Amazonマーケットプレイスの良いところは人気のない中古本はとことん安くなることで、これが定価だったらいちいちお勧めしません。でも、送料合わせて数百円だったらまあ失敗してもいいか、とか思いません? (自分は最近、カメラスタイルを買って失敗しました(笑)。本当にこのシリーズは中身がない…)

なわけで、一時期ありとあらゆる本を読み漁った自分が所有している、または印象に残った本などをご紹介。


「ヴィンテージカメラ セレクション」 
約168ページ(カラーモノクロ混在) 1999年6月30日発行 株式会社ステレオサウンド 定価 2667円+税
1244


内容はカタログ的な機材紹介を豪華な物撮りで見せるというどこかで聞いたようなコンセプトですが、実際に発行のタイミング、関わっている人も「コンタックスとツァイス・イコンの肖像」と被ります。掲載されているクラシックカメラは数が多いのでそれほど突っ込んで解説されているわけではありませんが、落ち着いた紙面にばーんと見開きでカメラの象徴的な部位がクローズアップされ、次の2ページでは各部のメカニズムと大まかな歴史の解説、次の見開きは田村彰英氏の作例が1枚という構成でレンジファインダーの舶来、国産、二眼レフと幅広く取り上げられています。

1243

1240

1241

作例は短期間に多数のカメラをわーっと撮ったのが丸わかりではっきり言ってたいした内容はなく、この本がこれだけだったら(なんせ1枚の作例に2ページも使ってる!)買っていなかったでしょう。ところが、隠れたメインディッシュとして異彩を放っているのは黒川未来夫氏のモノクロ作品で、そこに添えられた実感のこもる文章と合わせてうんうんと納得してしまうほどの説得力があります。別段、小難しい被写体を狙っているわけではないのですが、古いレンズの味わい方を示したような紙焼きは今でも見飽きないほどです。

1242





「旅するカメラ」
文庫本 187ページ 2003年10月20日発行 エイ出版社 定価 600円+税

これ、部外者の勝手な推論ですが、この本の評判が良かったために著者の渡部さとる氏はコレ系の仕事が増えたと思います。つまり、それほど面白い内容だったってことで。
面白いというかカメラ好きのツボを押さえているというか、ご自身のカメラ入手の経緯や、撮影行での思い出、それに絡めた機材評価などがバランスよくちりばめられていてまさに手に取ったらいっきに読み込んでしまいそうな良書です。

この出版社は文庫分でなかなかに興味深いシリーズを展開していたのですが、いま現在の刊行物を調べてみるとああ納得。デジタルカメラの新型が次々発売され勢いのある時代にフィルムカメラを推しまくっていた「CAMERA magazine」の出版元でした。





「ハッセルブラッドの時間」
文庫本 187ページ(カラーモノクロ混在) 2003年12月20日発行 エイ出版社 定価 650円+税

この本もえい文庫。さらに著者の藤田一咲氏もこれをきっかけにコレ系のお呼びが多くなっているのも同じ(笑)ということで、やっぱりこのシリーズは良書でしたという結論。

全体としては前述の渡部氏と同様にゆるい雰囲気が漂うのですが、こちらはハッセルブラッドでこんな風に撮ろう、撮りたい!という指南的一人語りで、ご本人の人柄なのか真面目で温かくウイットに溢れた文体が新鮮です。藤田氏はスタジオカメラマンなのか、それっぽいきっちりした写真が多くまさにハッセルブラッドを使う人という感じで、あらゆる場面をスクエアで切り取った作例のひとつひとつの完成度が高いです。特に、男性読者は造形的なヌードの清潔感に目を奪われるかもしれません。(編集に言われてぱぱっと撮った感ありですが、かなり達者)

この本はぜひ普通のA4版で発売してほしかったと思えるほどで、絶対にハッセル買おう!と影響されますよ。でも現物の大きさ重さに挫けるんですが(笑)。ポジフィルムのクリアーな感じがいまではとっても懐かしい。




最後に、自分の読書歴などなどを書いておくと、あんまり古い物はよく知らなくて読み漁ったのは90年代のものが多いです。田中長徳氏は一見深そうなんですが、だんだんと網羅していくうちに結局この人は文章で何か語るのが先でカメラは何でもいいんだろうなあと思わせるクールさというか達観した感じがあるので次第に敬遠。一方で、にょろにょろと素焼きの壺をこねくり回すような味わい深い赤瀬川源平氏の老獪な文章にやられまくり、もう一方ではサンダー平山氏のかわゆくも真理を突く機材論に愛を覚え、そしてお堅い写真論はまったく分からないという凡人です。

写真論といえば、この本は面白かった覚えが。


「藝術写真捏造博覧会」
249ページ 1995年3月10日発行 情報センター出版局 定価 1363円+税

おちゃらけ系?の久門氏が有名な写真家の作品群を模倣した作例をパロディとして対比させているのですが、その撮影の過程を詳細に語っているので元にした作品が示唆しているもの、使われているテクニックなどがいつの間にか理解できてしまうという予想外に意義のある内容だった気がするのですが、かなり前に読んだのでこの印象があっているのかどうか………。



最近では皆さんもそうだとは思いますが、マニアが好むような情報はインターネット上にあり、販促サイトで出版物並みの記事を書いているところもありますのでここ数年の本は把握していません。一昔前のフィルム-デジタル移行期にはあの伝説の文月氏(*1)の記事がとても面白かったのですが、今でも商業誌に書いていたらどうなっていただろう?……とふと思うこともあります。

*1 フルネームは文月 涼。デジタル系のライターで、昨今の機材分析系サイトのはしりとなった「DPReview」のような詳細レビューを商業誌で展開していた。やがてそのスタイルはあらゆる方面から煙たがられ……。