比較するのはPlanar 50mm F1.4のS/N:581(70年代の最初期)とS/N:79(90年代の安定生産期)なので、主にAEJとMMJの違いとなります


鏡胴の色みが違いますが、実物でも黒の質感が違います。これはおそらく消耗の差で、外観のマット具合は個々によってばらつきます。写真ではうまく撮れていませんが、T*の赤がAEJは朱色と表現できる明るい色合いで、これはAEタイプに共通する明確な違いです。
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まずは重さですが、MMJは本当に使い込んだので、このレンズが自分の感覚の基準になっています。すると、AEJは持った瞬間、え?と声に出すくらい重さが違います。あまりに違和感があるので、秤に載せると約20gも差がありました。

ここで、やはり鉛の含有量が!?と勘違いしそうですが、いやちょっと待って、あまりにも違いすぎます。そこで思い立つのが鏡胴の構成部材の変更。以下の記事、中段辺りに参考になる記述がありました。

タンバールへのオマージュ「花影」S1 60mm f2.2
http://www.photo-china.net/sinsaku/s1.html

白い部分がジェラルミンで、黄色がブラスです。摩耗を避けたい強度が必要な部分にブラスを投入し、それ以外は極力ジェラルミンで構成しています。そうでないと重くなって疲れます。ライカはたたでさえ重いガラスを使ったりしているので、なおさらです。

Planar 50mm F1.4はどちらかというと軽量レンズなので、重量と強度のせめぎ合いは問題にならないでしょうが、材質が変われば重さが変わるということで、ふたつのPlanarの重量差は鏡胴の部材変更にあると考えるのが自然だと思います。詳しい方によると、Planar 50mmはAE/MMの絞り機構の違い以前に後部の構造がまるきり違うそうです。

では、比較の対象が79番台ではなく、60や61などの生産時期が近い個体にもわずかな差が現れるとしたら? いろいろ調べると硝材というものは非常に不安定な物質であり、ロットごとにばらつきが出るのは普通だそうです。しかし、それにしたって最適な組み合わせというものがあるでしょうし、組みの良し悪しも無視できませんし、重い硝材=性能アップみたいな安易な理屈はどうにも信用できません。

ともかく、鏡胴から塗装からすべてを含めての重量差に固執するのはナンセンスだと思います。



続いては二者の構造的な差異を示します。
左: AEJ、右: MMJで共通。

すでに冒頭の画像で違いが分かる前玉周囲の反射防止塗装。
より改善されているのがMMJで、この塗装のマット感がMMJの落ち着いた高級感のもとになっています。反射防止の意味合いとしては、この位置ですから実画像に表れる差はないと思います。
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内部構造も反射の少ないのはMMJ。時代の趨勢かユーザーの声を反映したのか、MMJのキーワードは逆光性能の改善です。特にPlanar 50mm F1.4、Planar 85mm F1.4の逆光時の写りは別物になっていますが、これはどうもZEISSの技術革新というよりも、70年代当時の考えとして階調重視のレンズのみ、わざと内面反射を残したような疑いがあります。
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バヨネット固定のネジ穴の位置、絞り連動ピンの初期位置も違うので、AEJ→MMJで確かに内部の仕組みそのものが変更されているようです。これを見る限り、MMタイプの頑丈なバヨネットはAEタイプにあてがうことはできないようで残念。
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お馴染み、絞り羽根の違い。絞りはF2。
これの不思議なところは、同じ時代のRollei用Planar 50mmはCONTAXのMMJと同じ普通の形状をしていることです。
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以上、大雑把に見ると二者は形をしていますが、子細に観察すると意外と違うというのが個人的な印象です。特にレンズ内部の違いは実物を比較してみないと分からないでしょう。