コンタックスの標準系バリオゾナーはこれだけあります。


Vario-Sonnar 40-80mm F3.5 AEG           9群13枚 1.2m 55mm 660g(1975年?)

Vario-Sonnar 35-70mm F3.4 MMJ         10群10枚 0.7m 67mm 475g(1987年)
Vario-Sonnar 28-85mm F3.3-4.0 MMJ   13群16枚 0.6m 82mm 735g(1989年)
Vario-Sonnar 35-135mm F3.3-4.5 MMJ   15群16枚 1.3m 82mm 860g(1993年?)

Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ     8群  9枚 0.5m 67mm 325g(1998年)
Vario-Sonnar 35-70mm F3.5-5.6 G         8群13枚 1.0m 46mm 290g(1999年)*
Vario-Sonnar 24-85mm F3.5-4.5 N         12群14枚 0.5m 82mm 640g(2000年)*


まずは発売順に並べると、40-80mmがなんと初代RTS発売当時から存在していたことに驚きます。レンズ性能も洗練されていく前のもので、明らかに40-80mmとそれ以後のレンズ構成、スペックに相関性はありません。後ろの*マークはマウント違いで、Gレンズはショートフランジバックでピントリングなし、Nレンズは絞りの駆動に電子接点が必要です。

この空白行を使ったグループ分けは何かというと、設計年代のおおまかな違いによって発色が違うと思われる区別です。思われる、と書くのはほとんどのレンズを自分で実写したことがないからですが、このように発売年がきれいに分散しているとあながち間違いではないと思います。

28-70mm F3.5-4.5で実感した新時代の色が90年代後半から2000年代、ある程度のズーム性能が確立された中庸な描写が80年代後半から90年代前半、発展途上だった古めかしい70年代。当然ながら、時代がさかのぼるほどに発色はおだやかになり、現代のクリアー/高コントラストを見慣れた目線からは味を感じることでしょう。

とまあ、実証のともなわない能書きはここまでで、これをレンズ選択がしやすいように並び替えます。


Vario-Sonnar 24-85mm F3.5-4.5 N         12群14枚 0.5m 82mm 640g(2000年)*

Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ     8群  9枚 0.5m 67mm 325g(1998年)
Vario-Sonnar 28-85mm F3.3-4.0 MMJ   13群16枚 0.6m 82mm 735g(1989年)

Vario-Sonnar 35-70mm F3.4 MMJ         10群10枚 0.7m 67mm 475g(1987年)
Vario-Sonnar 35-70mm F3.5-5.6 G         8群13枚 1.0m 46mm 290g(1999年)*
Vario-Sonnar 35-135mm F3.3-4.5 MMJ   15群16枚 1.3m 82mm 860g(1993年?)

Vario-Sonnar 40-80mm F3.5 AEG           9群13枚 1.2m 55mm 660g(1975年?)


ここからが本番。ズームレンズはまず利便性、そのつぎに描写性能とのバランスが大事ということで、個人的にマイナスと思われる項目を挙げ、購入候補のレンズを振り落としていきます。

スペックを読む際の参考としては、最短撮影距離は焦点距離の10倍が昔からの基準で50mmレンズなら50cmまで近づければ問題なし、フィルター径は67mmまでが普通の取り回し、重さは300g前後が小型単焦点の平均で、大柄な大口径レンズは600~700g。このような数値から実際の使い勝手をイメージしつつ、手持ちで使う標準ズームの理想を一昔前の28-70mm F2.8と仮定してざくざくと切っていきましょう。

参考にしたのはまたまたこの本と、ZEISSのデータシート。


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*セレクション Part 1

Vario-Sonnar 24-85mm F3.5-4.5 N         12群14枚 0.5m 82mm 640g(2000年)*

Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ     8群  9枚 0.5m 67mm 325g(1998年)
Vario-Sonnar 28-85mm F3.3-4.0 MMJ   13群16枚 0.6m 82mm 735g(1989年)

Vario-Sonnar 35-70mm F3.4 MMJ         10群10枚 0.7m 67mm 475g(1987年)
Vario-Sonnar 35-70mm F3.5-5.6 G         8群13枚 1.0m 46mm 290g(1999年)*
Vario-Sonnar 35-135mm F3.3-4.5 MMJ   15群16枚 1.3m 82mm 860g(不明)


【落選】Vario-Sonnar 40-80mm F3.5 AEG 9群13枚 1.2m 55mm 660g(1975年?)

