Planar 50mm F1.4

Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #9 伝説に終止符を打つ

Planar 50mm F1.4をS/Nばらばらで複数入手できましたので、これにて決着としたいと思います。カメラは今どきのミラーレス2400万画素機、こちらの経験値も当初よりも増したということで自分のなかではこのテストに疑いの余地はありません。


まずは基準となるS/N:581 黒刻印。これは描写が非常に安定しているように感じるので、当時、日本に出向していたCarl Zeissの技師がお手本として組んだものではないかと妄想していますが、根拠はいっさいありません。

すべて同一現像、ミラーレスのピント抽出機能を過信せずにおのおのピントブラケットした中から、できるかぎり絵がそろっているものを選び出しています。


個体A S/N:581 AEJ 黒刻印
1630

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CONTAX Planar 50mm F1.4のシリアルナンバー雑感

最初に前置きしますが、S/Nの分布はてきとうに中古市場をながめた印象なので精密な調査をしたわけではありません。

5911



※グレー文字は完全な捏造なので真に受けないようにっ!

S/N:58 
 |   ・製造開始は581で、585は見たことがなく59へ飛んでいる?
 |   ・582までが本当の希少種で、583、584は初期型の中でもやや発見率が高い。
 |   ・黒刻印を見かけるのは581~582。
 |   「とりあえず最初のZEISSなんで584まで作ってミーティングじゃあ」
S/N:59
 |   ・595もなさそう。
 |   ・58よりも多少見かける率が高い。
 |   「もう一度、製造現場の見直しってことで59も途中で切るでぇ」
 | 
S/N:60
 |   ・製造数が一番多かったと思われる時期。
 |   ・60、61、62、64などは定番のS/N。
 |   ・67辺りでシルバーのバヨネットになるっぽい。
 |   「よっしゃあ、一気呵成じゃあ。作れ作れぃ。写真はレンズで決まる(キリッ)」
 |   「60後半は数減らしときぃ。爪のクレームに対応するとさぁ」
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           ↑AEJ

           ↓MMJ
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S/N:68
 |   ・68あたりからMMタイプに変更と思われる。
 |   ・移行期なので鏡胴はMMだがレンズはAEという個体あり
 |   「まだAEの玉があるからこれの消化じゃあ」
 |   「MM化で勢いつけるために68は多めに作っときぃ」
S/N:70
 |   ・よく見かけるのは74、79でそれ以外はかなり個体数が薄い気が。
 |   ・79の個体は発色性能がやや上がっていることを確認、実際は74から?もっと前?
 |   ・MMJ特有のクモリを生むバルサムの変更がどこかでおこなわれた可能性が高い。
 |   「ちょっと最近、他社さんのAFカメラに押されてんねん」
 |   「マイナーチェンジ入るってよぉ。74までは数押さえときぃ」
S/N:80
 |   ・これ以降のS/NはCONTAXのラインナップが完成~衰退期で数が減る。
 |   ・新品同様の個体が入手できるのも80から。
 |   「いくら描写が良くてもピントが合わなくちゃってカアチャンが言うんよ」
S/N:90
 |   「N1出たからいつかこのレンズやめるんやろな」
 |   RoHS指令!! やばいやん、うちのCONTAX!!」
 |   
S/N:150
 |   ・CONTAXの最終ナンバーでZFの開始ナンバー。
 |   ・S/Nの桁がひとつ増えるので逆に希少。
 |   「在庫払底の最終生産っちゅうわけで、最後は景気よく150かましたるでぇい!」
-------------------------------------------------------------
           生産終了


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Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #8 ピント問題の追試

「アサヒカメラニューフェース診断室 コンタックスの軌跡」を読んでひとつ気になることがありました。

Planar 50mm F1.4の三回目の測定が不良品(あるいは公差の下限)であったとして、その原因はMTFチャートにもあらわれていた偏心と思われます。仮に、このPlanar 50mmのピントの見やすさの差が偏心による描写の乱れが正体だとすると、当サイトで繰り返している定規の比較は画面周辺にいくにしたがって明確になるのではないか? また描写の差が確認できないのは周辺を見ていないからではないか?という疑問が湧きあがったのです。

もしかしたら、この疑惑にはっきりとした結論が出せるかも?と、いそいそとセッティングを開始してみました……。


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Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #7 AE=MM疑惑

なんか変なサブタイトルですが、今回の個体についてはそういうことです。

光が変化するあんまりよくない状況でさくさくっと比較撮影をしてきましたが(いちいち天気を選ぶのめんどくさい)、このMMタイプに関しては製造ナンバーが若過ぎで、中身はAEタイプそのものではないか?というのが結論です。

