ことの始まりはシグマのMC-11。このマウントアダプター、すごく手の込んだことをしていて、なんと、わざわざEマウントの四隅に当たる部分をえぐっているのです。

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では、実際にこの部分がとても有用かというとそれは疑わしく、シグマの本心としては植毛処理によって狭まるマウント径を少しでも改善したかっただけのように思います。剛性との兼ね合いもあるのでしょうが、本当に微妙な加工ですから。

でも、最新のレンズでは四隅にたっぷりと光が入る物もあるだろう、そういう場合は多少なりとも違いが出るのでは?と中判用のApo-Macro-Planar 120mm F4を装着して、普通のアダプターと撮り比べてみましたが違いはよく分かりませんでした。

うーむ……だいたいにして、Eマウントってどういうふうに光線が入射してるんだろう? ちょっと測ってみるか……なんてPhotoshopで作図し始めたら、もう泥沼。


にいさんがた、慣れないことはするもんじゃないぜ……。 _( ́ཀ 」 ∠)_  ゴフッ


そんなこんなで、素人なりに描いてみたのがこちら。α7IIの仕様にある35.8×23.9mmのセンサーサイズとEマウントの内径46mmという数字以外はすべて実寸で、紙とノギスを使ってカメラの内部を測ってみました。特に技術系の人間ではないので微妙な誤差はあると思いますが、センサーのケラレに関する部分だけは入念に確認したので、この図でだいたい合ってるはずです。いつもと違って画像がバカでかいのは、縮小すると微妙な部分が分からなくなってしまうから。

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こうやって作図してみると、撮像センサーの四隅が隠れるのはほんの少しで、本体のみで見るなら、普段、自分たちが思い込んでいる窮屈なイメージとはやや違うことが分かります。ただし、問題なのは、ここにマウントアダプターをはめるとその内壁の厚みによってさらに四隅が狭まることで、レンズから射出される光線が影響されるかもしれないという懸念です。この作図によって、各パーツの内径は判明したので、今度はこれを立体的に縦に直した画像でEマウントとマウントアダプターの関係を明らかにしてみたいと思います。


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マウント金具は微妙な段差があったりして正確な計測ができませんでしたが、おそらく、今回の作図がEマウントのケラレ疑惑に対する決定版になるはずです。


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まず、この図の全体的な説明をすると、大外の四角はそれぞれのマウントの内径とフランジバックを示しており、Eマウントが内径46mm フランジバック18mm、CONTAXマウントが内径48mm フランジバック45.5mmとなります。両者にまたがっている赤い縦線はマウントアダプターの内壁を表し、その下にある赤いでっぱりは最初の平面図で撮像センサーの四隅を隠していたフレーム枠です。
撮像センサーはマウント内径に対し、やけに大きいと思われるでしょうが、これは対角線の長さで、なぜこうするのか?というのは四隅のケラレを調べる作図だからです。見る側のイメージとしては、こちらに向かって斜めにセンサーが置かれている状態を想像してください。α7IIの仕様である35.8×23.9mmの横縦から計算して、対角長は43.0mmとしています。センサーの水色はカバーガラス及びIR/ローパスフィルターを意味していて、この厚みはフランジバックの数値からカバーガラスまでの深さを引いたものです。



