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みなさん、こんにちは。 ( ・∀・)ノ
定期的にやってくるK&F CONCEPTさんと連携した製品レビュー、今回は可変式のNDフィルターです。可変NDフィルターというと、初心者の方は単体のNDフィルターの何枚分も兼ねているからお得だ!と思うかもしれませんが、それはちょっと待ったぁ!

可変NDはその仕組み上、均一な画質を得るのが難しい上に値段が高いです。そういった特長をよく理解しないままに効果の幅が大きいからといって、可変NDを選んではダメです。このへん、きちんと言及していない記事があるので困りものですが、一般的な風景写真なら暗い場面でスローシャッターのもうひと押しとなるND8かND16が一枚あれば十分です(※カメラの基準感度による)。それがなぜなのか?というのは、例えば、明るい場所で無理やり水を流してもコントラストが高すぎて綺麗に見えないなどの理由があるのですが、NDフィルター装着後もカメラ側で多少のシャッタースピード調整はできるので、NDの数値はそんなにガチガチに考える必要はありません。

……などと書いていると、これからレビューする製品をいきなり否定しているようにも見えますが(汗)、ようするに、可変NDフィルターは固定式のものとはまるで別物であるということが言いたいわけで、そのあたりを原理的な説明を交えながらしっかりとレビューしていきたいと思います。



1、可変NDフィルターは動画用です

まず、可変NDフィルター(バリアブルND、フェーダーND)は動画用であり、写真用途には通常のNDフィルターを買わなくてはいけません。その理由はなぜか? 可変NDフィルターはPL(CPL)フィルターを二枚重ねて減光効果を得る仕組みなので、画面の均一性を保つことが難しく、撮影時に大小さまざまな問題が起こることが珍しくないからです。それを製造側の努力で減らすことは可能なのですが、そうなると価格は数万クラスの高級品となります。

その一方で、よくある単純なNDフィルターは可視光を均一に吸収しているだけなので、ごくわずかな色かぶりがある以外は、可変NDに見られる問題は存在せず価格も安いです。一枚の静止画として完成度を追求する写真の性質とフィルターが消耗品であることを考えると、どちらに実益があるかは明白でしょう。もちろん、可変NDフィルターの画質低下よりも減光効果を連続可変させられることのほうが大事だという考えも否定はしません。動画撮影の現場がまさにそれなのですから。


では、なぜ、動画撮影では連続可変するNDフィルターが求められるのでしょうか?


そもそもの発端は一眼動画だと思われます。EOS 5D Mark IIに端を発した一眼ムービーは、これまでプロの一部の領域にしか手にすることのできなかった浅い被写界深度の映像を小規模の映像制作会社やアマチュアにまで広げることとなりました。そうなると、問題になるのが明るいF値での速すぎるシャッタースピードです。

ここで写真専門の方の頭にハテナマークが浮かびそうですが、動画撮影ではどんなに明るい場面でも基本的に1/50や1/100などの遅いシャッタースピードに固定しなければならないからです。もともと明るい場所でそのような数値を得ること自体に無理があるのに、さらにBokehを得ることで高速側にシフトするシャッタースピードを無理やりNDフィルターを使って合わせるわけです。

フジヤカメラノブログ
「動画撮影時のシャッタースピードについて」

しかも、それだけで済む話ならいいのですが、一眼ムービーに求められるのは小型軽量の機動性です。ゆったりとボケた映像にしたりしなかったり、明るい場所や暗い場所を行ったり来たり。そんな撮影スタイルでも、常にシャッタースピードは遅い数値固定となると、カメラマンが「いちいちNDフィルター着け替えるのめんどくせ~~」となるのは必然で、そういったニーズから市場の要求が高まったのが可変NDフィルターというわけです。たぶん。


通常、写真撮影では絞り×シャッタースピード×ISOで自由に露出調整できますが、動画撮影ではそれが絞り×ISOだけになります。しかも、ISOは暗い場所では役に立ちますが、明るい場所の露出オーバーには役に立ちません。このことから、動画撮影とNDフィルターは切っても切れない縁があるということが理解できると思います。