40-80mmというのは完全に懐古趣味。F3.5通しというのは評価点ですが、データシートを見ると歪曲がズームの両端でものすごいです。フィルター径55mmのわりに意外と重いのは後群に分厚いレンズがばんばん入っているからでしょうか。

ZEISS
Photography
Historical Products
https://www.zeiss.com/content/dam/consumer-products/downloads/historical-products/photography/contax-yashica/en/datasheet-zeiss-vario-sonnar-354080-en.pdf

Vario-Sonnar 40-80mm F3.5
1565

データシートの見方は横軸がレンズ中心から対角線に伸びていく撮像範囲、縦軸がマイナスで樽歪曲、プラスで糸巻き歪曲。単焦点レンズは画面端で2.0%がひとつの目安。個人的な実感としては1.0%でほぼ問題なし、1.5%辺りまではフレーミングが楽、2.0%はパースが絡むとかなりぐんにゃり。

参考までにPlanar 50mm F1.4は画面端で実測-2.0%に到達する樽歪曲、ショートフランジバックのBiogon 28mm F2.8 Gは+0.3%付近の糸巻きが画面端で戻っていく微弱な歪曲。


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*セレクション Part 2

Vario-Sonnar 24-85mm F3.5-4.5 N         12群14枚 0.5m 82mm 640g(2000年)*

Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ     8群  9枚 0.5m 67mm 325g(1998年)
Vario-Sonnar 28-85mm F3.3-4.0 MMJ   13群16枚 0.6m 82mm 735g(1989年)

Vario-Sonnar 35-135mm F3.3-4.5 MMJ   15群16枚 1.3m 82mm 860g(1993年?)


【落選】Vario-Sonnar 35-70mm F3.5-5.6 G 8群13枚 1.0m 46mm 290g(1999年)*

GレンズはAFレンジファインダー用に設計されているので、そもそもの流用が苦しいです。合わせるボディがミラーレスというのはさておき、本体にピントリングがなく35-70mmの狭い焦点域、望遠側F5.6、最短1mは使い勝手の面から完全アウト。しかし、アサヒカメラ誌による性能評価は高く、小型の2倍ズームに13枚ものレンズを投入していることが特筆されていました。歪曲は画角の広い広角側の方が目立たないというのはレンジファインダーの強み(※広角レンズに良い物が多い)を意識してか興味深いです。

https://www.zeiss.com/content/dam/consumer-products/downloads/historical-products/photography/contax-g/en/datasheet-zeiss-vario-sonnar-35563570-en.pdf

Vario-Sonnar 35-70mm F3.5-5.6
1566


【落選】Vario-Sonnar 35-70mm F3.4 MMJ 10群10枚 0.7m 67mm 475g(1987年)

40-80mmの後継なのでスペックに手堅い良さがあります。しかし、35-70mm F3.4なら明るい単焦点一本でいいんじゃない?と思ってしまいます。ズームにはもっと利便性を求めたい。アサヒカメラ誌による性能評価は単焦点並みで、50mm域の解像力が特に高いとのこと。歪曲は広角側があまり酷くならないように補正しつつ、中間から望遠側を少なめにというVario-Sonnarの何本かに共通するまとめ方。

https://www.zeiss.com/content/dam/consumer-products/downloads/historical-products/photography/contax-yashica/en/datasheet-zeiss-vario-sonnar-343570-en.pdf

Vario-Sonnar 35-70mm F3.4
1567


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*セレクション Part 3

Vario-Sonnar 24-85mm F3.5-4.5 N         12群14枚 0.5m 82mm 640g(2000年)*

Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ     8群  9枚 0.5m 67mm 325g(1998年)
Vario-Sonnar 28-85mm F3.3-4.0 MMJ   13群16枚 0.6m 82mm 735g(1989年)


【落選】Vario-Sonnar 35-135mm F3.3-4.5 MMJ  15群16枚 1.3m 82mm 860g(1993年?)

