開放F値と焦点距離の両方が違っちゃったら厳密比較なんてできないべ……。

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……と、しばらく、ふて寝していたのですが、そろそろ決着をつけようかとまとめてみたいと思います。

今回の目的はあのねっとりねばねばのDistagon 18mm F4 AEGの写りの秘密を明らかにすることですが、F4に絞ったDistagon 21mmは周辺減光が減るし、そもそも時代が違い過ぎるし、やっぱりよくわからなそう……。

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……いやいやいや、せっかく時間をかけて撮影してきたんだから、なんとかがんばって比較をはじめますよ!


ぐだぐだですが、Distagon 18mm F4 AEGの分析開始ぃ~~~!!


最初の画像がDistagon 18mm F4 AEG、後の画像がDistagon 21mm F2.8 ZEですべて共通。

すべて絞りF4 絞り優先撮影で設定固定、WBは5200kから大雑把に調整
Photoshop Camera RAWの現像設定はα7でEOSのスタンダードを模したプロファイル


超広角レンズの周辺減光の度合いは、撮像素子が斜入射光線にどれだけ対応できているかによって変わります。一例として、古いEOS 5Dよりもα7IIのほうが周辺減光は少ないです。
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周辺減光は設計の優劣に加え、コサイン4条則という法則によって画角の広いレンズほど不利になるようです。
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Distagon 18mmはボケを使うレンズではなく、背景はまったくきれいには写りません。
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こちらは画角の有利と最新設計によって、余裕たっぷりのボケ描写。
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周辺減光の大きい広角レンズは画面内の明暗差が大きくなり、あたかもハイコントラストであるかのように錯覚します。
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いかにもDistagon 18mmらしい迫力のある描写です。
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Distagon 18mmには、寄ると周辺減光が大きくなる特性があります。
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まず、これがDistagon 18mmのF4比較となり、Distagon 21mmは一段絞っている分、画面全体の諧調感は明確に違います。Distagon 18mmは絞り開放なのでゆったりと四隅が落ち、Distagon 21mmはF2.8からF4への絞り込みで周辺減光が大きく改善されているわけですが、これでは比較が難しく、実際に同じF値で撮影したときの参考程度としてご覧ください。

そして、次からが本番。
このDistagon 21mmの画像に後処理で周辺減光を加え、Distagon 18mmに重なる範囲の輝度分布を揃えます。これで、画面全体の諧調感がおおまかに揃い、Distagon 18mmと他との本質的な違いを探ることができます。



最初の画像がDistagon 18mm F4 AEG、後の画像がDistagon 21mm F2.8 ZEですべて共通。

注記なければ絞りF4 絞り優先撮影で設定固定、WBは5200kから大雑把に調整
Photoshop Camera RAWの現像設定はα7でEOSのスタンダードを模したプロファイル
※Distagon 21mmの絞りF4のみ周辺減光を加えて、同範囲の階調を揃える


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絞りF8
細かなテクスチャー描写などはDistagon 21mmよりも明らかに劣りますが、より広角で絵が小さいからかあまり気になりません。
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絞りF8
右隅のフリンジは倍率色収差らしく、RAW現像で簡単に消せます。
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絞りF8
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絞りF8
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絞りF8
中距離まではこの程度の歪曲ですが、近接域になると、あきらかに糸巻きの歪みが目立ってきます。
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Distagon 21mmも歪曲に関しては同じ性質です。
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絞りF8
無限遠の細かい描写はさすがに苦しく、等倍での精細感まで望むのならこのレンズはやめておきましょう。
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絞りF8
古い超広角ということで、太陽が入るとお手上げです。ゴーストは激しく出ますが、コントラストは維持しているところがCONTAXの優秀さでしょうか。
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Distagon 21mmは太陽のとなりにカーブしたゴーストが出ていますが、もしかしたらフィルター装着用の銀のバヨネットが原因なのかもしれません。比較撮影では、フード、フィルターともに未装着なので。
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絞りF8
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当Blogでは、Distagon 18mm F4をねっとりねばねば諧調と評価したわけですが、カメラをα7IIに変えてから、あまりそういう感じはありません。それはおそらく、初代EOS 5Dの持つあっさり感、すなわちフルサイズ初期のCANON製センサーの性能の悪さとDistagon 18mmの固有描写が合わさったことで生まれていたものではないかと思います。

では、カメラがα7IIに変わった現在ではなにも感じないのかというと、そういうわけでもなく、古いEOS 5Dでも感じた絞り開放の味わいはやはりありました。となると、その固有描写とは何か?


