ニコンからとんでもない保護フィルターが出ました。



片面反射率は0.1%を追求、防汚コート、平面性への配慮、光学ガラスの強度よりも透明度を重視など、すべての面で理想を追求した物で、フィルターメーカーにありがちな製品の序列に縛られない分だけ一点突破的に分かり易く透過性能に拘っています。ただし、高級レンズ用を想定しているのか、フィルター径は67/72/77/82/95mmと、小口径の物には対応していません。
つまり、CONTAXに流用できる55mmがない~~。


んで。
現状、高すぎるので、まず手を出すことはないだろうと思われるARCRESTですが、デジカメWatchの記事で夜景の比較テストをしていました。

ニコンの高性能保護フィルター「ARCREST」を実写テスト
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/item/1066770.html

通常、この手の比較はびみょ~な結果になるはずですが、ARCRESTは明確に優秀で、さらに他のフィルターでもそれなりにゴーストの差が見えています。
なるほど面白い! それならば、うちのフィルターも夜景の実写テストじゃ!



すべて設定固定のマニュアル撮影。快晴を選んで絵柄の一致を心がけていますが、場面によっては遠くを走る車のヘッドライトの影響が出ています。画像を子細に観察して明らかにライティングの違う部位は車のヘッドライトが原因であることを、あらかじめご留意ください。

画像の並びは透過率の高い順で共通、フードは未装着でレンズにとって厳しい状況
フィルターなし - ULTIMA(透過率99.4%以上) - PRO1D Lotus(透過率99.4~99%、防汚コーティング) - L37 Super PRO(透過率99%) - CONTAX 1A MC(透過率不明、紫外線と青色光の一部を減衰させる)







Distagon 28mm f2.8 絞りf5.6
わりと無難な夜景を一枚目に。上は道路なので車の走っていないタイミングでシャッターを切りましたが、最奥で微妙にヘッドライトの影響が出ています。

フィルターなし
5500
ULTIMA
5501
PRO1D Lotus
5502
L37 Super PRO
5503
CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
5505

街灯のフレアにフィルターありなしの微妙な差があるだけで、小さなゴーストはすべて同一。明確な有意差は見つからず、フィルターの性能差は画質に表れていません。



Distagon 28mm f2.8 絞りf5.6
(歪曲補正あり)
なぜだか、フィルターを着けるとビルが暗く写る謎の景色。各階のライトによって発光するビルそのものの明るさがフィルターの表面反射を強めて透過率を落としていると推測しますが、真実は不明。

フィルターなし
5549
ULTIMA
5550
PRO1D Lotus
5551
L37 Super PRO
5552
CONTAX 1A MC
5553

フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
5554

フィルターを着けるとビルがわずかに暗くなるので、フィルターありは露出を微妙に損しているとも言えます。明るさの差はフィルターなし>ULTIMAPRO1D LotusL37 Super PRO>CONTAX 1A MCで、画面効果のあるCONTAX 1A MCはともかく他のフィルターでこれほど明確な変化が起きるのが不思議。



Distagon 28mm f2.8 絞りf8
明るい地下道なので夜景というより建物内の撮影に近いかもしれません。中央のライトはたいした面積でもないのに、真下に色の強いゴーストが浮いています。この手の不自然なゴーストは後玉 - センサー間の反射です。

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
5526

厳密な比較をすればフィルターありなしで気のせい程度に明るさの差が出ており、CONTAX 1A MCは明確に暗くなります。光源は真下を向いているのでエネルギーが弱く、フレアに差はなし。紫色のゴーストは光学的な理由というよりはフィルム時代のレンズコーティングとセンサー側のダストコーティングの相性の悪さと思われるので回避策はありません。



Distagon 28mm f2.8 絞りf8
同じ場面でさらにライトに寄りました。今回は色付きのゴーストはなし。

フィルターなし
5507
ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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注意深く観察すると、右下の青にフィルターなしのみ薄いフレアのようなゴーストが浮いていますが、これはフィルター枠が短いフードの役割を果たして画面外の有害光が切られるからです。つまり、広角レンズ用の円形フードも周囲を点光源で囲まれているような場所ではきちんと役に立つということですね。
光源にこれだけ接近するとフィルターの透過性能よりもフィルターガラスの状態が重要らしく、目視できるホコリの乗り方でフレア、ゴーストに違いが出ています。具体的にはULTIMAはフレアが大きめで、L37 Super PROとCONTAX 1A MCはそれぞれ違う位置にゴーストが発生していますが、フィルターの停止位置を変えると画質低下の様子もその都度、変わることも現場で確認しています。



