ここは密林……。

森森 д・´) (`・д 森森
「おい、気をつけろ! ここは奴らの縄張りだ」
「分かってるさ、今日こそ任務を完了させて、可愛い奥さんと子供にキスするんだからな」※フラグ

森森 д・´) d( ̄ー  ̄森森
「……カメラに不備はないだろうな?」
「ああ、準備万端だ。ソニーα9にMC-11、ZEISSのApo-Sonnarがあれば鬼に金棒よ!」
「そうか……シッ! テロリストの取引相手が来たみたいだぞ!」
「いまだ、撮影しろ!」

森森 д・´) (lll ̄ロ ̄)? [〇] 森
「……ま、まってくれ……。遠景にピントが……無限遠が出ないぞこれ……」
「なにっ!? レンズメーカーのアダプターだろ? そんなことがあるのか?」
「だ、だめだ……まったくピントが届いてない……」

森森 ロ・´)ノ (((;゚Д゚))) [〇] 森
「絞れ! 絞れば多少は深度に入るはずだ!」
「絞ってもだめだ、クソ! 囲まれたぞ!! うわああああああああ!!」

バリバリバリバリバリッ!!!



……というコントは捏造ですが、だいたい合ってます。うちのMC-11、Distagon 21mm F2.8 ZEを着けてみたら無限遠がまったく出ないアンダーインフでした。それが判明したのが以下の記事で、中国製のマウントアダプターの精度を調べてみたら、逆にMC-11のフランジバックの不正確さが確認できてしまったというわけです。

中国製マウントアダプターは本当に精度が低いのか?

最初は、はっはっはっと半笑いで済ませていたのですが、いやまてよ、MC-11がちゃんとしてないとZEレンズのテストができないじゃないか!とふと気づいて、シグマの修理サービスに検査を依頼してみました。しかし、その返答は当社基準内で問題なし!!

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で。
先に言っておきますが、シグマの異常なしという回答は半分くらい予想してました。というのも、AFレンズというのは基本的に無限遠を越えてピントが動くようになっているので、多少のアンダーインフは問題にならず、ある意味、それが製造上の都合のよい部分でもあるのです。仮に、シグマがEFマウントのMFレンズを発売していればMC-11のアンダーインフは明確な欠陥でしょうが、自社のAFレンズ(及びEFレンズ)で無限遠が出るのであれば、製品が正常であると判断するのはごく自然なことです。

シグマの修理センターとは何度かやりとりしていちおう粘ってみましたが、フランジバックを公差のマイナス側にするような部品交換も丁重に却下されてしまいました……。



*****

ここで、本当にMC-11がアンダーインフかを整理してみましょう。


 レンズ ―― EFマウントのAFレンズもMFレンズもEOSでは無限遠が出る
 MC-11 ―― これを使うとAFレンズ以外では無限遠が出ない
 α7II ―― コシナのEマウント専用MFレンズでは無限遠が出る


通常、フランジバックの製造公差はカメラ側にもあるはずなので、MC-11の製造公差+α7IIの製造公差でアンダーインフになっているのかとも考えましたが、EマウントのNOKTON 21mm F1.4 Asphericalでは絞り開放から無限遠が出ていることも確認しています。厳しい精度が要求される超広角レンズのF1.4で実用に問題ない無限遠が得られるということは、自分の所有するα7IIのフランジバックはSONYの基準を満たしていると推測できます。

状況証拠的には明らかにMC-11が悪いのですが、シグマはこの個体を異常なしとして、あっさりと返却してきました。(当然ながら、返却を了承したのは自分ですが)

ならば追試です。


コシナのDistagon 21mm F2.8 ZE以外のMFレンズでMC-11のフランジバックを確認してみます。この場合、やや面倒なのはMC-11には内部干渉があり、手持ちのオールドレンズの多くがマウントできないことです。そうなると、使えるのはフランジバックが長いLEICA RとNIKON Fになりますが、NIKON Fも内部干渉しそうな雰囲気があったので、マウントを最後まで捻じ込まず、浮いたレンズをMC-11に押し付けながら撮影しています。

