最近、中国製アダプターに関して驚いたことがひとつあります。

適当に買ったこのEXAKTA - NEXアダプター、FOTOFOXという名前がついていますが同じ形の名無しも出回っているので単なるOEM製品に違いありません。ここまではよくある話。
ところが、これ…………
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反射防止塗装が………あ……あるっ………。
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なるほど狡猾な女狐ねっ!! もふもふした尻尾をふりふりしながら艶消し塗装をぬりぬりして村の男どもをたぶらかそうというのか!? あひーこりゃたまらん!!


………………


もとい。

とうとう中国製が日本製に追いついてきたのかと震撼せざるを得なかったのが、これと浦田さんのヘリコイドアダプターと反射防止塗装ありの製品が続いたことです。近頃、安定した品質で特に勢力を増してきたK&F Conceptは日本のカメラショーにも出展していたらしく、従来の中価格路線でブランド価値を上げようとしてきたKIPONとは別の本気を感じさせ、ついに実用重視だった低価格アダプターも性能を競う段階へと突入するのか?と驚き半分疑い半分です。

【CP+】MFレンズとマウントアダプターのマニアックな世界
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/eventreport/1046440.html

とは言え、勢いを増しているK&F Conceptにしても反射防止塗装はまだ未着手ですし、たまたま手に入れたこのEXAKTA - NEXの仕上げも中華製品全体から見ればごくごく少数派です。しかし恐るべきは、今回のアダプターは特に値段を上げていないのに手間のかかる反射防止塗装を実現しているところ。いったいぜんたい、これを作っている工場のひとたち、どうしちゃったの?


……しかし、しょせんは低価格品の限界か、ひとつ豪華にすれば他の部分でコストを抜くというのは常套手段、これは手抜きというより不良の一種かもしれませんがマウント後部の回転止めのピン(ネジ)が長く飛び出ていて、思いっきり反射要因になっているという見事なオチがつくのでした。

もう自分で加工してしまったので他のアダプターの画像になりますが、本来はこのようにピンが内側のカーブと面一になっていて、欲を言うなら黒色塗装されているのが理想です。ところが、今回のEXAKTA - NEXはここがあからさまに飛び出ていて、反射防止塗装を台無しにしているというわけのわからなさです。本当にこれ、ピン(ネジ)の長さだけの問題なので、たったこれだけのことに意識が向かないのが中華流という……。

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話は本題へと移ります。

「マウントアダプターに対する理想の内面反射対策とはどういうものか?」


まず、一般的な低価格アダプターの問題はマウント最後部、赤矢印の反射防止の甘さです。これ、この部分に光が当たっていない状態では描写に影響しないのですが、斜めから強い光が入ってフチが明るくなるとかなりの確率でシャドー浮きや指向性フレアが発生します。
一眼レフのアダプタ遊びでは、後玉周辺に完璧な反射防止がなくても描写にはさして影響がないことが確認されていますが、ミラーレスの場合、ミラーボックスの側壁に当たるのがこの部分なので無視することができません。

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逆に青矢印の奥まった腹部分、ここは光が直接当たらないのでユーザーが反射防止対策をしたとしても効果はさっぱり分かりません。135判レンズの場合、後玉はそれほど大きくなく、光線が筒の腹まで射出されないからです。


Rollei Planar 50mm f1.4 HFT + Rollei QBM - NEX
こんな感じで奥まった側壁はほぼ無関係なのがよく分かります。レンズのバヨネットが隠れているのは、M42に準じたQBMのピン押し構造のため。
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次に気になるのは、近年の電子接点付アダプターによく見られるフレアカッターです。これはどういうものかというと、そもそも内面反射の要因となる不要な光線は後玉付近で先に切っておけばいいという考えで、昔からEOSがこれを極端な形で実行しています。CONTAX RTS IIIから5Dに移った時、ミラーボックスの開口部がこんなに狭くてケラレないのかな?と不思議に思ったものですが、ボケが欠ける様子などはなかったのであれで十分だったのでしょう。(超大口径のEF50mm f1.0 Lなどは例外で、フィルム時代から丸ボケがミラーボックスで切られて長方形になってしまうことが確認されています。)

