疑問の発端は現在、テスト中のCONTAX N Planar 85mm f1.4でした。このレンズ、大口径中望遠なので当然ながらボケは重要で、必然的に画面の多くに発生するアウトフォーカスの質を確かめるためにいろいろな撮影をしていました。ところが、別に特殊な構図を意図したわけでもないのに、簡単に丸ボケが欠けるのです。
おや?と画面内の異変に気づいてカメラを振るとその動きに連鎖してボケの上下が欠けたり戻ったり。これは間違いなく、アダプターの内部でケラレている。

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なんと見事なケラレ……。
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しかも、こんな小さな前ボケやら……
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何気ない後ボケでさえ……
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よく見ると、ボケは画面の上半分に位置するのに下側が欠けているという異常事態。
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こうなる原因はまず第一にCONTAX N - NEXの開口部の狭さにあります。N Planar 85mmに組み合わせているのはα7IIで当然ながら電子接点付きアダプターなのですが、安い中華製品を選んだためにマウント開口部が36×24mmぴったりなのです。初代からミラーボックスがキツキツなEOS 5Dシリーズでさえ、周囲に1mm程度の余裕があるのに、これではケラレが発生しても仕方ありません。その上、N Planar 85mmはEOSに肩を並べる大口径マウントで後玉は旧CONTAXのPlanar 85mmよりもひとまわり大きくなっています。

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この東芝テリーさんのPDFのように、レンズの光束がケラレないためには後玉から射出された光線がセンサー端に到達するまでにミラーボックスなどの枠によって切られないことが条件です。つまり、N Planar 85mmとこのアダプターの組み合わせだと、後玉が大きいのにミラーボックス相当の開口部が狭い、と明らかに不利な条件が揃ってしまっています。

東芝テリー株式会社
「知っておきたい撮影レンズの光路図について」
http://www.toshiba-teli.co.jp/products/industrial/info/t/files/t0012_RayDiagram_j.pdf
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ただし、ここで整理する必要があるのは、ボケ以外のピントの合った描写では別段この組み合わせでも不都合が起こっていないことです。きちんと観察すれば微妙な陰りがあるのかもしれませんが、ボケのケラレほどにあからさまな影響は見られません。となると、アダプターの開口部で切られてしまうボケの光束っていったいどうなっているのでしょう?


画像処理ソリューション
焦点深度、被写界深度、絞りとの関係
http://imagingsolution.blog107.fc2.com/blog-category-18.html
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これを見る限り、ある被写体にピントを合わせた場合に、それよりも遠い被写体は撮像素子よりも手前側にピントを結ぶ後ボケに、近い被写体は撮像素子よりも後ろ側にピントを結ぶ前ボケになるようです。物体距離 aの長さと像距離 bの長さは反比例していて、遠い被写体ほどレンズと撮像素子の距離が短くなるというのは、全体操出のレンズが移動する様を思い浮かべてみればまさにその通りです。
このことから、ボケの光束というのは被写体の距離に応じて撮像素子の前後で焦点を結んだもので、そのずれた光束の広がりが写真に写るボケ像と言えるでしょう。(※単純化するため、被写界深度は考慮に入れず。)

これを分かり易く簡略化してみます。


ある一点にピントを合わせた光束
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その時、ピント位置より遠い側に物体がある場合の後ボケ
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その時、ピント位置より近い側に物体がある場合の前ボケ
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あくまで素人の作った概念図であり学術的な正確さはありませんが、確かにボケの光束はセンサーにピントを結んだ光束とは違うようです。特に前ボケの光束がセンサー手前で太くなっており、これが画面周辺部に入射することを考えると、(実用上)画像ではケラレがないのに丸ボケがアダプターの開口部(ミラーボックス)でケラレてしまう現象の説明が付くと思います。

となると、EOS 5Dの狭いミラーボックスでもこれまで絵的に気にならなかっただけで、ボケのケラレは存在していたんじゃ? ……と思ってテストしてみたら普通に出ます。この絵で上より下に位置する丸ボケの欠けが目立つのはEOSの場合、跳ね上がったミラーの厚みがミラーボックスを狭めるからです。(※カメラの原理的にレンズの投影像は上下左右が反転するため、画像の下はミラーボックスの上になる。)


CONTAX Planar 85mm f1.4 MMJ + EOS 5D
カメラから40cm程度の距離に強い反射を置いて前ボケに、ピントは奥。
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これらは反射の強い丸ボケを画面端に配し、意図的に狙って出したケラレなので、ごく自然に絵を作った過去の写真ではどうだろうと見直してみたら……。あるにはある、でも、ないものもある……とあまり判然としません。

CONTAX Planar 85mm f1.4 MMJ + EOS 5D
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さすがにこれだけ極端な構図でははっきりと出ています。
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正直に言うと、これまでこれっぽっちもEOSとCONTAXの組み合わせでボケがケラレているなんて疑いもしていませんでしたが、その理由としてボケは真円に限らず様々な形状をしていること、レンズのF値/画角/撮影距離の違いによりボケの大きさは多種多様であることなどが考えられると思います。つまり、撮影レンズの組み合わせや撮影方法の違いなどにより、ボケの光束は常にケラレる可能性をはらんでいるわけではないということですね。おそらく、f2.8クラスのレンズ常用、もしくは大胆なボケ撮影をしない方には、これらの問題は完全に縁遠い話なのでしょう。

