情報がないっ!

……というのも、このレンズ、マイナーなトプコンのさらに希少なレンズらしく、通常は何かしら聞こえてくる現役当時の話がまったくありません。またお世話になる海上写真家さんの記事によると、ほぼ海外向けに出荷されたとかで、そりゃ謎レンズになるわけだわと納得。

海上撮影家が見た上海2
RE GN TOPCOR 50mm F1.4は、アトムレンズ

RE GN TOPCOR 50mmf1.4は、RE AUTE TOPCOR 58mm f1.4の後継レンズで、1973年にSUPER DM用としてデビュー。そのほとんどが海外に輸出されたようなので、日本で見かける事はほとんど無かった。それより前のRE AUTO TOPCOR58mm f1.4があまりにも有名になり過ぎたため、その描写性能は一般にはほとんど知られてない。

Camerapedia Wiki
Topcon/Topcor R, F, RE lenses

・50/1.4 M (Multi coated) code 157B (black) from 15700001 to 15703625 last known


まあ、かんたんな概要としては、1973年に発売されたトプコン初の50mm F1.4で、マルチコートに最短40cm、6枚羽根絞りと、ごく普通の現代的な仕様です。最大の特徴はこのレンズがトリウム含有硝材を使っていることで、つまり、アトムレンズの写りを徹底的に確かめることが今回の目的です。

いちおう、他の記事で使った外観写真を載せておきますが、青みを帯びたブラック塗装に金属鏡胴と、1980年代以降にプラ化が進んでしまう前の国産標準レンズとして、精悍なたたずまいを見せています。

12998

このレンズでとても不思議なのは、マウントもカメラも以前となにも変わっていないのに、ピントリングの回転方向が逆になっていることです。そんなのあり???


ピントの出方とその前後の描写を見るために、画面のど真ん中に定規を置いた画質チェック。

A: RE GN TOPCOR M 50mm F1.4
12990

B: Planar 50mm F1.4 AEJ
12991


う~ん……Aのピントが出ていません……。アサヒカメラの測定によると、Aの球面収差は+0.1mm少々の過剰補正なんですが、それにしてもピントピークにメリハリがありません。過剰補正型の特徴は、解像線が細いかわりにハロでもわっとするので、この描写はまさにそのとおりとも言えるのですが、これでは光学ファインダーのピント合わせが厳しそうな……。赤の200マークが画面中央に位置するはずなのにハロの出方が偏っているので、もしかしたら偏心が大きめの個体なのかもしれません。

ボケは前ボケがきれいで後ボケが硬い過剰補正型の特徴をよく表しているので、別の可能性としては近接時の収差変動が少ないか、もしくは近接によって球面収差の過剰補正量が強まる設計というのも考えられます。(かなり珍しい例だと思いますが、Planar 85mm F1.4がこのタイプです)

色収差は目立って少ないというほどではありませんが、Bよりも多少は抑えられているようです。



次はマクベスチャートですが、このレンズには黄変が絡んでくるので注意してご覧ください。

Aがたっぷりと黄変している中古購入時の状態で、Cに対してあきらかな黄色味とともにガラスのにごりによって露出が落ちています。Bが紫外線照射後でかなりCに近づいていますが、これが限界というわけではなく、実際はもう少し改善しています。Bの黄色味は他のオールドレンズでも見られる程度ですが、ガラスの抜けが完全に回復していないせいで、まだ少し全体が暗いです。

A: RE GN TOPCOR M 50mm F1.4(F5.6)※黄変大
12992

B: RE GN TOPCOR M 50mm F1.4(F5.6)※黄変小
12993

C: Planar 50mm F1.4 AEJ(F5.6)
12994


黄変のデメリットはカラーフィルターをかけたような色の濁りと認識されていますが、実は、あまりに色かぶりが強いと単純なホワイトバランス補正(スポイト補正)だけでは正確な色再現は回復しません。以下は、AとCのグレーバランスと明るさを揃えたものを一画面に収めたものですが、チャートの右下方向の色濃度に明確なズレが見えます。一般的に写真レンズの分光透過曲線はどれも似たようななだらかなカーブを描くので、このように一部の色だけにはっきりとした差異が出るのは異常といえます。

マス目の左半分: RE GN TOPCOR M 50mm F1.4 ※黄変大
マス目の右半分: Planar 50mm F1.4 AEJ
12997


この点について、詳しい記事はこちら。

レンズの色の個性はデジタルカメラでも意味があるのか? という実験

描写分析は次が本番です。

Planar 50mm F1.4再考 #28 アトムレンズは高性能か? RE GN TOPCOR M 50mm F1.4 野外比較
http://sstylery.blog.jp/archives/82369122.html