※条件が揃うと普通のf1.4クラスでもボケは蹴られるようです。
補足記事:http://sstylery.blog.jp/archives/70687022.html

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http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1017396.html



このように、一眼レフのレンズをミラーレスに転用するなら、マウントアダプターはミラーボックスの空間と同じであるという解釈で先陣を切ったのがSONY純正のα - NEXです。これはSONY(Minolta) αマウントをEマウントに変換する物でカメラ/レンズともに純正の組み合わせのため、お手本となるべき物です。
NEX時代の物がLA-EA1、α7になって登場したのがLA-EA3、さらに半透過ミラーを内蔵し一眼レフと同じ位相差AFの仕組みを持つLA-EA2、LA-EA4があります。
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https://sony-paa-pa-en-web--paa.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/86689/~/can-i-use-the-mount-adaptor-(la-ea1)-with-this-camera%3F



アダプタメーカーでミラーボックス相当の内部形状を印象付けたのは高品質路線のMetabonesで、この円形のへこみは相当にインパクト大です。最初は後玉に対する念入りな逃げを作っているのかと思いましたが、メーカーの説明によるとティルト/シフトレンズに余裕をもって対応するための斜め光路の確保らしいです。
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こちらは低価格のCommlite。ルール無用の中華では、いかにコストダウンしつつ見た目を同じにするか?という価格競争が各社で行われています。手間の掛かる反射防止処理はMetabonesのIV T型に倣った植毛紙貼り付けから溝切りもどき、何の処理もないつるつるまで様々な方式を見ることができ、筒の素材を金属からプラスチックに変えてしまった製品まであるそうです。

※このBeforeはマウント後部がやたら狭いのでAPS用ですね。
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近年、質の良いアダプターを求める層の決定版となったのがSIGMAのMOUNT CONVERTER MC-11です。細やかな日本人が反射防止に気を配るとこうなるという一例で、各部の作り込みもさることながら、ほとんど意味のない開口部最前面に溝切りのような段差を付けている念の入れよう。これは正真正銘のJapan qualityで装着感も最高とのことです。
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最後に登場するのは、写真大好き下町工場RAYQUALです。ここは間違いなく製作者の方がCONTAXマニアで、CONTAX用アダプターは研究に研究が重ねられています。反射防止対策は理屈の上では理想的に思われますが、果たして。

このカットモデルはCY - SαEで、RAYQUALにEF - SαE(NEX)はありません。
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http://www.rayqual.com/Sony_E.html


この製品、内側がスカスカの板だけなのはなぜかというと、一眼レフのミラーボックスのように側壁があるとそこがまた反射要因となり、(描写にほぼ影響はないにしろ)内部が明るくなってしまうからです。それを防ぐためにフレアカッターで光を切りつつ内部を奥へ引っ込ませること、これがRAYQUALの考えです。

反射防止に一番効くのは遮光環(バッフル)で光を切ることだ、というのが常識らしいのが天体望遠鏡の分野で、これは大径のレンズを細長い筒が繋いでいる=鏡筒そのものが長大な反射要因である屈折式天体望遠鏡の構造を考えれば非常に納得できます。

超入門 望遠鏡光学(19) 遮光環について(1)
http://star-party.jp/owner/?p=1294

この遮光環を何段も重ねていくと蛇腹に相当する構造になり、さらにそれをミニマム化したのが写真機材のあちこちで使われている細かい溝切り加工となるのですね。

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話が長くなってきましたね……。
ここらで一服してください。 ( ´・ω・)⊃旦



さて、ここからがようやく実のある話で、長々と語ってきた反射防止処理の効果を実写テストで確認してみます。ただし、同じアダプターを条件違いで一斉にテストできるほど数を持っていないので、その都度、簡易的に加工したり元に戻したりして撮影しています。よって、条件一致は心がけていますが、アダプターの状態を画像でいちいち記録していません。
ここで行った反射防止処理のありなしは以下の画像を一例として参考にしてください。


