比較撮影ではなく実際にちゃんと使ってみると、かなり驚きのレンズでした。まずはサンプル画像をご覧あれ。

RAW現像の前置きとしては、軟調かつ環境光によってかなり表情の変わるレンズなので無暗にコントラストを上げないよう気を付けながら、レンズの味が素直に出るように調整しています。

注記なければ絞り開放
Photoshop Camera RAWの現像設定はCamera Standardから微調整


コントラストは触らず、WB調整のみ。
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何でもない絵ですが、手前から奥の空に向かって非常に繊細なグラデーションを描いているように思います。
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フラット光になると途端に濃い色を出します。とても同じレンズとは思えないコク。
これも明るさ補正のみ。
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光によってクラシカルな一面を覗かせます。特にRAW現像の演出なし。
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絞りf2.8
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こういうシチュエーションはとても繊細。
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絞りf4
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絞りf4
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絞りf4
開放から二段絞れば途端にしゃきっとしますが、それでも軟調の面影は消えず。
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絞りf4
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コントラスト強調なし、Blueだけ作画意図で強調。
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逆光はヘナヘナなので現像でリカバー。
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絞りf2.8
特別な現像操作がないのに、これだけ違った表情を描きます。
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球面収差の過剰補正型特有の丸ボケ。
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絞りf2.8
穏やかな雰囲気ながら色は強く、丸みが見事。
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絞りf2.8
遠景なのに目立つ歪曲。
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awesome!!

……みたいな外国被れは置いといて、このレンズ、NOKTON 58mm、Planar 50mmには無い繊細さがとても素晴らしいです。描写の仕組みとしては、コーティング性能が低いので強い光が差し込む場面では明るい部分が浮くことでより豊かな諧調再現となり、平坦な光の下では厚みのある明快な色を出す。しかし本質的には軟調なので、絞り込んでコントラストが上がった時でもくっきりパキパキにはならず、どこか穏やかな雰囲気を漂わせている。

前回の比較テストではただ気難しそうなレンズという感想に終わりましたが、この一定しない描写に合わせてきちんと現像すると見事に化けます。といっても、ごちゃごちゃ複雑な現像をするのではなく、まずWB調整で黄色味を抜き、元画像に示されている諧調を注意深く観察しながら明るさ、コントラストの微調整をするだけです。
今回、いつものようにざーっと眺めて、コントラストが低いからそこをまずカバーして……なんてやっていた時にはこの味はよく分かりませんでしたが、きちんと素の写りを生かす方向で画像を見つめ直すとこれは相当に良い描写だなと感心しました。

こういった光によってコントラストが変化する性質はPlanar 50mm f1.4 AEJも持っていますが、RE.Auto-Topcor 58mm f1.4ほど露骨ではありません。両者の違いを例えて言うなら、T*コーティングによってどこまでも画質の破綻がないように踏ん張り、あるところから構造上の弱点として急激に(逆光でフレアを発生させるなど)画質が壊れるPlanar、方やコーティング性能の不足と見られるレンズ間反射によって穏やかに早めに画質が破綻していくことで自然な雰囲気が形作られるRE.Auto-Topcor。
引用元が見つからない未確認情報としては、RE.Auto-Topcor 58mm f1.4はコーティングのないガラス面があるそうで、もしそうならこの光に対する敏感さも納得ができます。数少ない自分のクラシックレンズの使用遍歴を辿ってみても、ノンコーティング、あるいはコーティング面の少ないレンズは強い光に弱い傾向がありますが、このレンズの場合は反射防止の適度なさじ加減に発色の良さが組み合わさることが重要なポイントに思えます。そして、それが設計者の狙い通りなら、まさに東京光学恐るべし。(とはいっても黄色みは放置されたわけですが……)


ただ、こうやって書き連ねるとさも物凄い描写に思えてしまいますが、実際には撮影した本人が現像操作の中でこそ味わえるわずかな違いなのは他のレンズの個性と変わりません。その辺り、自分にはこの危うい写りが好みに合いましたが、どうでもいい道端写真しか見れない閲覧者の皆さまの目にどう映るのかはなんとも言えません。

たぶん、最新のソニーセンサーなら濃厚な諧調と繊細な画質低下が混じり合って、さらに印象的な絵になるんじゃないかと期待させますが……。

Planar 50mm f1.4再考 #12
http://sstylery.blog.jp/archives/67565814.html