2、製品概要、内容物一式

今回は少々痛みが多い外箱でしたが、中国製品ではありがちな話です。……と、思いきや、本体のフィルター枠も金属の地が出ているはっきりとしたスレがあったので、中古品のような体裁でした。ガラス面はきれいで機能にも特に問題がなかったのでそのままレビューを行っていますが、もし自分で購入した物だったら交換してもらったと思います。AMAZON直販店であるbestkfはとてもフレンドリーなので、こういった場合にも、きちんと対応してもらえるでしょう。
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内容物は、ビニールケースに入ったクリーニングクロスと、二重に保護されたレンズフィルターです。K&Fは商品の梱包についてはかなり気を配っているようで、そのていねいな印象は他の製品でも変わりません。フィルターのプラケースは以前の製品では付属していたようですが、今回の新型にはありません。なぜかというのはおそらく、フィルター外周に金属の取っ手がついたことで円形のケースに収まらなくなってしまったからだと思われます。
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このようにNDフィルターの濃度を変えるための取っ手が付いています。少し複雑な作りをしていて、一般的な可変NDと違い、金属の取っ手で回転するのは枠の内側です。枠の外側は内側と一体となったフィルター全体の回転となり、CPLの偏光効果が調整できる仕組みとなっています。
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この製品の概要は、ND2~ND32(-1EV~-5EV)まで減光効果が連続可変するNDフィルターで、通常の濃度操作に加え、さらにCPLの反射除去ができることが売りです。そのため、二重になったフィルター回転を操作しやすくするためにレバーがついていてフード併用は不可、前側にネジ切りもありません。それならば、あえて大きいサイズを買ってステップアップリングで複数のレンズに対応させるのが賢いかなと思います。
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3、各部詳細

このNDフィルターは装着サイズよりもかなり大きく、フィルター径82mmに対して、外径98mm(レバー含まず)、厚さ9.5mmです。このボリューム感は構造上の理由に加え、ケラレ防止の意味合いもあるはずで、確かに、同じ82mm径のDistagon 21mm F2.8 ZEではケラレがありませんでした。
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グリスが効いてぬめ~っと動くレバーはこのように内側の前ガラスを回転させ、NDの濃度を変えます。外周部には白い丸印が並んでいますが、これが減光量のステップで最初のMINがND2(-1EV)、そこから順々にND4(-2EV)、ND8(-3EV)、ND16(-4EV)と進み、最後の突き当りがND32(-5EV)です。
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レンズ先端に捻じ込むフィルター基部が別パーツとなっているので、このようにNDの段数を維持したままCPLのように全体を回転させることができます。内側、全体、どちらの回転も重くねばりのある操作感で、勝手に動いてしまうようなことはありません。
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中国製のカメラアクセサリーには常にグリスの塗りすぎ問題がありますが(コストの問題か、職人的細やかさがない)、さすがにこれに塗りすぎるとガラス面が汚れてしまうということできちんとしていました。日本人の厳しい目から見ると、内側の固定リングに油で湿ったような跡があったりして完璧とは言えませんが、実用上の問題は特にありません。


反射防止コーティングの比較です。K&Fの可変NDはスペック上は透過率99.6%を誇りますが、実際にはシングルコーティングのCONTAX Pフィルター(右上)よりは良く、透過率99.0%のL37 Super PRO(中央下)に劣ります。これは何を意味するかというと、おそらく、K&Fは撥水/防汚コーティングをしっかりやりすぎているために、逆に反射を増やしてしまっているのだと思われます。手に持って観察した感じでは、マルミのDHGスーパーレンズプロテクトによく似た感じでホコリも汚れも簡単に取れるのですが、ガラスの反射がスペック以上に多く見えることが共通しています。
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NDの一段刻みに対するレバー位置。減光量が上がるにつれてレバーを動かす間隔が狭くなっていきますが、これは可変NDの原理的な仕組みで各社共通です。

ND2 - ND4 - ND8
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ND16 -ND32
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付属のクリーニングクロスです。品質はごく普通だと思いますが、それよりもこのビニールケースがあることでクロスを汚さずに持ち運ぶことができ、うっかりフィルターに指紋をつけてしまったときなどに安心して対応できます。その便利さには、なんで国内メーカーのクロスにはこういったケースが付いてこないんだろう?と疑問に思うほど。ただ、このフィルターは撥水/防汚がしっかりしているために表面がすっべすべで、何で拭いても綺麗になるんですが……。
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4、可変NDフィルターのしくみ

実写テストに入る前にここを押さえておきましょう。
まず、可変NDフィルターはPLフィルター(CPLフィルター)を二枚重ねたもので、その回転角のズレ量で光の透過量を調整しています。この仕組みはどの製品でも同じなので、可変NDフィルターを理解するには、偏光とはどのようなものかを知る必要があります。

