テッサーといえば、「かつて、その写りの鋭さから【  】の目と呼ばれ……」なんてフレーズが有名ですが、みなさん、この【  】に何が当てはまるかご存じでしょうか?


ネコの目? (ↀωↀ) ニャーン(きまぐれ)
ヘビの目? (∮ ∞ ∮) フシュルシュル(邪悪)
ヨメの目? o(*`ω´)o またワタシにだまってカメラ買ったでしょ!(これが一番こわい)


答えはふたつ出てきます。鷹の目テッサーと鷲の目テッサー。これ、どちらかが正解なんですが、日本ではふたつとも広まってしまっていてわけがわかりません。というわけで、このフレーズは使わない!という安全策をとって(笑)、先へ進みましょう。


……しかし、実はもうひとつ、このTessar 45mmにはお決まりの言葉があるのです。

それは、「ボディキャップの代わりにこれを着けておけば、レンズ一本分、重さやスペースの節約ができるよ」ってことです。つまり、Tessar 45mmのライバルはPlanar 50mmではなくボディキャップということで、比べてみたのがこちら。

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Tessar 45mm F2.8 重さ: 90g 最大径: 60mm 高さ: 18mm(マウント爪を除く)
ボディキャップ 重さ: 約5g 最大径: 60mm 高さ: 6mm(マウント爪を除く)


いくらパンケーキレンズといっても、マニュアル操作を犠牲にしていないのでボディキャップの3倍になる厚みはいたしかたありません。しかし、この前玉の低さは驚きですね。

噂どおりのコンパクトネス、すごいぞ、テッサータイプ!!


このレンズ、実はAE時代はCONTAX最安値だったそうで(※MM化で大幅値上げ)、冷静に観察してみればそりゃそうだと思います。ガラスはちっこい3群4枚で、短い全長による部材は最小。どう考えてもPlanar 50mm F1.7のほうがコストがかかっています。ところが、外周部がすべてプラでマウントと前枠が金属というのはPlanar 50mm F1.7と同じ作りなのですが、なんとTessar 45mmは正面の銘板が金属! こりゃ質感は一枚上手じゃ。

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青矢印がプラで文字はプリント。ピントリングにはゴムが巻かれていて、絞りリングは(ぐるっと一周回っていないせいか)ゴム風のプラ成形です。
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RTS IIIに装着してみました。このように裸で使うだけなら最小の薄さですが、保護フィルターを着けるとなると厚みが変わってきます。Tessar 45mmの使いこなしのコツは、フードの選定もふくめて、どこまで素のコンパクトさを維持できるか?にかかっているのではないでしょうか。特に、フードはピントリングよりも径が大きいものを合わせてしまうと、ただでさえ幅の狭いピントリングに指が入りにくくなって、露骨に操作性が悪化します。たぶん、このレンズの場合はなにも装着せずに、必要があれば手でハレ切りをするくらいが一番いいのでは?

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初期のAEタイプにはグリーンのパンフォーカス指標がついていて(※MMタイプでは省略)、この三角マークと色つきのF8を直線状に並べると、ピント合わせが不要のスナップカメラになります。……ただし、画像の被写界深度表示を見ればわかるとおり、F8の被写界深度は10m付近まで。つまり、遠方に突き抜けている景色にはピントは来ません。

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あれ? これでパンフォーカスと呼ぶには不十分では? と首をかしげるのですが、三角マークのピント位置を推測するにおよそ4m、これは人物を狙いつつ背景をなりゆきとする場合の撮影手法を想定していると思われ、単純に遠景を主題とする場合にはこの三角マークから無限遠側に(あるいは、直接∞マークに)さらにピントリングを動かす必要があります。

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そこで、なるほど!と自分が思ったのは、このパンフォーカス指標はあくまで中距離を狙う際の目安であって、必要があれば三角マークを境にピントリングを遠近に移動させるゾーンフォーカス的な使い方ができるということです。最初から遠景を狙うことが分かっているのなら、とっととそれに合わせてピントリングを動かしなさいよってことで、そのへんの臨機応変が普段、街中でスナップ撮影をしない自分にはよくわからなかったって話ですね。

まあ、フィルム時代ならもっと大雑把でも済んだのでしょうが、デジタルであんまりいいかげんな撮影をするとRAWファイルを開いてがっかりするので、Tessar 45mmのパンフォーカス指標が2400万画素でどこまで通用するのか、実際にきちんと試してみた結論がこれです。

パンフォーカス撮影って、被写界深度表示があればどのレンズでもできるので、この指標が必須というわけではないのですが、パッと見て分かる視覚的なマークがあるととても分かりやすくてオススメです。でも、AEタイプにはもれなくギザギザ絞りがついてくるので、人によってはそっちのほうが気になるかもしれません。とはいえ、広角気味のF2.8のレンズでボケを生かすには絞り開放を使うしかないわけで、あんまり絞りを微調整してボケの形状がどうのこうのって場面がないんですけどね。