よもやま話

Planar 50mm F1.4 AEJのギザギザ絞り

オールドレンズでなに買おう♪ やっぱ、Carl Zeissってすごそうだし、すごく評判の良いCONTAXのPlanar 50mm F1.4だねっ!

……となると、気になるのがAEJのぎざぎざ絞り。こんなの、絶対にボケ味が悪くなるに決まってるんだからMMJしかありえない。


なんて考えは間違いです。
なぜなら、ボケの形が気になるような状況ではいっさい絞らないから。


この写真、何の先入観もない方なら気にならないのかもしれませんが、写真的にこういう撮り方をしてる人はほとんどいません。なぜなら、このように角ばったボケは人為的過ぎて、自然界のイメージとかけ離れるからです。
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特に草花では丸みを帯びたボケのほうがよく馴染みます。
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オールドレンズの非点収差量を視覚化する

レンズの収差は味である。

では、収差ってなんじゃい?というところで、分かりやすいのがまず、
歪曲収差(直線が曲がる)
像面湾曲(ピント面が平面にならず湾曲する)
色収差(色がずれる)

次に、がんばれば理解できるのが、
球面収差(光がにじむ、ボケ味に強く影響する)

その変形と考えればなんとなく納得できるのが
コマ収差(偏って光がにじむ)

最後に残った一番、難解なのが非点収差(??)です。


非点収差、これ意味わからん。

誰か、この原理をかんたんに噛み砕いて説明してくれる賢者はおらぬものか。


――非点収差とは、画面周辺部で像面が前後二か所に分離する現象で、しかも、その二か所の像面はそれぞれ、放射方向の線は解像できるが円周方向の線は解像できない、円周方向の線は解像できるが放射方向の線は解像できない、という特殊な状態になるらしい。この状態ではピントをどちらに振っても(放射、同心方向のどちらかがボケてしまうために)まともな解像が得られないので、できるかぎりふたつの像面を接近、または合致させ、理想的な点像に近づけることが必要となる。

と、これが実写レベルの話で、専門的な解説ではぱっと見で理解不能な三次元図が出てくるのです。いわく、子午線がなんたらかんたら~。

ね? わけがわからんでしょう?


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カテゴリ :「よもやま話」

Apo-Makro-Planar 120mm F4はどれくらい解像するのか?

Apo-Makro-Planar 120mmが絞り開放で解像しないって言ってるのは、どこのどいつだ出てこいやあ!! (# ゚Д゚) ゴルァ!!

はい、それはうちの記事です(汗)。


しかし、だいたいにして、写真趣味の個々人が等倍画質をどの程度求めるかなんてわからないし、その判断も人それぞれ。なわけで、ものすごく撮影の精度にこだわっている方が現物を見たときに、やはりイマイチだねってのもありえるし、あくまで全体を眺めた綺麗さのほうが大事で、べつに限界解像なんて求めてないよ、っていう意見もあるかもしれません。

そのへんのあいまいなところに白黒つけるために、Apo-Makro-Planar 120mmの等倍画像を掲載してみます。これが良いのか? 悪いのか? それを判定するのはあなたです!!



α7II + Apo-Makro-Planar 120mm F4(開放のみ)
全体画像(600×400px)→等倍画像の一部切り抜き(600×600px)で共通

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SONYのロゴ

(O ̄▽ ̄)O (O ̄▽ ̄O) O( ̄▽ ̄O) ☆ Ready!! ♪

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レンズ探求 #28 アトムレンズ研究 RE GN TOPCOR M 50mm F1.4 野外比較

最初に警告します!! 

今回、化学反応に関する分野を扱うので、素人の半端理解ではひじょ~に心もとない解説になります。なので、けっこう詳しく書いてあるように見えますが、これを安易に鵜呑みにせず、正確さの怪しい記述については、ヒラに、ヒラにご容赦願います。 <(_ _)> <(_ _)> <(_ _)>


*****


アトムレンズ――すなわち、放射線を発するトリウム含有硝材を使った写真用レンズが、なぜ存在するのかは以下の文章がとてもわかりやすく説明しています。

Radioactive Consumer Products
Thoriated Camera Lens (ca. 1970s)
http://www.orau.org/ptp/collection/consumer%20products/consumer.htm

光学レンズの設計では、屈折率の高いガラスを使用することが望ましい場合がよくあります。屈折率が大きいほど、光の曲がりが大きくなります。これにより、ガラスの必要な曲率が減少するため、レンズを薄く、軽くすることができます。残念ながら、屈折率の高いガラスは分散も大きくなる可能性があります。ガラスにトリウムを追加することにより、低い分散を維持しながら高い屈折率(1.6を超える)を達成できます。