ごく簡単に自己流で説明すると、

光というのは電磁波の一種で、波の性質を持つ。その波は光の進行方向に対して横向きの様々な角度に振幅を繰り返しながら進んでいるが、その波がスリット上の偏光膜に突き当たると、一部の振幅方向しか通過できず偏った光となる。これが直線偏光である。

MeCan 株式会社美舘イメージング
「偏光板とは 偏光・円偏光の仕組み」

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正しい内容を理解しようとすると難しい物理の話になってお手上げなので(特に円偏光はよく分からない)、基本的にはおおまかな直線偏光のイメージが理解できれば十分だと思います。

このうねうねしている光を偏光膜に通して一部だけを通過させ、それをさらにいじわるして向きを変えた偏光膜に通してもっと光の量を減らそう、というのが可変NDフィルターのしくみで、その変化量は二枚の偏光膜の角度で決まります。

偏光
横浜国立大学名誉教授 栗田 進
第1回 1.偏光とは
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後で詳細に述べるように,偏光板は,分子を特定方向に配列したもので,ある決まった向き(偏光方向)に振動している光は通しますが,そうでない向きの偏光は通しません。偏光の通る方向を偏光軸といいます。光(自然光)は一般にあらゆる方向の偏光を含んでいますが、この偏光板を通った光は偏光軸の方向に偏光した光だけになります。2枚の偏光板を偏光軸が直角になるように置くと光は通らなくなります(図1.6)。

2枚の偏光板を偏光軸が直角になるように置くと光が通らなくなるというのは実際の製品もそのとおりで、国内のケンコー、マルミを含めたすべての可変NDは基本的に、減光のための最大角が90度となっています。ただし、撮影レンズを通すと原理的な不具合が起きるのか、各社はその最大角付近の使用を推奨していません。例えば、このK&Fの製品の場合はあらかじめレバーの回転角度を75度付近に制限して、ND2~ND32という実用的な使用範囲としています。

Kenko Tokina
バリアブルNDX

ND2.5~ND1000相当(使用範囲はND450相当まで)

【ご注意】
●ND効果を「濃度可変域表示」を超えてMAX.に近づけた場合、画面に×状のムラを生じたり、青みがかったりする場合があります。

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※現在はバリアブルNDX IIとなっており、若干、仕様が変わっています。


ここまでの事柄をまとめると、ポイントは三つです。

  • 可変NDフィルターはPL(CPL)フィルターを二枚重ねた構造である
  • スリット上の偏光膜を重ね合わせた角度で減光量が決まる
  • 最大角の90度付近は使いものにならない

これらが、実写テストを解釈するための鍵となります。

あと、これは推測ですが、CPL効果を売りにしているK&Fの可変NDは特別に技術的な工夫があるのではなく、単純に一枚目の偏光膜で必然的に起こる反射の除去効果にフィルター全体の回転機能を加えることで、PLフィルターと同じ機能を持たせただけなのでは?と思います。他の製品を試したわけではないので確実なことは言えませんが、海外のテスト記事を見るかぎり、通常の可変NDでも画面のどこかにPL効果は出ていますし。
しかし、そう考えると、PL効果がないと謳われているケンコーの可変NDはどういった設計なのかが気になりますね。

株式会社光響
Optipedia「偏光サングラスが反射光をカットする理由」

光が金属以外の物体の表面で反射するとき、反射光は、反射面に平行に振動する偏光がほとんどになる。釣りやスキーに使われる「偏光サングラス」は、偏光板を使ってこの反射光だけをカットする。これは、水面や雪面からの反射光をカットするが、それに直行する振動方向の光はとおすため、水面下の魚などは見ることができる構造になっている。



5-1、室内テスト(基本画質)

とりあえず、一定条件下の画質を調べるために室内のフラット光源を撮影してみました。


【撮影条件】
被写体は近接したフラット光源。露出は画面中心部をスポット測光、ホワイトバランスはRAW現像でフィルターなしがニュートラルグレーになるように調整。
※可変NDの色ムラを正確に把握するために、フィルターなしでも起こっている四隅のカラーシフトを画像処理でおおまかに修正し、バッチ処理しています。

