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内容はアサヒカメラに掲載されていた新製品の学術的な評価記事です。昔はこういうものはまったく興味なくて、一応目は通すが言っていることはよく分からない、実際にレンズの写りはいいんだし解像力だなんだ言われても……という調子でしたが、現在は世が移り変わってデジタル時代。0/1世界による写真のデータ化により、一般人はレンズの実態を定量的に調べる手段を得たのです。
そうなると、だんだんレンズの特性というものも明確に見えてきて、最近はなんとなく光学設計についても知識欲が出てきたというのが現在の自分です。

というわけで、何年振りでしょうか改めて読み返してみました「アサヒカメラニューフェース診断室 コンタックスの軌跡」。



・レンズについて、もうちょっとざっくばらんな感想があった気がするが、そういう部分はほとんどなし。スペースの都合で削除されてるか、はたまた自分の記憶違い? 自分のほぼ勘違いで、TVSのレンズに対するあんまりな言い草が強い記憶に残っていたようです。

・レンズ評価はボディと対になっているので数に限りがあり、Distagon 35mm F1.4やPlanar 135mmm f2など、知りたいレンズが載ってなかった。

・MTFを重視するのはなぜか?というZEISSのコメントに目から鱗が落ちる。

・途中から、アサヒカメラ計測のMTFとZEISS公表のMTFが比較されているので非常に面白い。

・ZEISS公表のMTFについてもコメントがあり、あれは設計値ではなく試作品を実測したものだとのこと。つまり、あの数値は丁寧にきっちり組み上げられた一品物の性能を指し示すわけだ!

・どういうわけか、印象の良くないレンズの評価がけっこう高い。デジタルとの親和性の問題?

・ドイツ製も光軸の傾きなど指摘されている。ドイツ製だから完璧に近いというのは単なる思い込み。

・ズームレンズは非常に組み立てが難しく、あたかも偏心があるのが当然のような書かれ方で、Vario-Sonnarにも不可解な片面の画質低下が指摘されている。


・問題のPlanar 50mm F1.4の性能低下について。(※長い製造年月の間、三度繰り返された50mmの測定結果は新しい個体ほど数値が劣り、これが初期玉神話の一因になったらしい。フィルム時代は本当に写りで満足していたので、この件に関してもふーんでした)

 ・一番数値の高かった最初の個体もわずかな偏心が指摘されている。
 ・二番目は個体差であろうという結論で締めくくられている。
 ・三番目はどうみても不良品をZEISSが頑固に認めなかっただけのように思う。絞り開放のMTFの開始点(画面の中心)で同心、放射が一致していないのは偏心を意味するとのこと。そのコメント通り、MTFの実測値は三本とも開始点がバラバラ。もし仮に、ZEISSの主張する測定の間違いであれば、偏心によってコントラストの最大値を見誤るほどに描写が崩れていたのではないか?

 ・三番目は一部の数値が一番目、二番目とは明確に違い、設計変更があった?(三番目のS/Nに近いレンズを持っていて実際に写りの比較をしましたが、初期型とは微細な違いしか見えてきませんでした)



……なところが感想で、ページ数の半分がカメラの解析ですし、レンズの数値性能もすべて理解できるわけではないのであまり読むところはありません。ただし、実写とデータの付き合せができるのは今後に役立つと思うので、すぐに取り出せる場所にしまっておきましょう。

しかし、漠然と思うのは…Planar 50mmの件もそうですが、Rollei SLやCOSINA ZF/ZEの状況も眺めて考えるに、本当にZEISSは民生品はただのホビー用途としか考えていないようで、工業用途とは違う割り切りが明確に存在しているのではないかと思います。アマチュア向けなら何もかもが厳格でなく利益追求が正しいですし、過剰に神格化してるのはユーザーだ…というのは以前に書いた「ZEISS神話は誰が作ったか」という半ネタ記事の意見と同じです。しかし、なぜ、それをここで繰り返すのかというのは、この本をざーっと眺めていてまたうっすらとその思いが湧き出てきたからです。


それはさておき、MTFの比較はとても面白くて、試作品と量産品は複雑な数値の違いを見せ、ただ単に試作品の方が性能が上というよりも量産化によっていろいろな要素が偶発的に変化するというのがなかなかに興味深かったです。CONTAX Gレンズの中には試作品とかなりの差が出ているレンズがありましたが、実写では高い評価を得ているということで、写真レンズというのは本当に不思議なものです。

最近、レンズの厳密な比較をやってみて、少し自分の中で新たな窓がひらいたような気がします。なぜZEISSがMTFを重視するのか、なぜCONTAXは諧調豊かなのか、レンズの違いとは何なのか、写真の印象は何が支配的なのか、いろいろなことが頭の中で一本の線に繋がるかのようです。

勘の良い方はごく当たり前のある単語が浮ぶかもしれませんが、それはまたどこかの記事で。