む……蒸し暑くて……ヨボヨボですが……
大事なことなので頑張ってレポートしたいと思います。 ( ›´ω`‹ )


中国製マウントアダプター(以下、中華アダプター)は精度が低いので、本当にこだわるなら国産のRAYQUALだよ、というのはよく聞く話です。まあ、たしかに高いだけあって作りはいいし、特に製作者の方はCONTAX好きとあって、RAYQUALには格別なこだわりが見て取れます。
高精度 高品質 高い堅牢性 信頼の純国産マウントアダプター


しかし、中華アダプターが画質面においてどれほど悪いのか?というのは、実際に様々なレンズ比較をしている自分にしてもよくわかりませんし、それを明確に指摘した記事も見かけません。そんなわけで、今現在、ちょうどこのテストができそうなレンズとアダプターがあるので、この疑問に自分なりの答えを出してみたいと思います。

ベンチマークとなるのはコシナ Distagon 21mm F2.8 ZEシグマ MC-11。このふたつともmade in Japanを謳った信頼性の高い製品です。特にMC-11は他に存在しないレンズメーカー製のEF-NEXということで、マウントアダプター界では最高峰のクオリティといえるでしょう。
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ところがところが、これが意外な事実が浮かび上がるのです……。


今回のテスト、実はちょっと前置きがありまして、使うレンズがフローティング内蔵なのです。フローティング内蔵の超広角レンズは無限遠がきっちり合っていないと周辺画質が目に見えて崩れるのはだいぶ前の記事で判明しています。

 アダプター問題 オーバーインフとフローティングの組み合わせ その2 超広角とズームレンズ
http://sstylery.blog.jp/archives/70242527.html


というわけで、比較に使う中華アダプターはなんとかフランジバックを合わせなくてはいけない、そこでマウント金具の間にシムを挟む簡単な改造を行っています。
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マウントアダプターのフランジバック調整

つまり、もともと工作精度が低いといわれている中華アダプターにさらに手作業の改造を施すという、工業系の人間なら眉をひそめるような比較条件なのです。しかし、マウントアダプターの精度が低いなら、それがどれくらい画質に反映されているのか確認する価値はあると思うので、実際に野外で比較してきました。


が。

Distagon 21mmF2.8 ZE + MC-11
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Distagon 21mmF2.8 ZE + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整あり)
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MC-11はアンダーインフで無限遠にピントが届いていない!!

左: MC-11  右: K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整あり)
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えー 工エエェェ (´д`) ェェエエ工
そんなの1ミリも予想してなかったんですけどー

これでまた書くことが増えたよ。クラクラ。(◎_◎)


とりあえず撮影条件の補足をすると、Distagon 21mmのZEはEOS用の電磁絞りなので、当然、電子接点のない単純な中華アダプターでは絞れず、この比較は絞り開放のみです。撮影日は快晴ではなかったので光が変化していますが、今回のテストに色とコントラストは関係ないので複数枚撮影しながらできるだけ似たライティングのものを選んでいます。

MC-11の結果ですが、もう撮影中のピント拡大の時点で遠景にピントが届いていないのがまる分かりなので、この後のテストは近景だけに切り替えました。純国産のレンズメーカーが製造しているマウントアダプターで無限遠が出ないということでレンズ側の狂いを疑いますが、EOSでの撮影結果は正常なので、間違いなくMC-11のフランジバックの問題と考えられます。AFレンズの場合、基本的にピントが無限遠を超えるように設計されているので、EF50mm F1.4を使ったときにはまったく気付きませんでした。(※MC-11は内部にでっぱりがあるので、EOS変換したCONTAXレンズは着きません)



*****

ヤレヤレ……シグマさんにはほんとガッカリだよ……と愚痴をこぼしながらテストを仕切り直します。撮影条件は以下。

  1. 中国製マウントアダプターの平行度(マウントに傾きがないか?)を見るのが目的。
  2. そのためにMC-11を基準とし、(MC-11がアンダーインフのため)画面四隅の画質差が常に一定であるかを確認する
  3. 着目するのは四隅の像と色収差。これがMC-11に対し不均等な乱れ方をしなければマウントの平行度は保たれていると仮定する
  4. すべて絞り開放、快晴ではないので色とコントラストは考慮しない

参考までに、RAYQUALさんの初心者向けの解説記事がわかりやすいので、リンクを貼っておきます。

マウントアダプターとフランジバックについて
4.アダプターの精度(厚さ・平行度)


Distagon 21mmF2.8 ZE + MC-11
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Distagon 21mmF2.8 ZE + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整あり)
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中央(ピント位置)
1103811039

左上
11024
11025

右下
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11023

意外や意外、アンダーインフのMC-11は画質の乱れが見えません。若干、右下の奥の画質がK&Fよりも良くなっていますが、中央の画質が微妙に違うような気もするので、ピント面の微細な入り方の違いによって像面に差が出たのかもしれません。


Distagon 21mmF2.8 ZE + MC-11
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Distagon 21mmF2.8 ZE + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整あり)
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中央(ピント位置)
1104211043

左上
11028
11029

右下
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これも中央に微妙なピントの差が出ていますが、他のカットを見ても全体的にK&Fの方がシャープに撮れているので、もしかしたらアンダーインフの影響が画面中央付近にもあり、ピントが合わせにくくなっているのかもしれません。依然として画面周辺部の画質に明確な差はなく、気のせい程度にK&Fの方がシャープ感があります。