【並び順】
フィルターなし - ND2
ND4 - ND8
ND16 - ND32

【フレーミング】
通常の3:2に加え、動画用の16:9を薄い枠線で図示。4Kで画角が狭くなるカメラはさらにこの内側になることに注意。


21mmレンズ 絞りF8
1/640 - 1/250 - 1/125 - 1/50 - 1/20 - 1/10
1142511426
1142711428
1142911430


まず、これを見てなにも知らない方は「うわ! K&Fのフィルター酷い!」と思うかもしれませんが、いったん落ち着いて以下のリンク先をご覧ください。

The-Digital-Picture.com
PolarPro Variable Neutral Density Filter Review
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これはPolarProというメーカーの新製品を2019年にレビューした画像です。16mmレンズを使い、ND2~32、ND64~512という二つの製品を並べているのでテスト条件そのものが違いますが、実売2~3万円するフィルターでさえ、このように偏った減光特性を示すのです。つまり、いかに可変NDフィルターが画質的に不利であるかということなのですが、しかし、この歪んだ周辺減光は画角が狭くなるほどに緩和されて画面の均一性が増していくのです。


28mmレンズ 絞りF8
1/800 - 1/320 - 1/160 - 1/80 - 1/25 - 1/13
1143111432
1143311434
1143511436


35mmレンズ 絞りF8
1/1000 - 1/400 - 1/250 - 1/100 - 1/30 - 1/15
1143711438
1143911440
1144111442


50mmレンズ 絞りF8
1/640 - 1/250 - 1/125 - 1/60 - 1/20 - 1/10
1144311444
1144511446
1144711448


85mmレンズ 絞りF8
1/800 - 1/320 - 1/160 - 1/80 - 1/25 - 1/13
1144911450
1145111452
1145311454


可変NDフィルターの画質が、なぜ画角に左右されるのか?というのは前述の4、可変NDフィルターのしくみを読んでいただいた方にはなんとなく想像できると思います。あくまで素人の推測にすぎませんが、

  1. 広角レンズほど不均一な画質になる
  2. 画面の隅で不自然な変化が起こる

ということから、広角レンズの急な光線角度と二重になっている偏光膜のミスマッチによって、画面の端へ行くほどに偏光効果の均一性が崩れているのではないかと思います。例えるならば、この現象はベイヤーセンサーが超広角の極端な斜入射光線で周辺色かぶりを起こす問題と似ていて、一枚目の偏光膜を通り抜けた光が角度を変えた二枚目の偏光膜を通り抜ける際に、その光線角度によって偏光効果が変わってしまうのでしょう。

このような傾向はケンコーが最高品質を謳うバリアブルNDX IIでも同じで、‟使用するレンズが広角になるに従い、使用可能範囲は小さくなる”という注意書きを加えています。



*****

以上のテスト結果を見ると、広角レンズでND16、ND32を使うと強い周辺減光が起こって難しそうに思えますが、実はこのフィルターには改善策があるのです。この方法、実物を手にすれば誰でも気が付くことですが、PL効果用の回転機能でこの不自然な周辺減光を上下によけてしまえばいいのです。

広角レンズとND32で顕著になる斜めの周辺減光(輝度ムラ)はこのように調整できます。
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当然、こんなことも。
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21mmレンズ 絞りF8 回転調整あり
1142511464
1146311462
1146111460


28mmレンズ 絞りF8 回転調整あり
1143111470
1146911468
1146711466


35mmレンズ 絞りF8 回転調整あり
1143711476
1147511474
1147311472


50mmレンズ 絞りF8 回転調整あり
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1149811497
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いかがでしょうか? これですべて解決とはいきませんが、K&FがこのフィルターにCPLの回転機能をもたせたことで、結果的に強い減光時に起こる不自然な輝度ムラを絵柄の都合のよい部分に寄せることができるのです。

おそらく、輝度ムラが目立たず回転機能のない他の可変NDは、フィルターの捻じ込みがこの位置で停止するように調整されているのではないかと思います。(逆に、なんらかの理由でフィルターの停止位置がずれると輝度ムラが目立つようになるはずです)



5-2、室内テスト(色調、減光量)

この製品は最大の減光量がND32と控えめに制限されているためか、色調は安定していて目立った色ムラはありません。ただし、全体としては明確な黄色かぶりがあり、撮影時またはRAW現像でホワイトバランスの補正が必要です。