※レンズの光束はf値が小さくなるほど細くなるので、前述の室内テストでもf2でぎりぎりケラレが出るか?といったところで、f2.8ではまったく問題が無くなります。
http://www.toshiba-teli.co.jp/products/industrial/info/t/files/t0012_RayDiagram_j.pdf
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さて、マウント径の大きい=後玉が大きいN Planar 85mm f1.4はさておき、もっと一般的な後玉のPlanar 85mm f1.4 MMJをα7に組み合わせた場合はどうなるんだろう?と疑問が浮かびますが、残念ながら今現在、ミラーボックス相当の形状を持つEF - NEX AFアダプターを所有していませんし、すでに自作のフレアカッターも外してしまいました。
なので通常のスカスカの筒の場合、丸ボケが欠けるのかを見てみたんですが、なんと逆転現象が起こり、EOSでケラレる状況がα7ではケラレないのです! アダプター内に何の障害物もないんだから何を当たり前のことをと思われるでしょうが、実はこのアダプターにN Planar 85mmをあてがってみても、やはり欠けないのです。マウントが狭い狭いとあれだけ陰口を叩かれていた機種なのに!!   (゚Д゚;)


CONTAX Planar 85mm f1.4 MMJ + α7II
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こうなると、ボケを重視し大胆な構図を試みるBokeh使いにはフレアカッターも何もない一番安価な筒状のアダプターに植毛紙を貼るのがベストかもしれません。

ここでようやく、各社のEF - NEX AFアダプターの開口部の形状違いの意味が理解できました。


・長方形の開口部が36×24mmに対しぴったりなアダプターだと、フレアカットの効果は高いがf1.4のボケの光束を切る可能性がある。(側壁に植毛紙貼り付けがある上で、短辺は26mm程度の余裕が欲しい。)


・めいっぱい開口部を広げたシグマのMC-11はボケの光束にもできる限り配慮した設計。


・長方形にえぐれを足した類似品多数のアダプターは、本来はアオリの斜め光束に対応したものだがボケにも有利なはず。ただし、えぐれは中央部だけなので端の丸ボケが欠ける状況があるかも。


・RAYQUALのCY - SαE(CONTAX - NEX)はサイトの情報量その他から判断して、おそらくCONTAXレンズと現物合わせでフレアカッターを最適化しているはず。というより、光束はほとんど切られていない?



……とまあ、これ、以前の記事の訂正になり、つまるところ逆光性能とボケのケラレ対策はトレードオフであるということですね。浅はかでごめんなさい。<(_ _)>



ただ、そうなるとEF - NEX AFアダプターは高価なMC-11が一番無難では?と焦りますが別にそんなことはなくて、通常のf1.4クラスでごく普通の構図を作っている限りはEOSの狭いミラーボックスでもほぼ無問題ですし、後ボケよりも前ボケの方が欠けやすい(一般に使われやすいのは後ボケ)という現実を考えると、実用的観点からボケのケラレが話題にならないのも納得できます。そもそも、丸ボケを操る撮影自体がごく一部の手法に過ぎませんし。

それでですねえ……今回、あれこれ実験している時に思ったんですが、α7シリーズの撮像素子って微妙に中心から上にずれて設置されているのではないかと。確か初代α7の発売当時に、撮像素子は狭いマウント内で電子接点を避けるために上側にオフセットされているという文言をどこかで読んだのですが、検索では情報が出てこないんですよねえ……。(※手ブレ補正のあるII型は通電しないと撮像素子が固定されないので注意。)

自作のフレアカッターを付けた時にも正対称に開口部を配置するとなにか違う感じがあって作り直しましたし、今回の疑問の発端となったCONTAX N - NEX アダプターも上よりも下のボケがケラレ易いということは、すなわち(撮影像は上下左右が逆転するので)正対称できっちり作られた36×24mmの開口部と上にオフセットされた撮像素子の位置関係がずれている可能性があります。

まあ、そのへんの細かいことはともかく、値段の高いFringerがこれだけどでかい開口部を設定してるのだから、そりゃあN Planar 85mmに狭い長方形の開口部は無理があるよね、と。ここでは触れませんでしたが、Nレンズがテレセン性に配慮された光学系なら、なおさら画面周辺部でケラレ易い光路になっているでしょうから。



ちなみにKIPONは最新型のCONTAX N - NEX AFアダプターではボケの光束を意識しているらしく、開口部はまるっと円形になっていました。



最後に、要点を分かり易くまとめておきます。


・実画像でケラレ(四隅の陰り)がなくても、画面端のボケが欠けることがある。
・その条件はレンズの後玉が大きく、ミラーボックス相当の開口部が狭いマウントアダプターの組み合わせで主に絞り開放。
・意図的に丸ボケを強調した構図の時に表れやすく、アダプター内で光束の太くなる前ボケに顕著。
・ボケのケラレをなくすために重要なのは36×24mmの短辺の広さ。

・α7シリーズは撮像素子が上にオフセットされている疑惑がある。
・EOS 5Dシリーズのミラーボックスは跳ね上がるミラーの厚みにより、実画像の下側のボケが欠けやすい。

・CONTAX N Planar 85mm f1.4は上下に広い開口部が必要。


以上ですが、この話はたまたまN Planar 85mmという珍しいレンズを扱ったために顕在化した現象と念を押しておきます。ご自分の写真を見直してみて、上記画像のような不自然な丸ボケがなければお使いのレンズとマウントアダプターは適切な組み合わせである、もしくは問題の起こらない撮影スタイルということで、まったく気にする必要はありません。


それでは、良いBokehライフを~~。 (* ̄▽ ̄)ノ~~