Planar 85mm F1.4は簡潔に表現すると、誰が撮っても華やかな色彩感を楽しめるレンズで、実際に当サイトの画像のほとんどはカメラ側で特別な操作はいっさい必要なく、色かぶりの微調整をするだけで勝手にあの調子が出てきます。

つまり、ベストセラーレンズだったPlanar 85mm F1.4は真の意味で描写を愛されたレンズではないでしょうか。その他の難しい面はさておき。(汗)


【絞り開放付近】
・開放のピントは甘ったるく鋭さはいまひとつだが、結像面は意外と繊細。
・絶妙な残存収差の加減があるのか、みずみずしい階調は光によって多彩な表情を見せる。
・軟調でシャドーが沈まないためにハイコントラストな状況に相性がよい。
・高輝度部分に色収差が発生すると、かなりの面積が被写体に食い込んで修正困難。
・一眼レフのファインダー撮影の場合、静物以外で開放を使うのはとても難しい。

【全域】
・色彩はくっきり鮮やかというよりはやわらかで華やか。
・絞っても硬調にならずおだやかで、人工物の迫力は出難い。しかし、きちんとシャープネスは出る。
・暖色系の色再現はドリーミーで、まさにポートレート向き。

・AEGはさらにアンバーが混じる(クリームがかる)ために絵柄にあたたかみが増し、まるで絵本ような色彩感。
・しかし、空はにごるので正統派の風景写真には向かないかも。
・AEGのギザギザ絞りの悪影響はケース・バイ・ケース。
・AEGの逆光耐性の低さは話にならず、時にクラシカルなゴーストやフレアが発生する。

・MMJは絞り羽根、逆光耐性、カラーバランスの改善があり、万能性が高い。
・ただし、基本構造の弱点は変わらず、特定条件で画面の隅からフレアが発生する。
・MMJもAEGも基本的な印象は同じで味があり、どちらも魅力的。

・MMGは絞り羽根の改善があるAEGの改良型だが、MMJとは違って逆光には弱いまま。
・なぜかというと、発売がAEG→MMG→MMJの順だから。

・歪曲はほぼゼロで気持ちいい。
・周辺減光はごく普通。
・最短撮影距離は1mとやや遠く、ポートレートでは問題ないが草花のクローズアップは苦しい。
・開放のピントの見えについて、明確な個体差があるっぽい。
(ピントが浮き立つ中望遠の特性のせいか、いまいちな個体も慣れたら普通に使えるようになりました。重要なのはファインダースクリーンでEOSは非常に厳しい)


Planar 85mm F1.4の人気の秘密は日陰でも艶やかであたたかみのある発色性能で、まさに女性や子供向きの色彩感に、単純なレンズ構成ゆえの描写のゆらぎが合わさることで写真に独特の雰囲気が生まれます。言い換えれば、描写が安定しないオールドレンズの色がとびきりに良かったというだけの話ですが、1970年代の中望遠でこんな色を出す物は他になかったことを考えると、このレンズに対する評価の熱量が推し量れると思います。

専門的には、Planar 85mm F1.4の描写の秘密は絞り開放で細部が低コントラストになる球面収差の過剰補正型+暖色系の高発色です。ある程度、レンズ体験があれば、この説明でだいたい想像つくのではないでしょうか。

このレンズを手にしてみて、どうもピンとこないという方は、まず補色を入れまくるオートWBを切ることから始めましょう。もちろん、完成された現代のレンズと比較して、それほどのものかなあ?と首を傾げるのは普通だと思います。


以上、Planar 85mm LOVE!!


Planar 85mm F1.4 AEGとMMJの違い 絞りと内面反射

Planar 85mm F1.4 AEGの逆光耐性まとめ 実は意外な使いみちあり?

Planar 85mm F1.4 AEG ギザギザ絞り検証~Bokehの話

Planar 85mm F1.4 AEG MMJ 比較撮影 その1(フードなし)

Planar 85mm F1.4 AEG MMJ 比較撮影 その2(フードあり)


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※画像は使いまわしでAEGとMMJが混在。

現像で演出を加えずにこの雰囲気。絞り開放の奇跡のバランス。
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色収差の発生度合いはフィルムとまったく同じ印象。中央だろうがなんだろうが発生するので、このレンズは軸上色収差が多いということでしょうか。絞り込むと軽減されます。
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絞りF2.4でボケのまるみを維持しつつ、ピントをややくっきりと。
F2.8まで絞り込むと、さすがにMMJでも角つきます。
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AEGの絞りF2.8。この反射ボケが気になるか否か。
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右下のフレアは鏡胴内面反射が原因。コーティングそのものは逆光に強いので、ハレ切りでカットできます。
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MMJはAEGよりもニュートラル傾向ですが、それでも色のあたたかみは感じられます。
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冬の弱い日差しで無補正。光がやわらかすぎるとコントラスト不足になりますが、CONTAX全般の特徴として陰気な色調にはなりません。
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色温度5200k、絞りF4。AEGの空。絞り込むとモアレが発生するほどのシャープネスはありますが、階調がおだやかなのでドラマチックなハイコントラストにするにはRAW現像の操作が必要です。
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真夏の強烈な光を忠実設定で緩和。
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空色がおだやかなのはCONTAXの基本。これでスタンダード設定です。
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こういう場面は大得意なのでレンズにお任せで大丈夫。現像は明るさ調整のみ。
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似たような場面ですがF2.8なので、よりくっきり。
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軟調で発色の良いレンズなので、積極的に逆光を狙ってみるとおもしろいです。
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ただし、AEGはMMJとは違う頻度でフレアが発生するので注意。この画質低下をクラシックレンズの表現として積極利用したいというのが最近の心境。1097


というわけでド派手なRAW現像。
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ポートレート向きということは、当然、花も綺麗に写ります。
これは日陰なので華やかさはありませんが……。
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