Distagon 21mmF2.8 ZE + MC-11
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Distagon 21mmF2.8 ZE + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整あり)
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中央下(ピント位置)
1104511044

左上
11034
11035

右下
11036
11037

ボケを確認してみましたが、像流れなどもなく、色収差も差と言えるほどのものはありませんでした。



【追加テスト その1】
MC-11がアンダーインフということもあり、なにかモヤモヤする結果だったので、K&Fのシムを外した状態で画質差がどうなるのか試してみました。この場合、アンダーインフのMC-11とオーバーインフのK&Fとなります。

Distagon 21mmF2.8 ZE + MC-11
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Distagon 21mmF2.8 ZE + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整なし)
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中央(ピント位置)
1105611057

左下
11058
11059


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中央付近の画質がピタリと揃いつつ、周辺部で差が出たので、やはりMC-11のピントがいまひとつ決まりにくかったのは無限遠のズレが影響していたのかもしれません。今回は両方とも無限遠が不正確なので、ピント面の画質が揃いやすかったということです。四隅には明確な画質差が出ていますが、アンダーインフであるMC-11とフランジバック合わせをしたK&Fの画質差がほぼなかったことを考えると、Distagon 21mm F2.8の無限遠のズレはアンダーインフよりもオーバーインフの方が画質に対する悪影響が大きいということが言えそうです。左下はK&Fの方がシャープですが、これはむしろオーバーインフによって設計外の像面湾曲になっていると解釈すべきです。



【追加テスト その2】
Distagon 21mm F2.8のテストがいまひとつ不完全だったので、単純な全体繰り出しのEF50mm F1.4を使って再撮影を行いました。画角が狭くなるので精度面での厳しさは後退しますが、無限遠位置の正確さは問われないので比較の信頼性は上がるはずです。今回はフローティングの影響を考慮する必要がないので、中華アダプターからシムを抜いて購入時の状態に戻しています


EF50mm F1.4 + MC-11
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EF50mm F1.4 + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整なし)
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中央上(ピント位置)
1107211073

左下
11076
11077

右上
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フローティングのないレンズに変えたことで、ようやくピント面がきっちり揃ったという手ごたえが得られました。F1.4なので画質は乱れていますが、MC-11とK&Fの四隅に違いは見出せません。


EF50mm F1.4 + MC-11
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EF50mm F1.4 + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整なし)
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中央下(ピント位置)
1104811049

左下
11050
11051

右上
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画質は掲載していない部位も含めて、ピタリと揃っています。


EF50mm F1.4 + MC-11
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EF50mm F1.4 + K&F CONCEPT EF-NEX(フランジバック調整なし)
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左(ピント位置)
1106411065

左上
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11067


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画面の隅にディテールがない絵柄ですが、全画面を見渡したところ、やはり画質差はありませんでした。いちおう念押ししておきますが、快晴ではないのですべてのカットで環境光が動いており、各部のコントラストは完全には一致していません。



「驚きの結論」

正直な感想としては、かなり予想外の結果となりました。精度が低いと囁かれている中国製マウントアダプターにプラペーパーでシムを足すというおよそ厳密性に欠ける改造をした物が、まるで国産のMC-11に遜色なく四隅の均等性が保たれているのです。しかも、フランジバック調整をしてほぼ正確な無限遠が出ている分だけ、K&Fの方が正確な画質である可能性が高いという……。

一方のMC-11は、Distagon 21mm F2.8がわずか30メートルくらいまでしかピントが届かない体たらくで、まあ実際にMC-11の作りはとても細やかで最高なんですが、フランジバックに関してはそれほど正確でない個体が混じっている可能性があらわになりました。これが単なる不良品なのかはシグマ純正の EFマウントレンズがないのでよく分かりませんが、気が向いたら修理サービスに問い合わせてみることにします。

以上のテスト結果により、中国製マウントアダプターはマウントの平行度については特に問題なく、無限遠を合わせるためにシムを挟んだ物でさえ実用的な精度が出ていることが判明しました。ただし、この平行度――画質の対称性という要素はマウント金具のネジ締めが大きく関与していることは確かで、実体験として過去二回あった四隅の乱れ(もちろん、厳密なテスト撮影をしないと気づかない程度のもの)は一部のネジが突き当りまで回っていなかったことと、ネジ穴に金属の切りくずが噛んでいたことが原因でした。つまり、レンズマウントのネジ締めさえきちんとしていれば、安価な中華アダプターでも、画質面については問題ないといえるでしょう。

ただし……それで中華アダプターが万全であるということではなくて、マウント時の回転の重さや、マウント停止の不完全さによる回転方向のガタ、画面中心部のズレなどは依然として精度不足が否めなく、全体としては実用十分の価格相応という評価は覆りません。

まとめると、中国製マウントアダプターは画質面での精度はきちんと出ているが、細かな部分の品質では高価な国産品には届かず初期不良も多い、といったところです。今回はオールドレンズ界にうっすらと漂っていた疑惑に対するひとつの答えが出たことで有意義なテストだったと思います。


電子接点のないEF-NEXを使う理由はNIKON、LEICA R、CONTAX、M42その他のレンズをいったんEFマウントに変換して汎用性を高めるためで、EOSのレンズを使うためではありません。その代わり、ミラーレスを使う場合はマウントアダプターをふたつ挟むことになるので精度誤差も二倍になるデメリットがあります。