前述のテスト画像から、減光効果がもっとも安定している85mmを抜粋して画面の中央部をスポイト補正。レンズの色再現や撮影ライトの精度も関わってくるのであくまで相対値としての偏りを見ると、フィルターなしとの差は400K程度の強い黄色み、厳密には若干、緑方向にも寄っているようです。

左: フィルターなし(WB: 5550K 色かぶり補正-3)  右: ND2(WB: 5150K 色かぶり補正+6)
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可変NDフィルターは偏光膜が二組入っているので、通常のNDフィルターよりもさらに中性度を保つのが難しそうですが、将来的には中価格帯の商品としてこの半分ぐらい、WBで150~200K程度の色かぶりにおさまればベターかなと思います。



フィルター外周部に並んでいる白い丸印の実際の減光量も、5-1のテスト画像から確認します。これは右端の突き当りから、MIN ND2 - ND4 - ND8 - ND16 - ND32となり、正しい精度が出ていればシャッタースピードは-1EVから-5EVまで一段ずつ遅くなっていくはずです。
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21mmレンズ 1/640 - 1/250 - 1/125 - 1/50 - 1/20 - 1/10
28mmレンズ 1/800 - 1/320 - 1/160 - 1/80 - 1/25 - 1/13
35mmレンズ 1/1000 - 1/400 - 1/250 - 1/100 - 1/30 - 1/15
50mmレンズ 1/640 - 1/250 - 1/125 - 1/60 - 1/20 - 1/10
85mmレンズ 1/800 - 1/320 - 1/160 - 1/80 - 1/25 - 1/13

※先頭の数字がフィルターなし、測光方式は画面中央のスポット測光。


これを見ると、実際の減光幅はおおよそ-1.3EVから-6EVで(※ND64まで出ている)、暗い側でばらつきが大きい理由は、偏光膜の重ね合わせが90度に近づくほど急激な変化となるシビアさがあるからです。この状態は個体差によっても変わってくると思われますが、実のところ減光量の誤差は撮影者の観点からはまったく問題になりません。

なぜかというと、可変NDフィルターは減光量を連続可変させられることがメリットなわけで、NDの段数にとらわれることなく自由にシャッタースピードを操ればいいだけの話です。つまり、この白丸印はおおまかな目安になるだけでよく、多少のばらつきに目くじらを立てる意味はありません。(そもそも、このような一段刻みの目印さえないメーカーもあります)



6-1、野外テスト(基本画質)

WB、露出はRAW現像で補正して絵を揃えています。フィルターの減光調整をすると(前側の偏光膜の角度が変わって)PL効果も変わるので、その諧調変化および輝度ムラが実際の絵柄にどのように作用するのかを確認します。


【撮影条件】
自動露出で撮影し、RAW現像で明るさとホワイトバランスを個別に補正。フード未使用、ハレ切りもなし。フィルター全体の停止位置は一番輝度ムラの少ない位置で固定、PL効果はなりゆきです。

【シャッタースピード】
可変NDを装着すると、PL効果によって画面の明暗が変化するので、自動露出も影響を受けていることに注意してください。

【並び順】
フィルターなし - ND2
ND4 - ND8
ND16 - ND32


Distagon 21mm F2.8(F8)
1/640 - 1/320 - 1/200 - 1/80 - 1/30 - 1/15
1160211603
1160411605
1160611607
もともと超広角レンズとPLフィルターの相性は悪いですが、それは同じ性質を持つ可変NDも変わりません。NDの濃度を上げていくほどにPL効果がばらばらに変化していき、ND16とND32では不自然な周辺減光が画面の上下を暗くします。この場面で、空の描写を最適にしつつ不自然な輝度ムラを避けられるのはND8までです。(※絵柄によってはND4まで)


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(28mm F8)
1/1000 - 1/320 - 1/200 - 1/80 - 1/30 - 1/15
1159611597
1159811599
1160011601
28mmも青空の扱いは難しく、うまくいくかどうかは絵柄しだいです。この絵柄のND32には広角レンズで顕著となる輝度ムラの問題がはっきりと出ています。


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(70mm F11)
1/1000 - 1/400 - 1/200 - 1/80 - 1/25 - 1/13
1154211543
1154411545
1154611547
同じ青空でも70mmになると輝度ムラはなくなるので、自由に減光量とPL効果が選べます。この絵は単なる成り行き任せで、NDの濃度を変えたそれぞれのカットはここから好みのPL効果に調整することができます。