α7II + MC-11 + RAYQUAL LEICA R-EOS + SUMMICRON 50mm F2(F2)
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SUMMICRON 50mmとMC-11の間に挟んでいるのはフランジバックの精度が保証されているRAYQUALなので、本来はこれで無限遠が出るはずですが……。


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ピントリングの突き当りでも、まったく無限遠にピントが届いていません。なお、カメラをEOSに替えた場合には、RAYQUAL + SUMMICRON 50mm F2で無限遠が得られることを確認済みです。


α7II + MC-11 + 中国製 NIKON F-EOS + NOKTON 58mm F1.4 SLII(F2)
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NOKTON 58mmとMC-11の間に挟んでいるのは中国製アダプターなので、この組み合わせではMC-11より先がオーバーインフとなります。


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MC-11よりも先がオーバーインフになることでようやく無限遠にピントが当たりました。しかし、この状態のNOKTON 58mmのピントリングはほぼ∞マークの位置となり、MC-11のフランジバックの長さが証明されています。


以上の結果をまとめると、

 α7II + MC-11 + RAYQUAL LEICA R-EOS + SUMMICRON 50mm F2
 →大幅なアンダーインフ

 α7II + MC-11 + 中国製 NIKON F-EOS + NOKTON 58mm F1.4 SLII
 →問題なし

となり、MC-11とレンズの間に正確なフランジバックが保障されているRAYQUALを挟んだ場合には無限遠にピントが届かず、それをオーバーインフの中国製マウントアダプターに替えると無限遠にピントが届くという分かりやすい図式となりました。さらに前回のテスト結果はこうです。


 α7II + MC-11 + Distagon 21mm F2.8 ZE
 →大幅なアンダーインフ

 α7II + MC-11 + EF50mm F1.4(※AFレンズ)
 →問題なし


これだけ様々な条件を試しても常にMC-11がアンダーインフである証拠が出てきますし、その程度は微妙に無限遠が足りないどころの話ではないので、はっきり言ってしまうと、シグマのMC-11はMFレンズであるコシナZEISSが使い物にならないほどの個体差が潜んでいると言えそうです。


では、なぜこの個体を検査したシグマは異常なしとしたのか?


その理由は、単に自分がZEレンズを一緒に送らなかったためにどれだけ酷いアンダーインフか理解してもらえなかっただけなのかもしれませんが、担当の方の返答には「フランジバックは当社基準内」という言葉もあったので、本当のところはよく分かりません。

ただし、これまでの実験から、フローティング内蔵のレンズにオーバーインフのマウントアダプターは良くないことが分かっているので、もしかしたらシグマはMC-11のフランジバックの製造公差をプラス側(アンダーインフ側)に多く見積もっていて、その公差めいっぱいだったのがこの個体だったのかもしれません。


しかし、MC-11を所有していてひとつだけ気になるのが、このミラーボックスに相当する菱形開口部に存在するでっぱった枠で、通常、マウント内部にはレンズとの干渉を避けるための‟逃げ”があるというセオリーに反して、シグマはMC-11にあえて干渉が起こるような加工を行っているのです。
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EOS変換したCONTAXレンズの装着を阻むこのでっぱりは、MC-11に多種多様なレンズを装着することを拒絶しているようにも思えるので、もしかしたらシグマは最初からMFレンズを使う精度など保証しないことで製造効率を上げているのかもしれません。EF-Sの深い後玉に対応しないだけならまだしも、わざわざマウント内を狭くしてしまうこの加工には、設計時にMC-11の汎用性をどこまで持たせるか?というデリケートな議論があったことを想像させます。

実物を観察すると、わずか0.5mm程度のでっぱりですが、これが開口部の全周にあることで内部干渉の確率は格段に上がっていますし、効率的な面から考えても、この部分を素直な角にしなかったのはとても不思議です。
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しかし、このフランジバックの件、コシナZEISSをMC-11を介してα7シリーズで使っている人も少なくないはずで、特に話題になっていないのはなぜでしょう? 仮に自分が引き当てたMC-11が不良品未満の外れ個体だったとしても、それでこの強いアンダーインフなら、そこまでいかないMC-11でも十分に遠景にピントが届いていない様子が確認できるはずですが……。