軽快感とは一切無縁の太い鏡胴が直進式のズーミングで伸びていくレンズ。この大きさ重さで最短1.3mというのは風景写真を想定していると思われ、日常の普段使いには向きません。数値性能は不明、28-85mmと似たスペックですがズーミングと焦点距離の関係は真逆なので(28-85mmは広角側が長くなるタイプ)、設計そのものは別物のようです。歪曲はズーム全域でかなりはっきり出ますがそれでも40-80mmより優れているようで苦笑い。

https://www.zeiss.com/content/dam/consumer-products/downloads/historical-products/photography/contax-yashica/en/datasheet-zeiss-vario-sonnar-334535135-en.pdf

Vario-Sonnar 35-135mm F3.3-4.5
1568


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*セレクション Part 4

Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ     8群  9枚 0.5m 67mm 325g(1998年)
Vario-Sonnar 28-85mm F3.3-4.0 MMJ   13群16枚 0.6m 82mm 735g(1989年)


【落選】Vario-Sonnar 24-85mm F3.5-4.5 N 12群14枚 0.5m 82mm 640g(2000年)*

外径の太さはさておき、2000年代のレンズなのでさすがにそつなくまとまっています。最近、電子接点つきアダプタが比較的安価に入手できるようになったのでここまで残しましたが、実はアサヒカメラ誌の解像力評価はそれほどでもなく(放射/同心の像面がズーム全域で離れ解像力に影響、光軸の傾きも匂わせる)、あえてこれを選ぶ理由はありません。さすがに24mmまで含めると従来の単焦点並みを達成できなかったのか、あるいはAF化が組み立て精度に影響したのか、ときおり見かける等倍画像もあまり良くないので、24mmズームとしてはかなり抑えられている歪曲とZEISSの色を重視するような人向けでしょうか。ほどほどの性能ならほどほどの大きさでないと、というのが自分の本音です。

https://www.zeiss.com/content/dam/consumer-products/downloads/historical-products/photography/contax-n/en/datasheet-zeiss-vario-sonnar-35452485-en.pdf

Vario-Sonnar 24-85mm F3.5-4.5
1569


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*最終セレクション

Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ    8群  9枚 0.5m 67mm 325g(1998年)
Vario-Sonnar 28-85mm F3.3-4.0 MMJ  13群16枚 0.6m 82mm 735g(1989年)


【落選】どちらもマイナス点があり優劣つかず。

 Vario-Sonnar 28-70mm  Vario-Sonnar 28-85mm
・解像力      △      ◎
・歪曲       ◎      ○  
・像面湾曲     ◎      ◎
・色と諧調     ◎      ○
・ピントの見易さ  ×       ◎
・最短撮影距離   ○      ○
・マクロモード   望遠側    広角側
・大きさ、重さ   ◎      △


https://www.zeiss.com/content/dam/consumer-products/downloads/historical-products/photography/contax-yashica/en/datasheet-zeiss-vario-sonnar-35452870-en.pdf

Vario-Sonnar 28-70mm
1570

https://www.zeiss.com/content/dam/consumer-products/downloads/historical-products/photography/contax-yashica/en/datasheet-zeiss-vario-sonnar-33402885-en.pdf

Vario-Sonnar 28-85mm
1571



28-85mmは本当の四隅をのぞけば安定した高画質で広角側が特に良く、その代わりに大きく重く色が地味系。28-70mmは望遠側の画質が良く広角側は落ちるが、小さく軽く発色も良い。両者ともに歪曲収差のまとめ方はうまく、85mmまで欲張っている28-85mmの方が望遠側の歪曲が大きい。28-70mmは非球面の効果で50mm~70mmの糸巻き歪曲はほぼ無視できるほどわずか。

ただし、MFレンズとしては全域でキレがあると評判の28-85に対し、28-70mmのピントの鈍さは致命的で普通に考えるなら高級タイプの28-85mmがWINNAR。アサヒカメラ誌の当時のコメントもCANONのEF28-80mm F2.8-4Lに匹敵する性能とあります。ただし、この鈍重なスペックなら普通に現代の純正AFズームを選ぶよなあという疑問……。


というわけで、様々なことを考えつつも帯に短くたすきに長しで、悩みまくるのがCONTAXユーザーの常ということでした。チャンチャン。