着けるか着けないかで論争が起きるほどの保護フィルターの功罪ですが、当ブログの比較を見る限り、シャドーの締まり、光源まわりのフレアなど画質の分かれ目はフィルターあり/なしだけが問題であり、仮にフィルターの性能差があるとしても、それを実感できるのは古いマルチコーティングやシングルコーティングでない限り、かなり極端な状況であると言えます。
しかし、それだけの厳しい状況なら、今度はレンズ本体の状態が確実に描写に影響してきますので(※なにか抜けが悪いなあと思ったら後玉の清掃を)、保護フィルターにどこまでお金を掛けるのか?はなかなかに難しい判断でもあります。

ここで、保護フィルターについて自分なりの総論をまとめておきましょう。



・反射防止性能に直撃するのは保護フィルターあり/なしだけで、厳しい状況下で表れるフィルターの性能差はごくわずか。
・さらに、柔らかな光ではフィルターは着けても外しても同じ。
・フィルターの拭きが甘いと反射防止性能が明確に落ちる。
・この性能低下は恐ろしいことに、高級フィルターを普及価格帯と同等以下にしてしまう場合がある。
・よって実用的観点から反射防止に寄与するのは、防汚性能>コーティングの透過率とも言える。

・フィルター装着時の画質低下はレンズの画角、ガラスの構成枚数、現場の状況によって変化するので一律には語れない。(画角が広くレンズ枚数の多い超広角は保護フィルターとの相性が悪く、高級フィルターもさほど効果が望めない場合もある)
・撮像素子 - 後玉間の再反射によるゴーストはフィルター装着とは無関係。センサーガラスにダストコーティングのある最近の機種(α7など)はこの弊害が大きい感触あり。

・横着した体勢でフィルターの着け外しをすると、手が滑ってクルッと前玉を擦る可能性が高いのでやめよう。


厳密なテストを繰り返すことで認識できた防汚コーティングの利点ですが、ユーザーにとって最大の恩恵は高級フィルターにありがちな表面の拭き難さを大幅に改善し、常にフィルターを理想的な状態に維持できることです。フィルターを部屋の明かりに透かして十分にクリアでも、暗い場所で後ろから強いライトを当ててみるとガラスの状態は思ったほど綺麗でなく、そういった不完全なコンディションは厳しい逆光で明確な差を生みます。つまり、保護フィルターの品質差を感じた時は、まずガラス表面の状態を確認せよ、というのが自分の中の教訓です。

防汚コーティングの利点は単なる拭き易さだけではなく、フィルターを理想的な状態に保ち反射防止性能を低下させないことにある。

となると、防汚コーティングは必須!となるはずですが、これはなかなかに難しい問題でもあるのです。
ケンコーのZeta Quintはこの特殊コーティングをレンズ間反射を防ぐために裏面には施していないと説明しており、本質的にこの類のコーティングは反射防止性能にはプラスではないのかもしれません。マルミのDHGスーパーは低価格ながら防汚コーティングを装備していますが、当Blogのテストでは見た目にもかなり反射が多く、実写比較では反射率0.3%というスペックを疑うほどに結果はイマイチでした。これが個体差ではなく製品の特長とするなら、DHGスーパーは低価格かつ初期の頃から防汚コーティングを売りにしているので、防汚性能を明確にした分、反射防止性能が犠牲になっているのかもしれません。

また、レンズを水の飛沫に接近させる特殊な撮影で、PRO1D Lotusの表面を数えきれないほど拭いていたら逆光時のガラス表面の抜けが悪くなってしまったので、特殊コーティング含む性能重視の保護フィルターは以前の単純なマルチコーティングのように高耐久ではなくなっている=乱暴な扱いはできないと考えた方が妥当でしょう。
ニコンの最高級フィルターであるARCRESTは値段も飛び抜けていますが、2017年現在、具体的な数字で防汚コートの耐久性を謳ったものはこれだけで、まさにプロ仕様と言えます。

