驚きの廉価版バリオゾナー。このレンズの発色と接写での豊饒な写りは冗談抜きで感動します。
まあ、安ズームとはいってもCONTAXなので高いんですけどね……。


カメラは旧機種のEOS 5D
Vario-Sonnar 28-70mm F3.5-4.5 MMJ 注記なければ絞り開放
Photoshop Camera RAWの現像設定はスタンダードから微調整、一部ゴリゴリ現像

非常に色再現がよく、光線状態を問わず勝手に最高の調子に仕上げてくれます。
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このレンズの接写は別格。ボケは柔らかく、階調は優雅。
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実はこのレンズに解像力を期待してはいけません。
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28mm。壁面のディテールを等倍で見ると、解像の悪いレンズ特有のぐしゅっとした感じがあります。
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50mm域。
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28mm側は解像力が低くピントも見え難いのであまりいいことはありません。
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一般的な方向性での良い写り。バリオゾナーの中では、CONTAX晩年のこのレンズが一番明るい色を出します。
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とても綺麗な質感が出ていたのでゴリゴリトリミングして無理矢理作例に。ようするに失敗写真。
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70mm域では背景に茎が入っても硬いボケにならないので、F値の暗さがデメリットになりません。
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丸ボケにうっとりするあまり、そのまんまシャッターを切ってしまった例。
一部拡大ではなく全体構図、完全に現代の大口径レンズが目指しているボケ質を実現しています。
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50mm域。
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肉眼に近いのはひとつ上の写真。こちらは明るさを上げて彩度はいじらず、レンズの素の発色。
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なんとなく黄色被りにして心象表現っぽく。これに粒状エフェクトを足せば一丁あがり。
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ここ最近は古いAEレンズばかり使っていたので、あきらかにファインダー上で発色の良さがわかるこのレンズにのけぞりました。詳しい性能解説は後の記事にまとめますが、近接クローズアップ主体でさらに広い画角のバリエーションを、と考えている人にはばっちりハマると思われるのがこのバリオゾナーです。

とにかく色艶などの色彩表現が素晴らしくて、これがYashica/CONTAX最後のレンズですから、確かにこの性能が受け継がれたCONTAX 645が絶賛されたのにも納得です。

ここでVario-Sonnarというものに対する私見を述べておくと、なぜだかSonnarと名のつくものはPlanarに対し色の華やかさや階調表現で劣るように感じ、特にTessar/Distagonとも違う冷調、クールな印象が一様にぬぐえませんでした。写真誌の作例を見てPlanarは「わぁ撮ってみたい!」と思わせるのに、Sonnarは「ふむ」と納得するだけで、さらにVario-Sonnarとなると「なんか冴えない?」と小首を傾げるのが当時の素直な反応です。

そのSonnar系統がすこし変わったと思われるのが1990年代中頃のCONTAX G用Sonnar 90mm F2.8で(※Gレンズ自体がこれまでとやや違ってカラッとした抜けの良さを示すようになるのですが)、その流れを受け継いだようにVario-Sonnar 28-70mmもPlanarと似た心地よい発色性能を示すのです。たとえるなら、従来のVario-Sonnar 28-85mmがどよっとした重い雰囲気を与えるのに対し、Vario-Sonnar 28-70mmは華やかでかろやか。ついでにふれるなら、CONTAX T3のSonnar 35mmもT2に比べて明るい色をだすので、これは確かに発色性能の進歩があったといえるのではないでしょうか。

ただし、色再現があまりにもストレートで機械的になりがちなデジタルカメラにこの方向性では普通すぎると、旧型Vario-Sonnarの抜けの悪さを評価する向きもあるのは十分に理解できます。


んで。
念入りに発色を確かめてから買ったVario-Sonnar 28-70mmなので、いくつかの不満点がありながらもけっこう気に入っています。なによりも肌に合うのは数値上でも70mm側の性能が良く、そのままマクロモードに移行できる便利さと、接写で際立つゆったりとした階調の優美さです。

とまあ、褒めてばかりですが、安ズームがそんな完璧であるはずがないのです。実は一番大事なこととして、このVario-Sonnarは光学ファインダーではとてもピントが見にくいレンズで、特に被写界深度の深い広角側は博打的なフォーカシングになります。撮影者の腕がどうとかではなく、本当にピントが立たないのでぱぱっと撮らなければならない現場には向きません。ご注意を。