Apo-Makro-Planar 120mm F4(F4)
1/500 - 1/160 - 1/100 - 1/40 - 1/15 - 1/8
1150611507
1150811509
1151011511
望遠レンズも輝度ムラはなく、作画は自由自在です。曇天ですが、枝の反射や葉の発色などにPL効果が効いて、絵の印象は微妙に変わっています。


Apo-Makro-Planar 120mm F4(F4)
1/60 - 1/20 - 1/13 - 1/5 - 0.5 - 1.3
1150011501
1150211503
1150411505
高速シャッターの欲しいマクロ域でNDフィルターをかける意味はありませんが、いちおう念のため。左上のグラデーションが違うのは光が変わったのではなく、PLの反射除去が原因です。


Distagon 21mm F2.8(F8)
1/250 - 1/100 - 1/60 - 1/25 - 1/30 - 1/10
1157811579
1158011581
1158211583
PL効果が分かりにくく、起伏のある絵柄の場合では超広角の扱いも楽になります。やはり無難なのはND8まで。ND16、ND32は上下の真ん中が暗く、端が明るくなっています。


Distagon 21mm F2.8(F8)
1/500 - 1/200 - 1/125 - 1/50 - 1/25 - 1/15
1153011531
1153211533
1153411535
同じく超広角の複雑な絵柄で、目立ったPL効果があるのは中央の道路。この場合、ND16の輝度ムラもまあまあごまかせています。(フィルターなしと比べると、手すりの中央が真っ暗で不自然)


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(50mm F11)
1/2500 - 1/1000 - 1/500 - 1/250 - 1/80 - 1/40
1159011591
1159211593
1159411595
こういった場面でNDフィルターをかける意味はありませんが、50mm前後ではND32で若干、輝度ムラが残るくらいなので可変ND+CPLとは相性がいいです。PL効果は水面にそれぞれ違いが出て、ND4が一番明るいです。


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(28mm F11)
1/500 - 1/200 - 1/125 - 1/50 - 1/20 - 1/10
1156011561
1156211563
1156411565
ごちゃごちゃといろいろな物があるのでND32まで不自然な部分は目につきません。


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(40mm F8)
1/1000 - 1/400 - 1/160 - 1/60 - 1/25 - 1/13
1166411665
1166611667
1166811669
40mmくらいになると、青空との組み合わせでも難しくありません。PL効果もND32まで綺麗な描写が得られています。


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(70mm F4.5)
1/1600 - 1/640 - 1/320 - 1/160 - 1/60 - 1/25
1163811639
1164011641
1164211643
半逆光でPL効果は目立たず、言わなければ分からない程度に中央の容器?の透明部分に諧調変化が出ています。


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(28mm F8)
1/2000 - 1/1000 - 1/500 - 1/160 - 1/60 - 1/25
1155411555
1155611557
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逆光の弱さは感じず、たまたま床の反射が減光量を強めるごとに弱くなっているだけです。もちろん、この反射の加減はフィルター全体の回転で調整することができます。


Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(70mm F4.5)
1/125 - 1/50 - 1/25 - 1/10 - 1/4 - 0.5
1167011671
1167211673
1167411675
中望遠以降の画質はとても安定しています。



*****
ここからは動画をイメージして大口径レンズの絞り開放寄りです。


Planar 50mm F1.4(F2)
1/6400 - 1/2000 - 1/1250 - 1/500 - 1/200 - 1/125
1160811609
1161011611
1161211613
画像全体のコントラストが低下するほどの逆光なのでPL効果はなさそうに思えますが、二重になった偏光膜が光の散乱を強力に切るためか、NDを濃くしていくほどにコントラストが上がるという不思議な効果が得られています。


Planar 50mm F1.4(F1.4)
1/8000 - 1/3200 - 1/1600 - 1/500 - 1/200 - 1/100
1161411615
1161611617
1161811619
ハイキー気味でどれも似たような絵に思えますが、左の壁にははっきりとPL効果が出ています。


Planar 50mm F1.4(F1.4)
1/3200 - 1/1000 - 1/640 - 1/250 - 1/100 - 1/50
1162011621
1162211623
1162411625
全体的に柔らかい光で、PL効果は緑の葉に薄く出ているだけです。


