図形を書いてEマウントのケラレを調べるシリーズの最後です。作図についてこまかな説明、光学的な補足が必要な方は、以下をご覧ください。

Eマウントのケラレ検証 その3 
Eマウントとマウントアダプターの関係を作図してみる
http://sstylery.blog.jp/archives/77042641.html


まずはレンズの透視図を入手できたEF85mm F1.2Lをもとに、今回の記事の前置きをしたいと思います。

この図のカメラ側とマウントアダプターはすべて現物から実測していますが、これに合わせる交換レンズはCANONのWEBサイトに掲載されているレンズ構成図から大幅な拡大で合わせています。よって、正確さは欠けますし、一番重要な後玉もレンズごとに違う固定方法があるので、最端の光線がどの位置から射出されるかがわかりません。本来は実物を手にとって後玉の露出している部分を計測すればいいのですが、そういうツテがあるわけでもないので、これらの図はあくまでEマウントのケラレを見るための参考程度に過ぎないという認識でご覧いただければと思います。

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今回、EマウントーEFマウントアダプターにとって不利なレンズばかりのために、これまで無視してきたレンズの固定リングの幅を光線の射出位置に見込んでいることにご注意ください。よって、最端の光線は後玉のフチよりやや内側となっています。


Eマウントは基本的に、一眼レフ用のF1.2クラスと後玉が遠くなる望遠レンズとの相性が悪いということで、まずはEF50mm F1.2Lです。後玉の押さえ部分をてきとうに考慮して描いた一番端の光線はぎりぎりセーフです。ただし、これは無限遠なので、レンズの繰り出しが増えると光線がマウントアダプターの内壁に当たりそうです。
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続いては同じ明るさのEF85mm F1.2Lです。これは透視図が入手できたので、後玉の固定部分が描けています。明確なケラレが出ていますが、これはあくまで絞りF1.2の四隅です。
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F1.2ではありませんが、EOSの作例で明確なボケのケラレが出ていて気になったのがEF85mm F1.4L IS。作図したら、後玉がF1.2並の大きさでビックリです。CANONにこのレンズの設計意図を聞いてみたいものです。(※ISユニットが後群に入ることで後玉が必然的に大きくなったとのこと。https://cweb.canon.jp/ef/info/ef85-f14-usm/interview.html
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焦点距離は戻りますが、絶版のEF50mm F1.0L。このレンズはEOSで撮っても丸ボケがミラーボックスで切られまくってカマボコ状になるのですが、実際に後玉を配置してみるとそりゃそーだ!(笑)という。発売が1989年ですから、29年経ってミラーボックスのないEOS Rが出ることでようやく真の写りが見られるかもしれないという、とんでもない物語。
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CANONで名レンズといえば、EF135mm F2L。設計は古いでしょうが、大口径望遠レンズのボケに合わさる色艶が素晴らしい。光線は惜しいところでマウントアダプター内壁に当たっています。
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その他、100mmクラスは問題ないので、望遠レンズへ移ります。
EF180mm F3.5L マクロは明るさがF2.8に満たないわりには大きい後玉で、作図上ではケラレあり。
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万能性が高い焦点距離なのに、どうしても望遠ズームと比べられて不憫なEF200mmF2.8L II。後玉は小さく光線は完全に通っていますが、ピント位置が無限遠から離れていくと微妙にケラレそうな感じです。
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ズームの裏で隠れた人気がある超望遠の単焦点、EF300mm F4 L IS。これは後玉の大きさよりも初期位置が遠すぎて、ケラレが発生しています。望遠レンズを素直に設計すると後玉は遠くなるので、これは仕方のないところ。(※画像が縦に長いのでクリックで拡大)
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通称サンニッパのEF300mm F2.8L IS II。大口径超望遠ともなると、さすがに光線はしっかりケラレています。当初、レンズ構成図にある最後部のエレメントがドロップ・イン・フィルターだとは気づかずに、それで作図してしまいました。サンニッパなんて縁がないもので、ご容赦、ご容赦。
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超望遠はだいたいどれも厳しいんですが、ものすごく後玉が遠い例として、EF400mm F5.6Lを見てみます。このように後玉が二段階の幅を持つものだと、途中の段差を利用してエレメントを固定している可能性も高いので、もしかしたら、このレンズは後玉の最端が光線の射出位置なのかもしれません。(※画像が縦に長いのでクリックで拡大)
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ズームレンズに移りましょう。標準ズームのEF24-70mm F2.8L IIは後玉がそんなに前に出ません。ズーミングでエレメントが動いたとしても、これは大丈夫だと思います。
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望遠ズームのEF70-200mm F2.8L IS III、レンズ構成はII型と同じです。設計が新しいためか、後玉が大きく、完全なケラレとなっています。
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同じく、レンズ構成が変わらないままリニューアルされたEF70-200mm F4L IS II。開放F4ですが、これもマウントアダプターの内壁にやや当たっています。
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航空機撮りに人気らしいEF100-400mm F4.5-5.6L IS II。F値が暗いので初期位置の光線は問題ありませんが、これがズーミングとピント合わせでどのように変化していくのかは不明です。
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おまけで、EFレンズ以外で気になるものをいくつか追加しておきます。

スチル用交換レンズとして、ZEISSが最高性能を狙ったOtus 85mm F1.4。ところが、仰々しい世間の扱いとは裏腹にNIKON Fマウントとの共通化を図ったためか、Eマウント+マウントアダプターでもケラレなく使うことができそうです。これはFマウント様様ですね。
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こちらは旧型の時から評判の高いApo Sonnar=Milvus 135mm F2。無限遠では問題ありませんが、望遠系は繰り出し量が多いために最短付近ではケラレが怪しくなってくるかもしれません。
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価格が別次元のLEICA、Noctilux-M 50 mm f/0.95 ASPH。100万円を越える値段の理由はブランディングもあるでしょうが、本質的なところではレンズの小型化を実現するために高価な硝材を使いまくっているためだとか。ケラレ判定は、もともとMマウントがEマウントよりも小さい径なので余裕です。
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Noctilux-M 75 mm f/1.25 ASPH。F1.2クラスの中望遠ですが、やはりケラレの心配はありません。大きい後玉を無理やり埋め込んでいる風でもないので、ショートフランジバックがいかに設計面で自由度が高いか、ということではないでしょうか。
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ざーっと見てきましたが、この中のEFレンズを何本か持っていれば、ケラレと実際の画質との相関性が語れるのですが、残念ながら当方はオールドレンズユーザーということでそれは不可能です。超望遠ほどの極端な状況になってくると、実写なしに画質低下を語るのは難しいので、そのあたりの検証は他の方にお任せしてこのシリーズを終わりにしたいと思います。

まあ個人的には、よほどスコンと四隅が落ちないかぎりは、手持ちのレンズでばんばん撮りまくったほうが楽しいんでないの?と思います。もともと素の状態でも周辺減光はあるわけですし。


しつこく注意しますが、実際のレンズがどういう角度で最端の光線を射出しているかは不明なので、その辺はあんまりこの簡略図で決めつけないでくださいねっと。