マウントアダプターのK&F Conceptはタダモノではありません。

海外市場でその名前を見かけた当初からカラー印刷の箱つきで、商品は中国製の匂いを感じさせないロゴ入りかつスマートなデザイン、きちんとブランディングされたその姿勢は日本AMAZONでの取り扱いを契機にあれよあれよとマニア層に浸透し、とうとう本格的な日本進出を果たすまでになるのです。

【CP+】MFレンズとマウントアダプターのマニアックな世界
マイクロフォーサーズ用魚眼レンズなど 廉価アダプターのK & F Conceptが日本初上陸
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/eventreport/1046440.html


焦点工房、K&F CONCEPTの取り扱いを開始
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1047312.html


K&F Conceptの良さはひとえに品質が一定に保たれていることで、その品質とは極端な安値競争をしない代わりにむやみやたらなコストダウンをしないことです。その結果、K&F Conceptのアダプターは中国製品にありがちの初期不良や個体差を排除するには至っていませんが、マウント時のスムーズさやマウントロックのぎくしゃく感のなさなどでユーザーに好印象を与え、「次もここにしよう」と素直に思わせるほどの安心感を醸しだしているのです。

興味深いのは、これだけユーザーに受け入れられているわりには、メーカーは売れ筋をすべて網羅しようなどという大胆さはないのです。まさに力押しではない従来の販売戦略どおりに、ヘリコイドアダプター(LEICA M - NEX)やギア駆動のCONTAX G - NEXなど製造難度の高い製品はさけ、今現在、もっとも流行りの電子接点付アダプターはEF - NEXの一商品だけです。

そういった保守的な面が見える一方、フジの中判ミラーレス用アダプターは数が出ないはずなのに積極的に網羅するなど攻めの姿勢もあり、これらを総合すると、K&F Conceptはとても商才のある方が全体の方向性を決めているのではないかと思われます。


そんなK&F Conceptがはじめて独自の進化を見せたのが、少し前に発表になった新型のマウントアダプターです。後部は真鍮製の別パーツとなり、内部は反射防止塗装あり。果たして、その実態は?

K&F CONCEPT、ソニーE用マウントアダプターに改良型
M42、ニコンF、キヤノンFD、ミノルタSR用
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1051426.html

……と、ここで本来なら、すぐにレビューが始まるのですが、今回はもうちょっと前置きが続きます。実は、やり手のK&F CONCEPTさん、うちのサイトにレビュー依頼を申しこまれたのです。


え゛ うち、そんな有名サイトじゃないんですけど、ホント? ( ̄□ ̄;) !!


コメントをいただいた営業の方のメールアドレスはyahoo.co.jpで怪しさ満点でしたが、併記されていたメーカーサイトのco.jpドメインは登録内容を見るかぎり信頼できそうです。そして、素早いレスポンスのメール交換の数日後には今回のレビュー商品であるM42 - NEXアダプターが届いたのでした。


なに? 長々と書いていた前置きがすでにヨイショだって? それがそのとおりかは、このあとの内容でご判断いただくとして、営業の方には悪い部分も隠さない公平なレビューをしていいという確約を取ってあります。

それでは、はじまりはじまり~。



どん。

一般に、中国直送品だとこういった箱はベコベコになりがちですが、今回は国内のAMAZON発送品なのできれいなままです。
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こういうセンスは他の中国製品にはないなと思わせるメーカーアピール。説明書ではありません。
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どどん。

今年の3月に発売された新型アダプター M42-NEX(ピン押しタイプ)。後部が真鍮製の別パーツになったために、やや重量が増しています。
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後部のネジどめはRayqualと同じで、低価格帯の製品で本当にこれが精度に寄与するのなら凄いことです。残念ながら、C/Y-NEXなどはまだ新型がでていないので、メーカーとしても様子見の部分があるのかもしれません。
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製造の信頼度を確かめるために四か所のネジにドライバーを当ててみましたが、しっかりと組み付けられていました。以前、レンズ側のネジ締めが甘いものがあり、超広角で偏心が起きていたので、新たに入手したアダプターはすべてのネジを必ず確認するようにしています。
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新型には反射防止塗装がほどこされ、なにからなにまで良いことづくめに思えますが、実物を手にすると、え?っと戸惑います。マウントの回転止めとなる小ネジの裏側(中央の穴)は出っ張ることなく見事ですが、このとおり、パーツ内部には溝切りがないのです!
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え~どうして一番大事な部分を省略するかなあ~。でも価格据え置きだからな~と、落胆しながら営業の方に問い合わせるとこれで正しく、しかも「けっこういい」という評判もあるとのこと。

よし、ならば比較じゃ!とやってみました内面反射テスト。
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実は、この比較をやるたびにすでに使っているアダプターの植毛紙を剥がしたり貼り直したりしてるんです、こんちくしょー! ( ;∀;) テマカカッテルヨ