Planar 50mm F1.4(F1.4)
1/6400 - 1/2000 - 1/1250 - 1/640 - 1/200 - 1/100
1162611627
1162811629
1163011631
平面反射が多い景色なので、車道、歩道ともに明確な諧調変化が見えます。50mmでは輝度ムラがほとんど気にならないので、それぞれのカットを好みのPL効果に合わせることが可能です。



6-2、野外テスト(PL効果、逆光、解像力、Bokeh)

平面の水はPL効果でものすごく描写が変わります。すでに6-1のテストでこまかな諧調変化は確認できているので、極端な例を一枚。

Vario-sonnar 28-70mm F3.5-4.5(70mm F4.5)
左: フィルターなし  右: ND8 PL効果(小)
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左: ND8 PL効果(中)  右: ND8 PL効果(大)
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ひとつ、注意点として、PLフィルターは青空(天空からの青い光)によく効くので、その結果、画面全体の黄色味が増してしまうことがよくあります。したがって、PL効果を強めた場合には先に調べた400K程度のWB補正だけでは済まないことも頭に入れておく必要があり、実際に、6-1の野外テストではフィルターなしに対して600Kなどのかなり強いWB補正をかけている例もあります。



完全逆光ではフィルター装着が原因でゴーストが増えているような印象はありませんでした。画面に太陽が入っているのになぜ?と疑問が浮かびますが、これはつまり、二重の偏光膜によって光の散乱が極端に弱められ、ゴーストが発生しづらくなっているのではないかと思います。ただし、その偏光膜を挟むために4枚のガラスを使っているので、やはりスペック上で万全であるとは言い難いです。

ちらほらとゴーストが写り込んでいますが、これはフィルターを外しても出ていたものです。
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解像力はフィルター装着後でも特に差を感じません。それよりも、PL効果でコントラストが変わるので、微妙に細部の見えも変わるといったところです。

フィルターなし
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ND32
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左: フィルターなし  右: ND32
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ボケも特に変化なく、二重の偏光膜によるパターンや荒れなどは感じられません。これは、年輪ボケがきつくなる夜景の丸ボケなどでも同じでした。

フィルターなし
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ND32
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左: フィルターなし  右:ND32
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細部描写の総評としては、少なくとも2400万画素の等倍で見た限り、この可変NDフィルターを着けたことで覚悟しなければならない画質低下は最大濃度でもありませんでした。海外のレビューを見る限り、可変NDフィルターが広まり始めた2011~2013年あたりの製品では解像力の劣化、ボケの荒れ、逆光でのコントラスト低下など明らかな問題もあったようなので、現在の製品はK&Fのような中価格帯の製品でもかなり改良されていると言えそうです。



7、可変NDフィルターは推奨24mmレンズまでらしいです

各メーカーの製品解説を読んでいると、使用するレンズの焦点距離は24mmまでしか表記がなく、Cokinなどは「24mm(フルサイズ)より短い焦点距離での使用はおすすめいたしません」と明言しています。ケンコーのバリアブルNDXIIの目安表を見てもK&Fの画質との関連性に大きなズレはないように思えるので(K&Fは実測値として最大ND64まで出ている)、このあたり多少の品質差はあれど、可変NDの本質的な特性として超広角での使用は難しいということなのでしょう。

Kenko Tokina
バリアブルNDXII

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8、おすすめ工作

広角レンズで顕著になる偏った周辺減光(輝度ムラ)を上下に置くための基準位置をマーキングしておくと便利です。色つきのテープでも貼っておけばいいのですが、適当なものがなかったので白の油性ペンで線を引いてみました。金枠の反対側にもマーキングしているのですが、このどちらかが真上に来れば、輝度ムラが一番目立たない画質となります。
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※ただし、PL効果で画面が部分的に明るくなったり暗くなったりするので、必ずしもこのマーキング位置が均等な輝度ムラの目安にならない場合があります。



9、仕様一覧


フィルター機能: 可変ND(ND2~ND32) CPL効果
コーティング: 透過率99.6% 撥水/防汚加工
フィルター径: 82mm(77mm、72mm、67mmもあり)

本体サイズ: 外径109mm(レバー込み)、厚さ: 11.5mm(ネジ部込み)
金枠サイズ: 外径98mm、厚さ: 9.5mm
重量: 約80g

付属品: 紙製ケース、クリーニングクロス(ビニールケース付き)