1939年にトリウムを含む光学ガラスに関するいくつかの特許が発行されましたが、それらはやや一般的な性質のものでした。その後、1949年にコダックのPaul De Paolisに、そのようなガラスのいくつかの特定の配合を含む特許が発行されました。重量式の1つは次のとおりです。ホウ素36%、ランタン12%、トリウム12%、バリウム20%、カルシウム20%、その後の製剤には最大28%の酸化トリウムが含まれていました。

つまり、トリウム含有硝材は高屈折低分散であり、一般的な光学ガラスの性質である高屈折/高分散、低屈折/低分散とは異なるものである、と言っているわけです。実はこれ、以前、引用した内容とはすこし違っていることにお気づきでしょうか? (※ガラスの分散=波長による屈折率の違いで、これが少ないと色収差の補正に有利)

英語の元文を自分で機械翻訳にかけてみて分かったんですが、ウランガラス同好会HPで訳されている文章は重要な部分が端折られており、光学ガラスを語る際の複雑なニュアンスが伝わらなくなっているのです。

光学ガラスの組成物としての酸化トリウムの価値は、分散を抑えながら高い屈折率を得ることのできる安定性に優れているからで(※1)この説明も我々素人が勝手に思いこんでいる、トリウムを入れたからばんばん硝材の性能が良くなるんだ!みたいなものとはずいぶん違います。やはり、化学を単純に語るなかれ。

(*1 光学ガラスはより優れた特性を目指すほどに溶解/冷却時の扱いが難しくなり、均質透明なガラスにならず結晶化してしまうリスクが増す。こういった問題に対し、有効性が高かったのが酸化トリウム)


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レンズにカビが生える原因

以前にもカビ関連の話はいろいろと書きましたが、もっとわかりやすい単純なチェックポイントを初心者の方に向けて訴えたいと思います。

防湿庫もドライボックスも持っていないそこのあなた!!
いま、室内に転がしてあるレンズは大丈夫!?


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メッセージ欄のお返事

Blog右側のサイドバーにレンズの比較依頼などを送信できるメッセージ欄を設けたので、そのお返事です。(※頂いたご要望は名前を伏せ、簡略化しています)

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オールドレンズの解像力 フルサイズ2400万画素は1ミリに何本の線を描写できる?

えー、ただいまFD50mm F1.4という優れた解像力を持つレンズをテーマにしているので、ここでいったん「解像力とはなにか?」という部分について整理しておきたいと思います。


まず、世間ではレンズやカメラのとても良い写りを称賛する際に、解像力、解像度、解像感、シャープネスなど、さまざまな言葉がごちゃまぜで使用されていますが、果たしてそれらの用法は正しいのでしょうか? 

コトバンク

【解像力】
写真レンズで結像された像や写真感光材料上に形成された画像の画質を表わす量の一つで,どの程度まで細部を正確に再現しているかを示す。普通は 1mm幅の中に等間隔に引かれた線を何本まで分離して見分けうるかの最小値で表わす。

【解像度】
ディスプレー、プリンター、スキャナーなどで扱う画像の精細さを表す尺度のこと。画像を構成するピクセルの数で表し、数が大きいほど精細。

【解像感】
写真や画像のきめの細かさを表す言葉。「解像感が良い」

【シャープネス】
《鋭さの意》画像処理の方法の一。デジタルカメラなどの画像において輪郭を強調したり、逆に弱めて柔らかな印象にしたりすること。

【鮮鋭度】
~写真像が粒状性を呈することから,写真では被写体の細部の再現には限度があることが理解され,これと関連して写真像が鮮明に仕上がっているか否かという評価がなされる。写真像の鮮明さは鮮鋭度で表される。

これらをきちんと調べてみると、えー……自分たちの言葉づかい、めちゃくちゃじゃないか……と呆気にとられてしまいました。


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カテゴリ :「よもやま話」

比較撮影でいつも悩んでいた開放F値の違うレンズを比べるときに露出がそろわない問題

これをちょっとご覧ください。

2種類のレンズでフラットなライトパネルを撮影した結果で、まるっきり明るさが違うように見えますが、しかしこれ、光学的には同じF値で正しい露出なのです。

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もうすこし情報を足して、こう並べてみると、どうしてこうなったのか合点がいくはずです。

Planar 50mm F1.4(F1.4)
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左: Planar 50mm F1.4(F2)  右: SUMMICRON-R 50mm F2(F2)
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要するに、開放F値の違うレンズの一方を絞り込んでF値を合わせているために、周辺減光の様子が違うわけです。しかし、それにしてもこの明るさの差は何なのでしょうか? ここで物知りの人はこう思うのかもしれません。