※テスト内容は過去記事と同じ。ここから少し寄って光源を切った青枠が実際のフレーミングです。

Oreston 50mm F1.8 絞りF4 マニュアル撮影で設定固定
(アダプターの状態だけを変えています)
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左: 植毛紙  右: 溝切りあり+反射防止塗装
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左: 溝切りなし+反射防止塗装(新型M42 - NEX)  右: パーマセル
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艶あり塗装(従来製品)
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結果としては、新型M42 - NEXは順当にパーマセルよりは良く、溝切りあり+反射防止塗装よりやや劣るといったところで、この並びは性能の順です。正直、新型M42 - NEXはもっと悪くなるかと思っていましたが、艶消し塗料の質がいいのか反射面が平らなわりには良い成績です。

とにかく、従来製品の悪さとは別次元といえるので、ようやくユーザーが自分自身で反射防止処理を行わなくてもいいアダプターが手に入ることとなりました。

関連記事:
マウントアダプター 理想の内面反射対策
http://sstylery.blog.jp/archives/69456482.html

ところで、M42マウントは単純な捻じこみ式になるために、この手のマウントアダプターでは必ずしもレンズの指標が真上に来るとはかぎりません。これはメーカー間の差などもからんでくる問題なので、たいていのマウントアダプターは周囲のネジをゆるめてM42リングの固定位置を調節できるようになっています。
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M42リングは奥側が斜めにカットされており、ここにアダプター側面のネジが突き当ることで回転止めと脱落防止を同時におこなっているようです。
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調整前→調整後
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左が商品到着時の状態で、やや中心が行き過ぎていますが実用には差し支えありません。M42リング外周部には製造時の当たりがついているので無理して停止位置を修正せずに、そのままで使うほうが剛性面からも安心では?というのが現物をいろいろいじくってみたあとの感想です。

なお、調整に使う六角レンチですが、一般的なセットについてくる1.5mmは大きすぎ、それよりもさらに小さな1.27mmで回せましたがガタつくほどにゆるかったので適合サイズはよくわかりません。1.4mmは一般的ではないので1.3mmが正しそうですが、0.03mmの違いでそんなにガタつくかなあ?と謎です。


最後に新型M42-NEXの使用感ですが、オーバーインフは平均的でさまざまなレンズに無難に対応できる範疇だと思います。仮にきっちり無限遠を∞マークに合わせたい場合でも、ピン押しの板とM42リングの間にシムを挟むだけなので改造はとても簡単です。逆光ではフレアが発生しがちな旧型の癖はなくなり、目立った問題はなくさまざまな場面に対応できます。

やや気になったのは、後部が肉厚の真鍮パーツに変わったために、あきらかに重量感が増したことで、軽いレンズの軽快感を重視する方はあえて旧型を選び、反射防止処理は自分でおこなう選択肢もあるかと思います。まあ、両方買ってもひとつ2000~3000円の物なので、使い分けをしてもいいかもしれません。


Oreston 50mm F1.8 + 新型M42-NEX 絞り開放
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ちなみに、K&F Conceptはグローバルサイトにjpドメインの通販ページも設置しているようで、これはAMAZONのFBAマルチチャネルサービスを利用した国内発送だそうです。(※在庫がない場合には、中国発送とのこと)

K&F Concept
https://www.kentfaith.co.jp/

新型M42 - NEX
https://www.kentfaith.co.jp/KF06.305
(支払いはクレジットカードもしくはPaypal)

※FBAマルチチャネルサービスとは、自社のECサイトや実店舗、オンラインショッピングモール店舗など、Amazon以外の販売経路で販売している商品の出荷・配送・在庫管理までを、Amazonが代行して運用する物流サービスです。
https://services.amazon.co.jp/services/fulfillment-by-amazon/mcf-overview.html

その出荷元はAMAZONのbestkfというストアIDのようで、要するに日本では焦点工房の他に、このIDが信頼できる購入元=直販となります。

※現在は一部レンズとの干渉に配慮された新型になりました。
【おまけ】
今回のM42 - NEXはスクリューマウントなので無関係ですが、中国製のマウントアダプターでよく不満があがるのがレンズマウントのきつさです。ところが、これは簡単に調整可能なので追記しておきます。

その方法とは、分解せず板バネを後ろから割り箸で押すだけ。
割り箸を使う理由は、多少、手が滑ってもアダプター本体を傷つける心配がないためです。
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少しゆるくし過ぎたかな?と思ったら、今度は先を削った逆側をこじ入れて、えいえいっと押し下げます。
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板バネはバネといっても薄い金属板をアーチ状に曲げているだけなので、たったこれだけの作業でベストの装着感にすることができます。

では、なぜ中国製品はこんなかんたんな調整もなく出荷されているのかというと、この部分は作業者の感性による部分が大きいからで、これまで買ったさまざまな製品をかえりみるに、中国の作業者は決まりきった組み立て以外にはほとんど気をつかいません。だからこそ破格なのだといえますが、このレンズマウントの固さ緩さは本当に品質がバラバラで、過去にはスカスカで固定できない(笑)とか、固いどころか曲げ過ぎた板バネに当たって入らない(笑)とか、ものすごくおもしろい体験もしました。

でも、これらが加工ミスでなく、板バネの問題であるかぎりはすべて購入者側の調整でスムーズになるので、皆さん、これからは中国製品にぶーぶー言わずに楽しんで好みの感触に直しましょう。レンズ側がスルッ、カチッてはまると、おお中華いいじゃん!ってなるので。