10、作例

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11、まとめ

例によってごちゃごちゃと書いてきたせいで良い部分、悪い部分がぼやけているでしょうし、この製品自体にも複雑な特性があるので、まずはそれを整理しておきます。


21mm付近の超広角
  • 無難に使えるのはND8まで
  • ND16、ND32は偏った周辺減光が出る
  • 偏った周辺減光は移動できるが、PL効果も一緒に変わってしまう
28mm~35mmの広角
  • 28mmで無難に使えるのはND16まで、35mmはND32まで
  • ND16とND32の偏った周辺減光はうまく被写体に被せればごまかせる
  • 偏った周辺減光は移動できるが、PL効果も一緒に変わってしまう
50mm付近の標準
  • ND2~ND32まで問題なく使えるが、わずかに偏った周辺減光が残る
  • PL効果が自由に使える
70mm以降の中望遠、望遠
  • ND2~ND32まで問題なく使える
  • PL効果が自由に使える

【注意点】
  • 可変NDの特性として、本来は24mmまでが推奨範囲
  • 便宜上、この製品の最大濃度をND32としているが、実測としてはND64まで出ている(個体差で変わってくるはず)


このように、可変NDフィルターは画角が広いレンズほど相性が悪く、画角が狭いレンズほど相性がいいと言えます。また、偏光膜の反射除去効果ですが、これは‟PL機能なし”を保証している製品以外は自動的に発生しているものと考えられ、その特性を積極的に利用するためにフィルター全体に回転機能を加えたのが可変ND+CPLというこの製品です。

以上を踏まえた上で、この製品の実際の使いこなしは、「広角レンズではあまり濃いNDを使わないことを前提にし、標準レンズ以降ではNDとPLの加減をじっくりと考えて決める」ということになるかと思います。撮影時にじっくり考えるのなんて当たり前だろう?と突っ込まれそうですが、NDの濃度を変えるとPL効果も一緒に動いてしまう面倒くささがあるので、どちらかというと腰を据えた風景写真向きで、単体でNDフィルターやPLフィルターを扱う手軽さとはちょっと違うかなと思います。

ただ、この感想は普段PLフィルターをまったく使わない自分がPLの諧調変化をわずらわしく思っているからで、そのあたりに抵抗感がない方にとっては二枚のフィルター機能がひとつになっていてケラレもないので、かなり有効に使える物なのかもしれません。


そんなわけで、可変ND+CPLのメリット、デメリット、すべて了解したうえで、この価格が問題なし!という方はND修行のために一枚買ってみても後悔はしない商品だとは思います。K&Fの場合、黄色かぶりは大きめですが、色調そのものは安定していて、逆光でも目につく画質低下はなく、解像力も2400万画素では変化なしと、なかなかに良い素性をしていますから。

あと、動画については、実践的なアドバイスができるほどの経験値はありませんので、ここに掲載したたくさんの実写例で判断してくださいと平謝りをいたします。<(_ _)>



【良い点】
  • 色調は安定している
  • 解像度、逆光耐性の低下は見られない
  • フィルター本体の回転機能が便利
  • 回転操作は適度なねばりがあり、カメラを振っても勝手に動かない
  • 効果の高い撥水/防汚コート

【悪い点】
  • 強い黄色かぶり
  • 広角レンズとの相性が悪い(※一般的な可変NDのデメリット)
  • PL効果は広角レンズとの組み合わせでは使用が難しい
  • プラケースがない(※82mmよりも下のサイズでは付属しているらしい)

【要望】
  • 周辺減光を上下に寄せる回転位置にマーキングが欲しい
  • プラケースがないと持ち運びが不便ですよ!



【PR】K&F CONCEPT バリアブルNDフィルター+CPL(ND2~ND32)KF01.1088

公式WEBサイト: https://www.kentfaith.com/
公式WEBサイト 日本版: https://www.kentfaith.co.jp/
商品ページ: https://www.kentfaith.co.jp/KF01.1088#utm_source=sstylery.blog&utm_medium=KF01.1088&utm_campaign=RK

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※こういったフードの着かない特殊効果用のフィルターはステップアップリングで使い回しをすると経済的です。

国内二社の違いは、金枠にギザギザが刻んであって着け外しがしやすいのがケンコー、それがない分、安く手に入るのがマルミです。右端のK&Fはかなりお得に思えますが、サイズ変換が一段ずつなので、例えば55-67が欲しい時には、55-58、58-62、62-67と三つのリングを繋げる必要があり、あまり効率的ではありません。