ちょっと状態がイマイチな個体なのでそんなに突っ込んでやりません。
(※記事で使うレンズがいつも綺麗なのは、WEBで見るのはそういう方が気持ちいいだろうということで、傷消しの画像処理をちまちま行っているからです)


Planar 50mm f1.7を手に取ると、まずガクっとくるのはスカスカのプラ外装です。プラ外装といえばVario-Sonnar 28-70mm f3.5-4.5も同じですが、あちらはさすがにズームレンズなので中身が詰まっていて、多少なりとも重厚感があります。それに対して、こちらは単純構造な分だけ軽さが安っぽさに直結していて、う~むと唸ってしまうのはレンズ銘板さえもプラということ。レンズの顔といえる銘板がプラだと、こんなにも質感が落ちるのかという妙な感慨があります。

金属パーツはフィルター枠と後部のマウントだけ。要するに、金属が接触する部分だけは強度を優先させている感じ。正面の銘板はCONTAXのプライドを死守したかったのか、プラスチックなのに刻印があるという不思議な仕様になっています(※他の場所はすべてプリント文字)。おそらく、この刻印を実現するためにプラの種類(表面処理?)を変えたことによって、銘板だけ他と質感が合わずにデザインが浮いてしまっています。
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ここまで徹底的なコストダウンをして、価格はMMJの最終時代で29,000円(外税5%)。同時期のPlanar 50mm f1.4が44,000円でコンパクトなTessar 45mm f2.8が37,000円となると確かにCONTAX最安ですが、そんなに安いとは思えないしCONTAXのブランド料って高いんだなあ…と素直に思います。

当時のヤシカ/Carl Zeissとしては、ユーザーが一番手に触れるピントリングか、もっとも外観で印象に残る銘板を金属にする選択肢もあったはずですが(Vario-Sonnar 28-70mmはフィルター枠がプラ、銘板が金属)、それさえも拒否した理由がコストダウンによってレンズ枚数を減らさないこと! ……したがって、50mm f1.7は50mm f1.4と同じ6群7枚変形ガウスで手抜きなし、似たような設計思想でレンズ枚数も同じならf値の暗い方が性能が上がるということで、一部では50mm f1.4よりも高性能な廉価レンズとして名を馳せることになるのです。


あのーヤシカさん、50mm f1.4が標準レンズの帝王なら、それを超える性能の50mm f1.7はどんな呼び名になるんでしょうか? 


(※他でも書きましたが、“標準レンズの帝王”はメーカーが用いた宣伝文句です。たぶん、Contarexの系譜ということで、rex=王に掛けたのかなと)

ちなみに、このBlogを始めてから世に広まる定番文句を信じなくなったのですが、Planar 50mm f1.7の性能がいいのはホントです。ハハハ~Planar 50mm f1.4の初期玉神話がバカバカしくなるぜ~みたいな。


その性能の証明をする前に、ひとつ寄り道。
Planar 50mm f1.7には機械的に良い部分がひとつだけあります。それは絞りの形で、AEタイプのぎざぎざがすでにf2.8で解消されています。絞りの刻みはf1.7 - f2 - f2.8ですから、ボケの形に拘るのなら開放から一段半絞ってf2を飛ばすだけで済みますし、f2のぎざぎざも他の大口径レンズに比べるとほんのわずかです。現物を手に取ってみるとこのレンズはAEタイプながら、短い絞り羽の影響が最小限のレンズといえます。

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では、Planar 50mm f1.7のピントチェックに入りますが、もうこれ、本当に一目瞭然なのでスマホでもなんでもいいので拡大画像を見てください。比較対象がこれまでで一番ピントがいい50mm f1.4なのですが、誰でも一目見て分かるほどの差があります。50mm f1.4を半段絞っても、ここまでくっきりしないと思います。


Planar 50mm f1.7 AEJ 絞りf1.7
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Planar 50mm f1.4 AEJ 黒刻印 絞りf1.4
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画角は50mm f1.7の方が狭いらしく、被写体が微妙に大きく写りますが、今回は撮影距離の調節=像倍率合わせはしていません。実焦点距離の違う同士を比べると、焦点距離が長い方がボケが大きいのでボケ質が良く見えるのですが、そもそも両者の開放f値が違うのでまあいいかなと手抜きです。50mm f1.7の方が暗いのでボケはきれいに見えますが、球面収差は同じ完全補正なのでもっとメリハリのある光で同じ印象になるかは不明です。

ピントはもう段違いにコントラストが強くキリっとしているのが50mm f1.7ですが、もわもわっとした50mm f1.4にも解像線の繊細さはきちんとあるようです。色収差は50mm f1.7の方が目立ちますが、この辺りは野外実写で影響度合いを見ていくことにします。



いちおうZEISSのデータシートも確認。左が50mm f1.7、右が50mm f1.4。

https://www.zeiss.de/content/dam/camera-lenses/files/service/download-center/datasheets/historical-lenses/contax-yashica/datasheet-zeiss-planar-1750-de.pdf
https://www.zeiss.de/content/dam/camera-lenses/files/service/download-center/datasheets/historical-lenses/contax-yashica/datasheet-zeiss-planar-1450-de.pdf

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MTFでは全体の平均は50mm f1.7の方が高く、絞り込むと50mm f1.4の方が優れるのはアサヒカメラの解像力テストにも示されていました。

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周辺減光は50mm f1.7の方が微妙に悪く、歪曲は50mm f1.4の-2.0%付近から少し良くなっています。経験的に開放f値が1.8や2.0のレンズはやや暗い分だけ周辺光量が豊富ということもなく、レンズ設計の観点からも、単に周辺の光束をたくさん取り入れるだけでは解像力が落ちてしまう(=収差補正が追いつかない)そうなので、50mm f1.7の周辺減光は別に普通だと思います。

総合的に見て、Planar 50mm f1.7はPlanar 50mm f1.4よりも性能が高いというのは概ね合っていますが、果たして、これが実際の野外撮影でどういった印象の差をもたらすのか?というのは次回以降のテーマとなります。