これをちょっとご覧ください。

二種類のレンズでフラットなライトパネルを撮影した結果で、まるっきり明るさが違うように見えますが、しかしこれ、光学的には同じF値で正しい露出なのです。

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もうすこし情報を足して、こう並べてみると、どうしてこうなったのか合点がいくはずです。

Planar 50mm F1.4(絞りF1.4)
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左: Planar 50mm F1.4(絞りF2)  右: SUMMICRON-R 50mm F2(絞りF2)
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要するに、開放F値の違うレンズの一方を絞り込んでF値を合わせているために、周辺減光の様子が違うわけです。しかし、それにしてもこの明るさの差は何なのでしょうか? ここで物知りの人はこう思うのかもしれません。

はは~ん、オールドレンズだから経年劣化で絞りの正確さも保たれていないだろうし、だいたいにしてレンズの実際の透過量(T値)なんて細かくばらついてるんだよね、と。

最初は自分もそう思っていましたが、実はこの解釈は不正解なんです。なぜなら、レンズのF値は画面中心部のみを指し示す数値だから。


レンズの透過量を見る際に、絞りの個体差やT値を無視できないことは確かですが、上記の画像のような大きな違いを説明する理由にはなりません。この同じF値なのに写りが揃わない現象を説明する正しい理屈は、レンズのF値は画面中心部のみで規定されるために周辺減光は考慮されない、ということです。だから上記の画像は見た目の明るさは違って見えますが、中心部の濃度はそろっており、これで正しいF2の露出で間違いないのです。

もちろん、実際の撮影場面では、ゆるい周辺減光も加味して露出調整することで好みの明るさを得るわけですが、光学的には開放F値の露出をもとに倍々計算でシャッタースピードが遅くなっていくことが正しく、そのために必要なのがレンズの開放F値とそこから何段絞ったか?という情報なのです。マウントアダプターを利用したオールドレンズの世界では、当然ながらF値などはカメラに伝わらないので絞り込み測光を行うしかなく、その周辺減光に影響された露出値は完全に制御された自動露出(開放測光瞬間絞り込み撮影)とは違う場合があることに気をつけなければなりません。


分かりにくいので画像で説明します。
以下が絞り開放のF1.4からF8まで絞り込んだ画像の並びで、上段が絞り込み測光の自動露出、下段が開放測光の自動露出です。光学的には絞りを一段ずつ絞っていくたびにシャッタースピードが1/2になるので、正しいのは下段となります。


[絞り込み測光]
1/250 - 1/200 - 1/100 - 1/40 - 1/20 - 1/10
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[開放測光]
1/250 - 1/125 - 1/60 - 1/30 - 1/15 - 1/8
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まず、小絞りになってもかなり周辺減光が残っているのは、おそらく斜入射光線に強くない撮像素子の特性だと思われます。そして、最初に説明したF値は画面のど真ん中で見るという決まりに従って観察すると、中央の明るさが一定に保たれているのが下段であることが分かります。

ここで注目すべきは、上段のF1.4 1/250→F2 1/200に見られるおかしなシャッタースピードで、この明確に倍数計算が崩れる現象は絞り込み測光の場合、ほとんどのレンズで発生し、それはカメラがフィルム時代の物であっても同じです。(大昔にRTS IIIで物撮りもどきをしていたときに、なぜこうなるんだろうと不思議に思っていました)

この上段の露出値がそろわない理由は、絞り開放の露出が周辺減光の影響を受けてシャッタースピードが遅くなっているからで、上段のF2以降の並びが正しいと仮定すると、本来は1/400 - 1/200 - 1/100 - 1/40 - 1/20 - 1/10になるはずだと考えれば、ここで起こっていることが理解できるはずです(※1/40のばらつきは便宜上、無視します)。つまり、周辺減光の度合いが一番大きいのが絞り開放なので、それ以降のシャッタースピードとの整合性が取れていないということです。

しかし、絞り開放の周辺減光を露出に加味してはいけないとするなら、下段も1/400にならなければおかしいのでは?と思うかもしれませんが、写真的に正しい絞り込みの動作は単純に倍々計算になればいいだけなので、絞り開放がどんな露出値でもシャッタースピードの一段刻みを維持していれば自動的に光学的な正確さは保たれるのです。


これ、要するに、絞り操作に対するシャッタースピードは一段ずつの変化であるという超基本を守っていれば、べつになんの変哲もない事柄なのですが、皆さん、もう一度、F1.4からF8まで絞り込んだ画像の並びを見てください。理屈では下段が正しくとも、見た目では上段のほうが明るさが揃っているように見えませんか? そういったわけで、オールドレンズなどという絞りが連動しないレンズをデジタルカメラで使うと、あれ?となるわけです。


・オールドレンズを使った絞り込み測光では、絞り値ごとに露出を測るので周辺減光の影響を受けてシャッタースピードがばらつく場合があり、その影響が特に強いのが絞り開放付近

・純正レンズを使った開放測光瞬間絞込み撮影の場合、開放F値の露出がもとになるので周辺減光の影響は受けず、シャッタースピードは正確に保たれる

・レンズのF値は画面中心部のみで規定されるというのが大原則


以上がこの記事のおおまかなまとめですが、絞り羽根の微妙な狂いなど、露出がばらつく要因は様々にあるので、あくまで概念としてご理解ください。正直、知らなくてもまったく困らない事柄ですが、当Blogのようなレンズ比較をやる際に、特に片方がEFレンズ+MC-11だったりする場合には確実に混乱すると思いますので。