ネットの個人Blogで、Planar 85mm F1.4 MMGの前玉にコバ塗りはあるよー!という記事を読んだので、ちょいと深堀りしてみます。

が……どうもその方、明らかにうちのBlogにもとづいて言及している感じなのに、名指しも引用もありません。そうなると、こちらも「いや~実はこういうつもりで書いたんですよ~」などの弁明もしづらく、たんなる自意識過剰の可能性もある! (*/∇\*)  キャ!

というわけで、この件については相手方に合わせてURLリンク、引用などはナシで淡々と言い訳を書き連ねていきましょう。


まず、Planar 85mm MMGの前玉の第三群(三枚目)にはコバ塗りはあるので、コバ塗りがないから強い内面反射が起こる説というのは間違いらしいのですが、たしかに分解画像ではそのとおりであることが証明されています。その画像は前側の筒に組み込んだ後なのでガラスの詳細はよく分かりませんが、絞り羽に向かって露出しているエレメントの周囲に反射防止塗装がされていなかったら、そりゃあとんでもないことになるのが予想できますから、ここにコバ塗りがあるのは納得できます。(※Planar 85mmのAEGとMMGは同じ逆光性能なので同一の物として話を続けます)

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そこで、ふと首を傾げるのが、うちの記事って明確に第三群って書いてたっけ?ということです。正直、よく覚えていないのでPlanar 85mmの記事を読み返してみましたが、さすがに自分で分解もしていないのに、そこまで明言している文章はありませんでした。それっぽいのがあるとしたら、これでしょうか。


Planar 85mm F1.4 AEGはちょっとやっかいなレンズで、前側の分厚いエレメントに反射防止のコバ塗りがなく非常に逆光に弱いです。

前側の分厚いエレメント……と言ってしまったら、たしかに第三群――三枚目のガラスになるのでそう受け取られても仕方がないでしょう。これについては、ここまで当Blogが他人様に読まれる規模になるとは思っていなかった頃の記事なので、完全にノリで書いてます。申し訳ございません。<(_ _)>


では、Planar 85mm MMGの前玉のすべてにコバ塗りがあるのかということ、これも違うようです。同じ記事内を少し下ると、パーツを並べてある画像の中にはコバ塗りのない一枚目、二枚目のガラスがしっかりと写っています。もしかしたら、これが屈折の都合で、前側の筒に組み込んだ時に分厚く見えているのかもしれません。しかし、たったこれだけのコバがあれほど逆光性能に大きな影響を与えるのかと驚きが隠せませんし、本当の原因はこのコバの反射を切ることができない鏡胴設計の悪さにあるのかも?

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そして、現物を見れば一目でわかる筒内前側が明るくなる現象、それによる逆光耐性の低さを無視して、第三群のコバ塗りだけを指摘している当該記事の意図もよく分かりません。


結局のところ、これらについての真相は、本当にPlanar 85mmに興味のある人間が実際にレンズを組みながら調べてみないと分からないということでしょうが、掲載された分解パーツの並びを見るかぎりは、コバ塗りのないのは前玉一枚目、二枚目であり、ここがAEG/MMGでやっかいな(=クラシカルな味を出す)内面反射の主要因であることは間違いなさそうです。

ここに、撮影しただけで使わなかったボツ画像があるんですが、AEGとMMJは極端な条件で比較するとこれだけの違いを見せるのです。同条件でこれほどの差となるのがコバ塗り以外の要因であるというのはちょっと考えにくいのですが……。

左: AEG 右: MMJ
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これをなぜ、以前の記事で使わなかったのか?というのは、ピントをレンズの奥にもっていったことが失敗だったことと、黒バックが後ろで切れていて美しくないと思ったからです。もちろん、これは最大限に違いを強調したライティングなので、AEGの内側が常にこんなふうに光っているわけではありません。このレンズについて何も知らない方に注意しておきますが、通常、AEGはフードを着けて直射光を切れば、ほぼMMJと同等の描写になります。


なお、価格.comの掲示板でもこの件についての話題が出ているようで、CONTAXの修理サービスでコバの後塗りが行われていたことを語っている方もいます。そのレンズに85mmが含まれていたのかは語られていませんが、自分が分解確認もせずにコバ塗りあり/なしに言及するのは、やはりこの方と同じようにメーカーでの後塗りの話を聞いたことがあるからです。(そして、その処置をするとAEG/MMGのアンバーかぶりが薄まるとも)

価格.com
 『コンタックスレンズ(ドイツ製)のコバ塗りについて』 のクチコミ掲示板 RSS

富岡光学さんから、基本的にコバ塗りされてないレンズは塗り行程を施してますが、オリジナルの状態を保持してOHだけにするか、それとも塗り行程もされますかとの連絡を頂きました。ディスタゴン3514はコバ塗り有りのMMG独玉もあったので、AEGのコバ塗り無しはオリジナルのままの方が良いかとも思いましたが、結局塗り処置を施していただきました。


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このCONTAXのコバ塗り問題、高級品である当時のレンズでなぜ、Carl Zeissがこのような手段を選んだのかはよく分かりません。同じAEGでも広角レンズなんかはしっかり反射防止対策がされていて、Planar 85mmのように目立って光るような部位はありませんし、それは精密描写が重要視されるマクロレンズでも同じです。この記事を書くきっかけとなった修理Blogの方はコバ塗りがない方が組み付け精度に有利と述べていますが、最高峰を自負するContarexの後継レンズがその程度の意識で作られているのかと疑問にも思います。また、それを70年代の昔の話として肯定し、逆光耐性よりも組み付け精度を優先したというなら、あのはっきりと認識できるAEGの個体差はなんなのかという。

とにかく、Planar 85mm F1.4 AEGは個性的に揺らぐ描写も含めて謎が多いです(*1)。そこで当Blogは、Planar 85mmの弱点はすべて人物撮影を想定した計算づくのことである、というロマンによる仮説を立てましたが、これも特に根拠はありません。

誰か、このことに対するファイナル・アンサーをくれませんかね!(飴あげるから)


(*1 逆光耐性の低さが見過ごされている割には、収差図から高性能レンズとして作られていることが読み取れる。また、CONTAX全般の設計思想はコントラスト重視のはずなのに、球面収差はなぜか過剰補正型で、しかもその過剰補正量は寄るほどに増えていく。T*コーティングが売りであるはずなのに、Planar 85mmの初期型はシングルコーティングを思わせるあっさりした水色の前玉)


【おまけ】
Planar 135mm F2 AEGもPlanar 85mm F1.4 AEGと同じく、逆光にとても弱く前側の内筒がビカビカ光ります。ということは、仮にその原因が一枚目、二枚目のエレメントであるなら、そこには文字通り分厚いコバがあるという……。

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恐ろしや(汗)。