はは~ん、オールドレンズだから経年劣化で絞りの正確さも保たれていないだろうし、だいたいにしてレンズの実際の透過量(T値)なんてこまかくばらついてるんだよね、と。

最初は自分もそう思っていましたが、実はこの解釈は不正解なんです。なぜなら、レンズのF値は画面中心部のみを指し示す数値だから。


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カテゴリ :「よもやま話」

「標準レンズの帝王」はウソだけどホントの話 ~ 国産50mm F1.4のSUMMICRONとも呼ぶべき、もうひとつの王者

オールドレンズ界隈で、“標準レンズの帝王”という言葉はあっちこっちでしつこいくらいに出てきます。しかし、これはメーカー自身がカタログに書いた言葉で、少なくとも自分の見聞きした範囲ではCONTAXの現役当時にこんな大それたことを言っていた人はひとりもいなかったですし、今だって写真趣味の集まりでは「このレンズは標準レンズの帝王と呼ばれていて……」なんて大真面目に語られてはいないと思います。つまり、この言葉はレンズ解説の枕詞に便利だからネット時代に爆発的に広まっただけ。

【国内版のPlanar 50mm F1.4の解説】
カール・ツァイス交換レンズを代表する高性能レンズ。光学ガラスの進歩とカール・ツァイスの最新の設計理論から生まれた優れた描写力は標準レンズの帝王ともいうべき逸品です。
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【海外版のPlanar 50mm F1.4の解説】
A fast, high-performance standard lens incorporating the latest achievements in optical glass and correction of image errors. Valuable both for fast action and low light levels.
(※てきとう意訳 光学ガラスと収差補正における最新の成果を取り入れた、高速で高性能な標準レンズです。 速い動体と微光量下の撮影で役立ちます)

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このように、プレミア感を演出する国内版の解説と違って、海外版はごく簡潔に新しい50mm F1.4の特長をまとめているだけです。なぜ、このような温度差があるのか?というのは、当時の日本人のドイツレンズに対する強い憧れに加え、もしかしたら、YASHICA/CONTAX以前の高級カメラであるContarexが王(rex)という単語を用いていたことにあやかったのかもしれません。

と、こんな書き出しをすると、自分が日本人のブランド志向を皮肉っているかように思われるでしょうが、しかし、昔の自分もまた、思いっきりCarl ZeissやPlanarという言葉の響きにうっとりと夢を見ていたのです。


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その辺写真の機材ブログ。画像と記事は時々整理、日付も変更。

お問い合わせ: ahocontaxmania@gmail.com



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*メインはCONTAXレンズで、その他ROLLEI、HASSELBLADなど少々。レンズ構成ごとにページが分かれていてわりと読み応えあり。ボディはなし。乱発され内容も薄かったこのシリーズの中で唯一面白かったZEISS本。作例よりも語り中心。
*おすすめ。文字の分量は少なめだが書いてあることは濃い。写真よし、記事よし、品よし。
*おすすめ。レンズ描写にテーマを絞っていて文章が読み応えあり。内容的には無難なレンズ本と濃厚なマニア本の中間あたりで、レンズの特徴はそれなりに出ています。いまいち売れなかったのは作例に面白味がないため。
*メーカーの公式本。たしか、MM時代のレンズ群にMTFチャートとプロの作品とZEISS技術者のインタビューなど。メーカー発なので当たりさわりのない内容、コレクター向け。定価4,000円くらいの豪華本だったので、それを目安に購入検討を。
*詳細なボディ解説で、たしかレンズはクローズアップされてなかったはず。あんまり記憶に残っていません。
*「季刊クラシックカメラ 10ツァイスTレンズの描写力、表現力」に参加している築地氏が書いているので兄弟本みたいな内容。平均以上の充実度ですが、わりとあちこちに記事を寄せている人なので内容が重複する印象あり。
*CONTAXレンズを数値評価でばっさり。当時のユーザーの情熱的な声とは対照的に、たいして褒められていないのが面白かったり。
*90年代クラカメブームの隠れた先駆者で、古今東西のレンズを一律で横並びに評価した記事は一部の人たちにじわじわと火をつけました。レンズ評そのものは淡泊なので、ネット時代に参考になるとしたら機材運用に対する現実的なものの見方でしょうか。
*Planar 50mm F1.4はこの67mm金属フードに55-67ステップアップリングを合わせると軽快かつほどほどの深さでベター。
*上記組み合わせの55-67ステップアップリング。
*ここまでのクオリティがいるかはともかく、安心の国産アダプター。中国製を選ぶ方は確実な遠景撮影ができる代わりにミラー衝突の危険が高まることを承知の上で。宮元製作所の直販サイトの方が安いかも。

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