Distagon 28mm f2.8 絞りf5.6
街灯に向けて絵を作り、夜景での強い逆光を比較。右下方向の色付きゴーストはフィルター要因ではなく、後玉 - センサー間反射。階段頂上右端でカットごとに動いているのはゴーストではなく風に揺れる草。

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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ゴーストはどれも変わらず、光源回りのフレアはフィルターなし<ULTIMA≒PRO1D Lotus≒L37 Super PRO<CONTAX 1A MC。ひとつだけ様子の違うPRO1D Lotusの光芒はホコリの影響と思われます。画像の右奥はどこからか車のライトが当たったのか、カットごとにバラツキがあり評価なし。それ以外の描写では明るさの差が発生、順番はいつものとおり、フィルターなし>ULTIMAPRO1D LotusL37 Super PRO>CONTAX 1A MC



S-Planar 100mm f4 + Mutar I 実効絞りf8(画質低下を明確にするために二倍テレコンを追加)
右上を車が通るので、絵柄の完全一致が難しい状況。道路付近は無視して、線路内とそのシャドーを観察します。線路撮影で条件一致させるには、踏切が鳴らないタイミングかつ、車が完全に途切れるのを待たなければいけなくてものすごく大変……。

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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フィルター装着時の明るさの差は気のせい程度にあるがほぼ同一描写。信号機のライトは弱く、画質低下はなし。PRO1D LotusとCONTAX 1A MCで発生している小さなゴーストは理由不明で、画面外で何かが点灯していた?(フード未装着なので画角外の影響を受けやすい)



Planar 50mm f1.4 絞りf4
建物のクローズアップ。看板のライトはカメラ側を向いていないというのがポイントで、夜景ながら画質低下の要因がありません。

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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全体的にハイコントラストな景色というだけで、フィルター装着の害が表れにくい景色です。入り口のドアは明るいが特に有意差はなく、CONTAX 1A MCだけ暗くなっているのが確認できる程度。



Planar 50mm f1.4 + Mutar I 実効絞りf5.6(画質低下を明確にするために二倍テレコンを追加)
ようやくフィルター装着でゴーストが発生する事例に遭遇。中央のライトに相似するように、その左下にちいさな点状のゴーストがふたつ発生しています。やはり、レンズ構成の複雑な超広角やズームレンズを使わない限り、分かり易い画質低下は出てくれないようで、結局は数日間の撮影の中でフィルター装着時のみゴースト発生はこの絵だけでした。

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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中央のライトはかなり強力なようで、フィルターありではゴースト発生とともに広範囲にシャドー浮きが起こっています。CONTAX 1A MCは暗くなる性質がシャドー浮きを打ち消してフィルターなしとほぼ同じ明るさですが、ゴーストは一番はっきりしていて、この点については素直にコーティングの性能差と言ってよさそうです。




Distagon 28mm f2.8 絞りf5.6
明るい街中でありがちな絵柄。あちこちに点光源がありますが、エネルギーはそれほどでもない模様。(※撮影すると街灯は露出オーバーとなるために、すべて強光源に見えてしまう)

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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街灯のフレアに差はなく、中央縦長の発光体も画質に影響なし。フィルターありは中央から左の明るい壁が暗くなっており、 CONTAX 1A MCは特に顕著。




Distagon 28mm f2.8 絞りf8
画面内に光源が存在しない薄暗い景色。右奥の道路を車が走っていますが、手前には関与しないので無視しています。

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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順光なのでさすがに違いが出るはずもなく、CONTAX 1A MCのみ通常どおりやや暗く写っているだけです。



Distagon 28mm f2.8 絞りf8
広角レンズでライトに寄っている厳しい状況ですが、画質低下は小さなゴーストがひとつあるだけです。ところが……
5563

RAW現像で露出を上げてみると、これだけの画質低下が隠されていました。本来の狙いではありませんが、今回はこれでフィルター比較を見てみます。

フィルターなし
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ULTIMA
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PRO1D Lotus
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L37 Super PRO
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CONTAX 1A MC
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フィルターなし - ULTIMA -  PRO1D Lotus - L37 Super PRO -  CONTAX 1A MC(拡大可)
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さすがにシャドーの締まり、フレア、ゴーストの少なさはフィルターなしが一番です。フィルターありの描写はばらばらの場所に大きなゴーストが出たり消えたりしていて、これは撮影終盤のフィルターガラス(ホコリ)の状態差です。強いて言うなら全体を見て一番悪いと思われるのがCONTAX 1A MC。



