレンズは端から端までのズーム操作でピント移動は生じないということなので、70mm側でピントを合わせたあとに広角側で構図をつくるという昔ながらの手法で、なんとかやりくりは可能です。(※ミラーレスでこの方法を試したところ、明確なピント移動が発生していました。マウントアダプターのオーバーインフが移動するレンズ群の整合性を狂わせているのかもしれません)


最後にZEISSのデータシートから引用。

Vario-Sonnar 28-70mmが困るのは、ピントが見難いからといってただの駄レンズとは呼べない良さがあるからです。絞り開放のMTFはVario-Sonnar 28-85mmのように四隅で急激に落ちずになだらか。解像力の数値評価は広角側がいまいちで望遠側が優秀ということで、実写の印象もまさにそのとおりです。発色は明るくやわらか、マクロ域は優雅という言葉さえ似合うほどです。

ZEISS 
Download Center
https://www.zeiss.de/content/dam/camera-lenses/files/service/download-center/datasheets/historical-lenses/contax-yashica/datasheet-zeiss-vario-sonnar-35452870-de.pdf

1593

歪曲は非球面レンズが効いているようで、50mm付近から70mmまでまったく無視できるほど優秀。

1594

関連:CONTAXのVario-Sonnarセレクション
http://sstylery.blog.jp/archives/56214122.html