もしかしたら、CONTAXの描写の改善(発色の微妙な変化)はMM化とは無関係に長い製造年月のどこかで行われたというだけなのかもしれません。順当に考えれば、MM化をきっかけに描写のマイナーチェンジが進められたというのは正しいような気がしますが、実際にどの時点で切り替わったか?というのはレンズ銘柄によっても違うかもしれませんし、もっと変態的にレンズを集めないとわからないでしょう。

1、AEの初期型(黒マウント)
2、AEの最後期型(銀マウント)
3、MMの初期型
4、MMの後期型

具体的にはひとつの銘柄についてこの四種類を調べる必要がありますが、ここまでくると……… 

ヤッテラレッカ (ノ`Д´)ノ.:・┻┻


つうかですね、こんなどうでもいい比較をやっている合間に、ふとサンプル画像を増やしておこうとか思ってシャッターを切るわけですよ。そうするとその時、装着していたレンズはどっちがどっちだかわからなくて、S/N関係ないままにのぞいたファインダーの中には、えもいわれぬきれいな色と階調がわーっとあふれ出して幸せな気分になるのです。


もういいじゃないか! 君が持っているPlanarが最高のレンズだよ!(自爆)


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Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #6 個体差の森

以前、海外に50mm F1.4のバルサム修理を問い合わせた時の返答が140$。そこから、あれやこれやといろいろかかるでしょうし、総額二万円くらいでしょうか……………

……………考え中。考え中。考え中。


(メーカー修理でもないし、ふつうに中古のMMJを探した方が得じゃあ……?)


ポチッ


HAHAHA!! なにが起こったかはよく覚えていませんが、とにかくMMJの初期型こんにちは。いや、ちょっと見てみたかったんですよね。AEJ→MMJ切り替わり時期の50mm。そんなわけで、いったん終わりかけたこのテーマが、また続いてしまうのです。

まずは各部の造りをチェックすると、目にとまったのがこれ。絞り羽根の改良もふくめて全体の構造は間違いなくMMJなのに、前玉の反射防止が甘い? 画像の右手前がこのBlogで常用しているMMJで、今回初登場のレンズは左。ぬぬ?
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しかし、冷静に考えるとこの仕様はAEJと同じ、ようするにこれは本当に過渡期のレンズで、MMながらAE用に準備されていたガラスが組み込まれたということでしょうか。それとも、組立工さんのうっかり? 

両者の重さは特に変わらず、AEJ初期型とはやはり20gほどの差があります。これは素直に後期型の構造的差異といって差し支えないでしょう。


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CONTAX メタルフードの話

新しいレンズを買うと、わくわくするのはフードのコーディネートです。最適かつ携帯性もじゅうぶんな組み合わせはどれだろう? なんていろいろ考えるのはけっこう好きで、この時代のコンタックスには花形フードなどというものが存在しないがゆえの楽しみでした。

最初は純正メタルフードを無難に組み合わせていましたが、あるとき気づいてしまったのです。
このでかくて重いフード、あんま意味ない……。


50mmには55-86リング+メタルフード4番。たいそうカッコイイんですが、三脚に据えて光の切れ具合を外から見てみると、外径86mmのフードでも元々の画角の広さが影響してほんのちょっと前玉を覆う影がひろがるだけ。これが広角レンズになるともっと酷い。86mmまでレンズの前側を拡大して携帯性を悪化させても、フードの効果なんてなきに等しい。

これは円形フードによる構造的欠陥なのです。できるだけフードを大きく長くして遮光するのはベストですが、円形フードは撮像面積36×24mmの四隅にしか合わせられません。その不利を踏まえたうえで、携帯性を悪化させてまで遮光効果にこだわったとしても現実的な撮影状況は逆光ばかりでもないですし、仮に逆光になってしまえば標準レンズ以下の画角なんて光は防げないことのほうが多いのです。

あれ? CONTAXの重厚なフードの意味は??

※Amazonの商品ページから花形フードをトレース
http://www.amazon.co.jp/dp/B0009FTXJU/

円形フードがカバーしているのは赤線までという恐ろしい事実。
四隅の直射光は花形フードでもどうしようもありませんが、上下左右に関してはものすごく損をしています。
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Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #5 黒刻印のボケ描写

………………

…………………………プラシーボ…………… (ノ゚∀゚)ノ


つーか、雲ひとつない晴天か、雲の厚い曇天で風がない日の太陽が高い時間帯なんていちいち選んでられるかー! (°言°)


というわけで、単純な写りだけならまだしもボケ描写の比較となると撮影の難度が桁違いです。ねばり強く機会をうかがえば精密なテストもできそうですが、だいぶ実感も得られたし、もういっかーって感じです。