Planar 50mm F1.4の無限遠。実際に一番端の光線がこのように射出されているかはともかく、特にケラレてはいません。後玉の大きさは金枠から露出している部分でおよそ30mmでした。
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Planar 50mm F1.4の最短撮影距離45cm。まだまだ余裕です。
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Planar 50mm F1.4でマクロ撮影を想定。繰り出し量は21.6mmで、14mmの中間リングを着けて最短までピントリングを回すとこのくらいになります。一番端の光線もだいぶぎりぎりになっていますがまだケラレてはいません。
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次は、Planar 85mm F1.4の無限遠。後玉の大きさがPlanar 50mm F1.4とほぼ同じなので、結果は特に変わりません。後玉の位置は50mmよりも若干、レンズ側に引っ込んでいます。
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Planar 85mm F1.4の最短撮影距離1m。まったくケラレはありませんが、このレンズの場合、最短撮影距離が通常の平均以下(焦点距離の10倍に満たない)という注釈がつきます。とはいえ、最短撮影距離の1mを越えて、85cmまで繰り出したとしても光線がケラレないことは予想できます。
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さて、光学知識に詳しくない一般の方はこれを見て腰が抜けたと思います。α7初期の騒ぎは何だったのかと。自分もPhotoshopでこの作図をしている時に、机から転げ落ちました。まあ要するに、Eマウントとマウントアダプターを覗いてみたときの嫌な感じは、あくまで人の目で見た印象であって、レンズの後玉を通る光線はぜんぜん別の状況であるということですね。それと、カメラ本体でセンサーの四隅を隠しているフレーム枠がまったくケラレには関係ないのにも驚きました。

じゃあ、いったいEマウントとマウントアダプターの組み合わせはどんなときにケラレるのか?ということを試してみたのがこちらです。


アダプターを内径54mm、フランジバック44mmのEOSマウント(EFマウント)に置き換え、架空の38mmという大きな後玉を配置してみました。
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マウントアダプターの内壁に最端の光線が当たっていますが、この程度では画質の悪影響には気づかないかもしれません。この図でいろいろ試したところ、後玉の直径35mmが完全に光線を通すための目安のようで、EOSマウントとよく似た大口径マウントかつテレセン性に配慮されたとするCONTAX N Planar 85mm F1.4の後玉直径が約34.5mmであることを考えると、Eマウントとマウントアダプターで対応できないレンズはかなり特別なレンズと言えそうです。
そして、もう一点、注意しておきたいのはレンズの初期位置が前であるほどケラレには厳しくなるということで、以前から言われているように、一眼レフ用の明るい望遠レンズがEマウントと相性が悪いのは確かのようです。

いちおう念押ししておきますが、最初に解説したとおり、ここまでのケラレ判定はマウントアダプターの内側に0.5mm厚の植毛紙を貼ったものなので、これが必要ないアダプターではもうすこしケラレに対して余裕ができます。この図だと、赤い縦線が1~2pxくらい外側に拡がるはずです。



あ~これでCONTAXでケラレがないことが確認できてよかったよかった……と話は終わりそうですが、実は、まだ終わりにすることはできません。

これらの図はあくまで模式図であり、光学的な補足が必要です。


1、後玉から射出される光線は必ずしもレンズのフチを通るわけではないので、以上の作図はかなり極端な例の可能性があります。

東芝テリー株式会社
「知っておきたい撮影レンズの光路図について」
http://www.toshiba-teli.co.jp/products/industrial/info/t/files/t0012_RayDiagram_j.pdf
3479

この光路図で、最端の光線が少しでも内側にずれれば、それだけでケラレに有利になります。


2、レンズの光束は絞れば細くなるので、ケラレが問題となるのは絞り開放側である。元から暗いレンズもそれと同義。

http://www.toshiba-teli.co.jp/products/industrial/info/t/files/t0012_RayDiagram_j.pdf
3480


3、仮にケラレが起こったとしても、よほどの度合いでないかぎり、光束の中心近くが切られるわけではないので目立った画質差とはならない。(一般的な悪影響としては周辺がやや暗くなる、ボケの口径食が強まるなど)

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以上の事柄から、Eマウントに一眼レフ用レンズを着けることは、そんなに無茶ではないと言えるでしょう。もし、ケラレてしまうレンズをどうしても使いたいのなら、そのケラレはカメラ内部ではなくマウントアダプター側で発生しているので、後部の内壁が薄いものを探すか、MC-11のように四隅を削るしかありません。

Eマウント側の形状も各社いろいろですが、手持ちの中で内壁が一番、薄いのが左下のEF-NEXのヘリコイドアダプターです。まさか、繰り出しが多くなる分、ケラレに配慮したなんてことはないですよね。モノの形だけ真似て本質を考えずの中華ですし。

