※レンズが増えるたびに記事を改めていますが、全体の文意は変わらないようにしています。

まずは自分の知っている事柄を列挙。ただし、レンズによっては一部例外あり。少数生産されたMMタイプのドイツ製は高値安定なので使用経験がなく除外。

日本製のAEタイプは機構的な部分ではドイツ製のAEタイプと同じと考えて差しつかえなし。時代的な流れはAEG→MMG→MMJ、もとから日本製のレンズはAEJ→MMJ。


【AEG、AEJの特徴】
・発色はMMタイプとわずかに違う
・反射防止処理がMMタイプに劣る
・絞りの長さが足らず、開放寄りではギザギザ
・マウント爪が黒で強度がいまひとつ
 ※AE最後期にはシルバーに変更
 ※初期のAEも修理によって交換されている場合あり

【MMJの特徴】
・発色はよりニュートラルで場面を問わず安定
・前玉コーティングの色傾向が明確に変わったレンズがある(硝材の変更?)
・反射防止処理が入念
・絞りの長さが見直され、無難な形状
・マウント爪がシルバーで強度がある
・一部、構造の簡略化がある


左:AEJ 右:MMJ
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内部構造
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反射防止塗装 
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AE、MMの良い悪いに関しては諸説いろいろありますが、逆光性能、絞り羽根の形状、カラーバランスなど、単純に工業製品として改善されているのがMMJです。特に反射防止処理はより入念に施されているので、きれいな固体なら高級感がいちだんと増している印象もあります。(ただし、数値性能は一部低下も認められている)

両者の一番わかりやすい違いは絞り羽根ですが、実用的な観点からはAEタイプのぎざぎざはほとんどの場面で問題なく、唯一描写に表れてしまうのが木漏れ日や夜景などで発生する丸ボケです。次に目につくのはマウント爪(バヨネット)の材質で、これは普通に使っているぶんには何も変わりませんが、衝撃を受けると簡単にゆがむのが黒色のマウント爪となります。CONTAX発売当初、カメラやレンズ本体を保護する意味でこのような仕様になったらしいのですが、結果的にメンテナンスコストが嫌われたのかMM化直前に頑丈なシルバーのマウント爪に変更されています。古い「写真工業」に掲載されたメーカー回答によると、これらの材質は黒がアルミ、シルバーがステンレスということで、旧型のマウント爪の弱さには納得です。

コーティングの反射色は特に大口径レンズでがらりと変わったものがあり、Planar 85mm F1.4やDistagon 35mm F1.4の前玉は時代差によって一定の傾向が見られます。コーティングは硝材のバラつきを補正するために一律ではないらしいので、その印象が大きく変わったとするなら硝材のマイナーチェンジがあったと考えるのが妥当ではないでしょうか。

描写について、AEとMMはまったく同じである、いや違うなどこれまた世の意見もわかれるところですが、当ブログの検証によるとかなり複雑な様相を呈しています。おおまかにはほとんど同じで実用上の違いはないといえますが、前期型で色のおだやかさや抜けの悪さがあるレンズでは後期型で発色性能が上がっている印象を受けます。この改良のタイミングがMM化と同時ではなく、レンズ個々によって違うということが各人の感想がバラバラとなる原因になっているようです。

基本的には、オールドレンズらしい味わいを求めるならAEタイプ、時代なりに描写が改良され扱いやすさが増しているのがMMタイプとなりますが、そのどちらを気に入るかどうかは実際に使ってみなければわかりません。

Planar 50mm F1.4 AEJ MMJ 比較撮影 その2
http://sstylery.blog.jp/archives/58859378.html

Planar 85mm F1.4 AEG MMJ 比較撮影 その2(フードあり)
http://sstylery.blog.jp/archives/49866634.html

AE、MM、どれを買ったらいいのか?という個人的な結論ですが、CONTAXも当初の製造年からだいぶ経っているので、ヘリコイドの消耗やガラス面の傷、クモリ、バルサム切れなどさまざまな問題をかかえる固体も増えています。修理すればおおよその性能は戻るとはいえ、本国ZEISSの対応もすでに打ち切り、京セラのサービスも2015年で終了しました。

となると、性能面からさほど古めかしい印象のないCONTAXもオールドレンズの仲間入り、マニアの神経質なこだわりよりも、実用的観点からできるだけ状態の良い物を予算と相談して選ぶことが重要となります。ただし、AEタイプは1~2段絞り込んでも絞り羽根のギザギザが解消されないものが多いので、特に中望遠~望遠レンズでボケの形にこだわる方はご注意を。

Planar 50mm F1.4 AEJのギザギザ絞り
https://sstylery.blog.jp/archives/77233832.html

RAW現像で描写の差が吸収できてしまうデジタル時代、あんまり世評に過度な期待をせず、賢くお買い物をしましょう。それでもなお、こだわってみたいという方は……当サイトの各記事をご参照ください。