Distagon 18mm F4 AEGの描写の秘密はコントラストの高さ+たっぷりと落ちる周辺減光です。これらの比較画像を見ればわかりますが、Distagon 18mmはぱっと見、Distagon 21mmに劣らないくらいにコントラストが高いです。そのメリハリの強さが周辺減光によってドラマチックに失われていく、ここがポイントで、Distagon 18mmの絞り開放を使うと実感する「被写体の立体感はすごく出ているのに、どこかゆったりとした重さも感じる」という印象につながるのです。

そのコントラストの高さというのも単純ではありません。それは、発売に30年もの差があるDistagon 21mmに匹敵するほどの性能というわけではなく、周辺減光による画面の部分部分の明暗差があたかもDistagon 18mmをハイコントラストなレンズのように印象付け、視覚的なインパクトを与えるからです。さらに、その細部描写には球面収差の過剰補正型に共通する線の細さとフレアっぽさがあり(※本当に過剰補正型かは不明)、絞り開放では全体のコントラストは高いが細かなディテール描写は軟調という複雑さも併せ持つのです。

かなり古い超広角レンズで細部描写はさほどキレがないながらも見た目のコントラストが良く、しかし発色は黄色味を帯びた抜けの悪さがあり、周辺減光はなだらかに深く落ちていく。言うなれば、Distagon 18mm F4 AEGの味わいは、CONTAX時代のCarl Zeissが重視したコントラスト再現の良さに超広角レンズの設計の苦しさが入り混じった偶然の産物なのでしょう。



Distagon 18mmは等倍にするまでもなく、すこし大きな画像を見るだけでこの画質差が分かります。Distagon 21mmは一段絞っていますが、このレンズは絞り開放でほぼ最高性能が出ているので、絞り込みの余裕は関係ありません。

【画面中央 拡大率60%】
左: Distagon 18mm F4 AEG(F4) 右: Distagon 21mm F2.8 ZE(F4)
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では、Distagon 18mmは昔ながらのレンズで解像しないのかというとそうでもなく、絞れば実用十分の描写力を見せます。ただし、そこは1970年代の超広角レンズ、画面の隅々まで完璧ということはなく、もともとがもやっとした遠景の樹木などは40本線の低いMTFチャートどおりに甘くなり、近接撮影では中央以外はあまり良い画質とはいえません。

【画面中央 拡大率60%】
左: Distagon 18mm F4 AEG(F8) 右: Distagon 21mm F2.8 ZE(F8)
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また、Distagon 18mmのこってり感に一役買っているのが黄色味ですが、比較対象であるDistagon 21mmの黄色味の方が凄すぎて、逆にニュートラルに感じてしまうほどでした。古い超広角レンズが黄色みがかるのは色付きの強い高屈折率ガラスを使わざるを得ない事情からだと思われますが、硝材が改良されている30年後のDistagon 21mmでなぜカラーバランスが先祖返りしてしまうのか?という謎を解くのは、別の機会にしたいと思います。

超広角レンズといえば歪曲はかなり重要な要素ですが、Distagon 18mmはF4という暗さが効いているのか、画角の不利もなくDistagon 21mmとほぼ同じです。両者ともに、中/遠景では真ん中付近がほぼまっすぐで端が糸巻傾向、被写体に近接するとその糸巻きが強くなります。超広角は画面に斜めの線が走ることが多いので、通常のスナップ撮影などではこの程度で十分、まっすぐに見えるのでしょう。



Distagon 18mm F4 AEGDistagon 21mm F2.8 ZEの違い】

色調  相対的に18mmは黄色っぽく、21mmはかなり強い黄色味
コントラスト 21mm>18mm
先鋭度  21mm>18mm
歪曲補正  21mm≒18mm
逆光性能  21mm>18mm


今回、はじめてDistagon 18mmの画像を詳細に観察してみましたが、当初の予想より意外にもしっかり写っているな、というのが自分の素直な感想です(※ただし、フローティングのある超広角なのでオーバーインフはNG)。たしかに、今の目で見るとお世辞にも高画質とは言えないのですが、ズームレンズのように不快な画質の乱れがあるわけでもなく、作品作りのレンズとして十分な性能は満たしているといえます。そして、すでに時代遅れとなった性能面での不足部分はCONTAXのコントラスト重視という設計思想とうまい具合にブレンドし、他にはない独特の味わいを伝えるのです。

フルサイズ初期のEOS 5Dから現代の標準的なセンサー性能であるα7IIに変えて思ったのは、やっぱりDistagon 18mm F4 AEGは写りがおもしろくって好きだなあ、ということです。


いちおう念を押しますが、比較画像の後半は(Distagon 18mmの固有描写を探るために)RAW現像でDistagon 21mmに周辺減光を足していることを忘れないようお願い致します。



【ご注意】
Distagon 18mm F4をオーバーインフのアダプター(一般的な中国製アダプター)で使うと、周辺画質が崩れます。こまかい画質を気にするなら、このレンズ専用でマウントアダプターを用意しましょう。ただし、いきなりRAYQUALを買い求めるのではなく、まずは現状でどの程度、無限遠のズレがあるのかを確かめる必要があります。レンズ本体の個体差によって、どう対処すればいいのかが変わってきますので。

アダプター問題 オーバーインフとフローティングの組み合わせ その2 超広角とズームレンズ
http://sstylery.blog.jp/archives/70242527.html

マウントアダプターのフランジバック調整
http://sstylery.blog.jp/archives/74777086.html