左: シグマ MC-11  右: K&F CONCEPT+植毛紙
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うらたさんのヘリコイドアダプター(※友人知人ではありません)
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それにしても、ただでさえ狭く見えるα7のマウントアダプターに植毛紙を貼ってもケラレが起こらない理由がこれではっきりしました。普段使いの50mmや85mmなどは最初から光路に余裕があったということですね。


マウントアダプターといえば、オールドレンズ界隈で広まっているらしいTECHART LM-EA7。これはLEICA M - NEXの内部筒をモーターで前後させるAFアダプターですが、このMマウントにさらにM42 - LEICA Mなどを重ねて、なんでもかんでもAF化してしまおう!という遊びがあるようです。



で、その際に気になるのは、MマウントはEマウントよりも狭い内径だということ。今回の作図はいろいろな応用が利くので、ついでにそれも見てみます。

調べてみたのは同じPlanar 50mm F1.4で、マウントアダプターはC/Y - LEICA M + LEICA M - NEXの二段重ねです。手元にLM-EA7がないのでその代わりに普通のLEICA M - NEXを、C/Y - LEICA Mは持っていないので、他のアダプターを参考に作図し(仮)としました。
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一段目の内径がやや狭いですが、うまい具合に段々になっているものですね。これまでの図より二段目の内径に余裕があるのは植毛紙の厚みを省いているからです。こういう光路図なら、特に問題はないのでLM-EA7をベースとしたマウントアダプターの二段重ねに心配はありません。ただし、同じLEICA M - NEXでもヘリコイドアダプターはさらに内径が狭い物が多いために、この二段重ねは苦しそうです。



最後に、これはあまりいい情報ではないのですが、α7IIのセンサーサイズを調べたとき、35.8×23.9mmと意外にも初代EOS 5Dと公称値が同じだったためにすこし驚きました。あれ? フルサイズ用のセンサーって当時と比べてコストダウンが進んだはずだけど、まだきっちり36×24mmじゃないんだ…と。同時代に90万円近くしたEOS 1Ds Mark IIは36×24mmで、さすがフラッグシップと(ステータス的な意味で)うらやましく思っていましたので。

というわけで、各社のセンサーサイズをざっと並べてみました。


α7 35.8×23.9mm
α7II 35.8×23.9mm
α7III 35.6×23.8mm

α7R 35.9×24.0mm
α7RII 35.9×24.0mm
α7RIII 35.9×24.0mm

α7S 35.6×23.8mm
α7SII 35.6×23.8mm

α9 35.6×23.8mm


D610 35.9×24.0mm
D750 35.9×24.0mm
Df 36.0×23.9mm
D850 35.9×23.9mm

D5 35.9×23.9mm

Z6/Z7 35.9×23.9mm


EOS 6D Mark II 約35.9×24.0mm
EOS 5D Mark IV 約36.0×24.0mm
EOS-1D X Mark II 約35.9×23.9mm
EOS 5Ds/5Dr 約36.0×24.0mm

EOS R 約36.0×24.0mm


PENTAX K-1 Mark II 35.9mm×24.0mm


LEICA SL (Typ 601)  36.0×24.0mm
Leica M10 (Typ 3656)  36.0×24.0mm


36×24mmを謳うカメラは少数派で、多少の誤差があるのは今も変わらないようです。ただし、最新αの35.6mmって数字はどうなんでしょう? 誤差が0.4mmまでいっちゃったら、けっこう別ものだと思うけど……(※ただし、ケラレには強くなる)。う~~む、レンズの実焦点距離はどこもばらばらだし、身体の前後程度でカバーできる誤差は実用上は関係ないってことですかね。それにしても大胆な。

ライカは高額なだけあってさすがの拘りだと感心しますが、実はM9まで遡ってみると普通に35.8×23.9mmでした。まあセンサーサイズの誤差など、デジタルではどうでもいいのかもしれません。フィルムカメラだって、超広角を使うとフィルムゲートに斜めに光が入って実画面が伸びる現象なんてのがありましたし。