・自作のフレアカッターと艶消し塗装あり。手前側に見えている小さい四角はフレアカッターを仮固定しているパーマセルテープの一部です。Eマウントアダプターは必ず後方で絞られているので、その段差に紙の枠を貼り付けています。
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・パーマセルテープ。これだけで元のつやつや状態からかなりマシになります。
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・購入時の艶あり塗装。光が当たっていない箇所は黒々としていて、柔らかい環境光ではほぼ問題ない理由がよく分かります。
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・パーマセルと艶あり塗装との直接比較。パーマセルの惜しいところは溝切り効果がなくなってしまうこと。
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・植毛紙と艶あり塗装との直接比較。植毛紙のデメリットはホコリがくっつき易いことと、0.5mm程度厚みがありEマウントを微妙に狭くしてしまうことです。
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で、本題。
これらの効果の差を実写で確認しようとしましたが、なかなか良いセッティングが見つかりませんでした。部屋の明かりに向けてレンズを着けたアダプターの後部を観察すれば一発ですが、それを同条件で画像に残すのは非常に難しいです。というわけで、差を明確にするためにかなり極端なセッティングになってしまったのはご了承。この結果ほどに実写はシビアではないことを頭の隅に留めておいてください。


※今回のセッティング図。ここから少し寄って光源をぎりぎり切った青枠が実際のフレーミングです。テストに使ったレンズはS-Planar 100mm f4、マニュアル撮影でアダプターの状態だけを変えています。
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左: フレアカッター+植毛紙             右: フレアカッター+艶消し塗装
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左: 植毛紙                     右: パーマセル
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左: 艶あり塗装(未加工)
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植毛紙はやはり反射防止が強力でフレアカッターと同等の効果、パーマセルは扱いが簡単な割にはなかなか良いといったところ。当たり前ですが、艶あり塗装は厳しい条件では論外。
このテストに艶消し塗料の後塗りがないのは以前試して扱いが難しかったのと、下地処理のない金属塗装の耐久性に疑問があるからです。

反射の少なさは光を切るフレアカッターを別枠とすると、植毛紙溝切り+艶消し塗装パーマセル溝切り+艶あり塗装となります。


植毛紙は天体望遠鏡の分野では一般的なので、そちら方面でもっと安く買えるかもしれません。Eマウントで使う場合は事前に厚みを確認した方がいいかも。


パーマセルは単価が高いですが、薄い上に巻き数が多いので趣味で使う限りは何年も持ちます。艶消しで重ね貼りしてもしっかり個着するので、カメラ関係の工作によく使っています。




最後に、ごちゃごちゃ書きまくったので初心者さんはどーすりゃいーの?と迷うかもしれませんので、Eマウントアダプターの反射防止についてまとめておきます。

・後部が溝切り+艶消し塗装のアダプターなら何もしなくてよい。(※低価格アダプタでは超少数派)
・後部がつやつやしていたら何か処理する。
・パーマセルは完璧ではないが必要十分。テープなので一定の幅に切るのが難しい。
・植毛紙は効果抜群だがホコリが付きやすく、手入れが面倒。
・フレアカッターが作れる方はお好きにどうぞ。光を切るだけではなく、電子接点を隠す意味合いもあります。(※ただし、ボケの光束を切らないために、開口部をある程度広めに作る必要あり)



【※追記 重要】
なんの偶然か、この記事を掲載した直後にK&F Conceptから反射防止塗装のある新型Eマウントアダプターの発表がありました。AMAZONの在庫も順次切り替わると思いますが、ここで注意したいのは市場には旧在庫が溢れていることで、商品説明で新型の旨が明記されない限りはそれを期待して買ってはいけません。(もちろん、価格差のためにあえて旧型を買い、自分で反射防止処理をするのはありです。)
幸い、リアマウントが銀色(真鍮のネジ止め)に変わったので、正しい商品写真であれば簡単に区別はつきます。

今後、中華アダプター界で予想されることは、K&F Conceptが作った流れに追従して低価格帯でも反射防止塗装ありの製品が一般化し、数年の間、半端なコピー品も含め新旧ごちゃまぜの状態が続くのではないかと思われます。


この中の幾つかは新型に切り替わったようです。販売元は焦点工房を選べば確実かと。




【ご注意】
マウントアダプターのミラーボックス相当の形状について、やや認識違いがあったようで、これが補足記事になります。
Bokeh使いはご用心 マウントアダプターのボケのケラレ
http://sstylery.blog.jp/archives/70687022.html