それで、突然でてきた“黒刻印”という単語はなにかというと、S/N:58~59にたまに見られるmade in Japanの刻印が白く塗られていない個体のことです。ふつうに考えれば単なるエラー個体のはずですが、Distagon 35mm F2.8にも同様の個体がある、最初期でない59番台にも黒刻印は紛れ込んでいるということで、いろいろと勝手な妄想を繰りひろげているのがあほコンタックスまにあとなります。

ロマンに全振りなら……ZEISSが最高の硝材を組み込んだ特別な個体!となるはずですが、ただの一般流通品にそんなことをするわけもなく、当時、Carl Zeissジャパンに出向していたドイツの技術者がお手本として組んだものと考えるのが無難なところでしょう。

そんな謎めいた黒刻印のボケ描写が「なんかちょっと違うぞ!?」と驚いたことが、今回の検証の発端となります。


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Planar 50mm F1.4 AEJ MMJ 比較撮影 その1

プラナー50mm F1.4のめんどくさ~いAE、MM比較をしてきました。


最初の画像がPlanar 50mm F1.4 AEJ、後の画像がPlanar 50mm F1.4 MMJですべて共通。

注記なければ絞り開放 マニュアル撮影で設定固定、WBは5200kから大雑把に調整
Photoshop Camera RAWの現像設定はCamera Standard(DPPのスタンダード相当)


すべての画像でところどころ光が動いてしまっていますが、自然光なのでどうしようもありません。比較画像の微妙な差をきちんと認識するには、クリック後の1000px画像をパタパタと切り替えて見ることです。
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カテゴリ :「Planar 50mm F1.4」

Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #4 ピント問題その2

あんまりしょーもない記事ばかり書いてんじゃないよーと知人にお叱りを受け、とうとうピントの見やすいS/N:581の黒刻印をお借りしました。感謝感謝。

人様のものですので外観の画像はありませんが、いつもの定規で比較した結果はなんというか、言葉のイメージというのは恐ろしいなあと感心した次第です。

Planar 50mm F1.4には解像力の高い当たり玉がある
→微妙に間違い


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Planar 50mm F1.4の初期玉神話は都市伝説か? #3 色と階調

今回の比較はAEとMMの違いを探ることがテーマです。ライティングセットを組んだ絶対比較はできないので、事実を淡々と記録していき、推測による見解を添えていきます。

以下、呼び方が面倒なので581番台をA、79*番台をBとして味気なくいくのはいつもどおり。


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その辺写真の機材ブログ。画像と記事は時々整理、日付も変更。

お問い合わせ: ahocontaxmania@gmail.com



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*メインはCONTAXレンズで、その他ROLLEI、HASSELBLADなど少々。レンズ構成ごとにページが分かれていてわりと読み応えあり。ボディはなし。乱発され内容も薄かったこのシリーズの中で唯一面白かったZEISS本。作例よりも語り中心。
*おすすめ。文字の分量は少なめだが書いてあることは濃い。写真よし、記事よし、品よし。
*おすすめ。レンズ描写にテーマを絞っていて文章が読み応えあり。内容的には無難なレンズ本と濃厚なマニア本の中間あたりで、レンズの特徴はそれなりに出ています。いまいち売れなかったのは作例に面白味がないため。
*メーカーの公式本。たしか、MM時代のレンズ群にMTFチャートとプロの作品とZEISS技術者のインタビューなど。メーカー発なので当たりさわりのない内容、コレクター向け。定価4,000円くらいの豪華本だったので、それを目安に購入検討を。
*詳細なボディ解説で、たしかレンズはクローズアップされてなかったはず。あんまり記憶に残っていません。
*「季刊クラシックカメラ 10ツァイスTレンズの描写力、表現力」に参加している築地氏が書いているので兄弟本みたいな内容。平均以上の充実度ですが、わりとあちこちに記事を寄せている人なので内容が重複する印象あり。
*CONTAXレンズを数値評価でばっさり。当時のユーザーの情熱的な声とは対照的に、たいして褒められていないのが面白かったり。
*90年代クラカメブームの隠れた先駆者で、古今東西のレンズを一律で横並びに評価した記事は一部の人たちにじわじわと火をつけました。レンズ評そのものは淡泊なので、ネット時代に参考になるとしたら機材運用に対する現実的なものの見方でしょうか。
*Planar 50mm F1.4はこの67mm金属フードに55-67ステップアップリングを合わせると軽快かつほどほどの深さでベター。
*上記組み合わせの55-67ステップアップリング。
*ここまでのクオリティがいるかはともかく、安心の国産アダプター。中国製を選ぶ方は確実な遠景撮影ができる代わりにミラー衝突の危険が高まることを承知の上で。宮元製作所の直販サイトの方が安いかも。

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