この比較を見て、保護フィルターありでも全然問題ないやん!っという感想が出てきそうですがまったくそのとおりです。ただし、冷静にこの事実を捉えてみると、大事なのは夜景撮影といえども逆光に相当するような場面は少ないということで、小さな点光源の並ぶような遠景撮影ではフィルターによるフレア、ゴーストの拡大はほとんど無視できるようです。
ただ、その一方で、夜景の建物は街灯や各階の照明による強い反射光を発していたりして、建物自体の明るさがフィルターガラスの表面反射に作用して透過率を落とす=画面が暗くなるなど、厳密には複雑な現象も起こっているようです。

このようなケース・バイ・ケースによる画質低下を乱暴にまとめると、夜景というのは点光源によって無造作にライティングされた強コントラストの景色であり、保護フィルターの悪影響などはとてもひとことでは語り尽くせないとなります。つまり、強いライトがこちらを向いているか横を向いているかだけで結果が変わる極端な世界。

そんなこんなで、どーにもこーにもこの比較結果をうまく言葉でまとめられなかったので、結論を濁していつもの箇条書きだけでお茶を濁すことに致しましょう。


・遠景の夜景写真では点光源のエネルギーは小さく、画質低下はほぼない。
・中景などで点光源との距離が縮まると、光源周りのフレアの量でわずかな差が見えてくる。
・近景で点光源のエネルギーが強くなると、透過性能よりもフィルターガラスの状態差(ホコリの付着など)の方が画質に与える影響が大きくなる。
・ただし、激しいフレアやゴーストも画面の明暗差が強すぎる場合には、露出の関係で夜空に埋もれてしまう時もある。

・明るい建物は一種の発光体であり、広い面積でフィルターの表面反射を増やして画面をわずかに暗くする。
・夜景というのは暗闇の中で滅茶苦茶にライティングされた景色なので、画質低下の傾向は使うレンズと構図次第、現場で実際にカメラを構えてみないと分からない。
・日中と違いコントラストが強く大雑把な諧調になるためか、フィルターの細かな性能差は見え難い。



さて、ここでデジカメWatchの記事に立ち返ると、撮影者さんも有意差を出すのに苦労しているようなフシがありますし、明確な違いが出ているPC-E NIKKOR 24mm f/3.5D EDなどは10群13枚という24mm単焦点としては桁外れのレンズ枚数です。正直な話、これぐらい反射面の多いレンズを使わないと記事にならなかったというのが本音に思えますが、それが真実だとするとフィルター装着時のみゴーストが出た当BlogのテストはPlanar 50mm f1.4(6群7枚)+ Mutar I(5群6枚)で、計11群13枚のレンズ構成でほぼ同等、やはりDistagon 28mm f2.8(7群7枚)を中心に据えたレンズ選択がやや不適切だった気もします。(といっても、CONTAXはシンプルな単焦点ばかりなので、ちょうどいい物が手元にありません)

デジカメWatchの記事中で比較したフィルターも片面反射率が0.1%付近のARCRESTに対し、恐らくは片面反射率0.3%付近のZeta、EXUSクラスと普及価格帯のノーマルMCと、性能的にも分かり易い差がある物を選んでいるようです。それに対し、当BlogはULTIMAからL37 Super PROまで似たような物をずらずらと並べ、最下位クラスに関しても画面効果のあるCONTAX 1A MCですから、どうにもこのテーマをやり切った感がなく、なんとなくモヤモヤが晴れていません。


最後に、この比較テストで得た実感として自信をもって言えることは、夜景撮影で点光源が存在する場面では、フィルター表面のコンディションがかなり敏感に反応することで、拭きの甘さや目視できるホコリの付着がフィルターの性能差を超えて画質低下をもたらすことは珍しくありません。
今回はそれを分かっていたので、入念な拭き上げ(+後ろからライトを当てた確認)をしてから撮影に臨んだのですが、それでも時折、画質低下のバラつきを確認できたのは以上のとおりです。

つまり、夜景で保護フィルターを使うなら、防汚コートは必須!!



【おまけのお役立ちネタ】
フィルターやレンズのホコリ取りに大活躍するのが除電ブラシ。
今回のテストで自信たっぷりにホコリと断定しているのは、このブラシによってフィルターが完璧に近い状態まで清掃できているため。普通のブラシでは取れないホコリがするすると取れます。やや難点なのは、55mmフィルターが一回で刷けてしまうほどに幅広なこと。


センサーの掃除用にこちらも買ってみようと思っていますが……。
(画像は三本組ですが、この型番は一番小さいブラシになります)