ARCREST
http://www.nikon-image.com/sp/arcrest/

優れた撥水・撥油コートを採用 
試験荷重200gで1000回以上の拭き取りテスト※に合格した高い耐久性も備えています。


このように、性能を追求するようになってきた保護フィルターは、様々な要因が絡み合うためにカタログスペックだけでは語れない側面があるのですが、最近の隠れた動きがガラスへの拘りです。これは実際に当blogでも、“光学性能を追求しカメラのレンズなどに使われるグレードの光学ガラスを採用”とされたULTIMAが同スペックのZeta、EXUSよりもわずかに頭抜けていたという事実も確認しています。他社も後にこれを意識したのか、ケンコーの最新型ZX(ゼクロス)にも似たような文面が追加されていますし、ニコンのARCRESTでは、“NIKKORレンズにも採用している高品質な光学ガラスを採用”、さらにガラスの反射率に影響する化学強化をあえてしなかったとインタビューで答えています。

ZX プロテクター
http://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/filter/protect/4961607252321.html

■高透過率光学ガラス
透明度の高いガラスを使用。高純度の原料を溶解してつくられており、可視域から赤外域に至る広い波長域で高い透過率を持っています。


ARCREST
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/item/1066770.html

ARCRESTのガラス強度は一般的な保護フィルターとさほど変わりません。ガラスに強度を持たせるには、表面部分の元素をナトリウムからカリウムに置き換えて化学強化するのですが、それを施すと片面0.1%という低反射率を実現できませんでした。

ちなみに、この件についてマルミはさほど重要視していず、以下のような回答もしていますので、実際のところ光学ガラスは白色ガラスとは違って特性の保証があるためにより入念なマルチコートが施せるということなのかもしれません。

想像以上の手仕事ぶり。マルミのフィルターができるまで
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/1088916.html

マルミはハイグレードなEXUSやSOLIDにも光学ガラスを使っていないという点が気になったが、透過率測定の機材とデータを見せてもらって認識が改まった。

光学ガラス(BK7)もEXUSに使われているガラス(B270)も、マルミでコーティングした後はほとんど透過率に差が出ていなかった。厳密に見ると光学ガラスのほうが脈理(内部の不均質)が少ないなどの強みはあるが、コストまで考えるとB270がとてもよい選択なのだという。


では、ここまで色々とめんどうな事柄を熟読していただいた皆さんは、「じゃあ結局、どれを買えばいいんじゃ~!」と困惑するかと思います。そこで様々な実験を繰り返した自分が簡潔にお答えしましょう。


厳しい環境で撮影しないごく一般の方は、あんまり難しく考えずにお財布と相談して好きなのを買ってください。


ただし、暴風砂塵、雨中の撮影、逆光が自分のメインフィールドである、という方はフィルター選択に熟考が必要ですし、拘りのためにそれ相応の出費が必要かもしれません。

コーティング性能+光学ガラスの質+防汚コーティングによる清掃の容易さ

フィルターの反射防止に関する事柄で見えてきたのがこの三要素であり、それがどれほどの差か?というのは過去のテストが示した通りです。フィルター選びのポイントは、まず第一に荒れた環境から前玉を守るという物理的な側面を前提にした上で、自分の撮影領域が逆光、夜景などの厳しい状況を含むか? またはその状況で画質低下を受け入れてでもレンズ保護をしたいか?という観点になるかと思います。

そして、撮影を頻繁にする方にはやはり防汚コーティングによるフィルターの綺麗さの維持=透明度を落とさない努力が容易になることが非常に大きいでしょう。 




【フィルター選択チャート】

逆光、夜景、強い照明のある屋内などがメインの撮影である
    ↓     ↘    
・画質重視   ・画質を妥協 →
(B)保護フィルター上/中位クラス
   
 ↓
(A)フィルターなし、または
防汚性能のある保護フィルター上位クラス 



逆光、夜景、強い照明のある屋内などがメインの撮影でない
    ↓          ↘    
・頻繁に写真を撮る   ・たまに写真を撮る →
(D)保護フィルター中/下位クラス
    

(C)
防汚性能のある保護フィルター上/中位クラス 



とにかく安さ重視
    ↓
(E)
保護フィルター最下位クラス


※最近の新製品についての補足

【ARCREST】 透過率は現時点の最高性能で、デジカメWatchの記事では他との明確な差を記録。
【EXUS SOLID】 鉄球の衝突に耐える高強度ガラスを採用。
【ULTIMA WR】 AMAZON限定でULTIMA(無印)に防汚コーティングを付加したもの。


※個体差かもしれないが、個人的体験から非推奨

【Zeta(無印)】 かなり拭き難く、厳密な透明度の維持が困難。
【DHGスーパー】 目視で分かるほどに反射が多く、比較結果は古いCONTAX L39(UV)以下。


[Aグループ]
ARCREST EXUS SOLID
ZX Zeta Quint EXUS ULTIMA WR(すべて防汚コーティングあり)






[Bグループ]
Zeta ULTIMA(防汚コーティングなし)
PRO1D Lotus DHGスーパー XC-PRO(防汚コーティングあり)






[Cグループ]
ARCREST EXUS SOLID
ZX Zeta Quint EXUS ULTIMA WR
PRO1D Lotus DHGスーパー XC-PRO(すべて防汚コーティングあり)








[Dグループ]
PRO1D Lotus DHGスーパー XC-PRO(防汚コーティングあり)
PRO1D DHG(防汚コーティングなし)






[Eグループ]
MC NEO MC-NORMAL(防汚コーティングなし)






んで。
世間の一般論はともかく、
メーカー修理もできず数限りあるCONTAX(オールド)レンズでノンフィルターは怖いが、味のあるレンズ/高性能レンズこそ純粋に描写を楽しみたいというジレンマを抱えるユーザーはどうすればいいのか?という疑問について考えてみます。



そこで本音の本音はこれ。


どうせノンフィルターでも画質低下はあるので開き直れる。
いちいち前玉の清掃で気を遣いたくないし、特に大口径のPlanar 85mm f1.4なんかめんどくさい。
うちは沿岸地域なのでノンフィルターだと清掃で死ぬ。


つまり何が言いたいのかというと、CONTAXをノンフィルターで使っていくには様々な面でリスクもあるし手間も掛かる、その上、現代の保護フィルターなら画質低下は大差でもないし、厳しい撮影環境ではフィルターをがんがん拭くことによって画質低下を最小限に留められる側面もあるので、保護フィルター常用は非常に妥当である。

ただし、だからと言って後玉の清掃は避けられないので自分なりに清掃のコツを身に着ける必要はありますし、穏やかな天気の街中スナップや、室内ポートレートではフード着用だけで十分という考えもあるでしょう。もちろん、レンズは使いつぶすための道具であるという考えの人も。


じゃあ分かった、フィルター常用は正しいとして、いったいどのグレードを着ければいいのか?という疑問にははっきりお答えしましょう。しょせん、人は気分に左右される生き物であると。
要するにフィルターの性能差を誤差の範囲として気にしないのならそれでよし、逆に細かい値段差で悩むくらいなら最初から良いものを選んだ方が清々としますし、カタログスペックの高いフィルターを質感最高のCONTAXと組み合わせてニコニコしているのも正義です。

……しかし、高額なフィルターを何枚も買うとレンズ一本買えるぐらいの値段になってしまいますし、それらの費用対効果も当ブログで示したとおり、だから高いフィルターを安く買う=まず最初にAMAZONやオークションなどの中古美品を探してみるのが自分の流儀です。(まあ、中古を選ぶ時点で妥協していると言うこともできるわけですが)


というわけで、何だかんだ冷静なスタンスを取りながらもお気に入りのレンズには(中古で)できるだけ良いものを買っているのがあほコンタックスまにあの本音となります。もちろん、自分の活動範囲がもろに潮風を浴びる地域であることが以上の最大の論拠ですが、沿岸地域でない方にはノンフィルターで海岸に出ると前玉がベタベタになって清掃で酷い目に遭うよ、と一言忠告しておきましょう。

あくまでケース・バイ・ケースなのは否定できませんが、CONTAXやオールドレンズなどではフィルター常用の方がメリットが多く、トータルで撮影もはかどる、というのが個人的な見解です。

そんなこんなで、保護フィルターに関しての話題は終了。