前回に引き続き、東京光学のRE.Auto-Topcor 58mm f1.4の描写を明らかにするのが目的です。

このレンズはコシナが復刻版のネタ元にするくらい評価の高いレンズらしいのですが、個人的にはあまりその声を聞いたことがなくネット上にも具体的な言及はほとんど見つかりません。もしかしたら、撤退したトプコンの希少性も絡んでいるのかもしれませんが、とにかくいつもの比較をしてみましょう。

比較対象となる復刻版TOPCOR=NOKTON 58mm f1.4 SLIIの特徴は、マルチコーティングで発色がよくやや青みがあり、絞り開放は独特の軟調で目立つ色収差、絞れば高解像でPlanar 50mmと同等のコントラスト、歪曲はさほど目立たず逆光性能は高いといったところ。一言でまとめると使い易くリファインされた現代のオールドレンズで、この手の描写比較の基準にしてもいいくらいです。


注記なければ絞り開放 マニュアル撮影で設定固定、WBは5200k付近
Photoshop Camera RAWの現像設定はCamera Standard(DPPのスタンダード相当)
※f4の画像は絞り羽の形状/状態差で露出がばらつくので絞り優先AE、さらにRAW現像で明るさを揃えています。


最初の画像がRE.Auto-Topcor 58mm f1.4(東京光学)、後の画像がNOKTON 58mm f1.4 SLIIですべて共通。

絞りf4
コーティング性能が低いからか光に敏感で、絞り込んでもNOKTONと諧調は揃いません。
2076


2077


2072


2073


このように被写体が強い光を受けるとRE.Auto-Topcorは諧調が浮きます。
2078


2079


2080


2081


2084


2085


コーティング性能の関わる内面反射により逆光性能は低めです。鏡胴に反射要因はありますがそれ以前の問題。
2086


2087


絞りf4
2094


2095


2102


2103


2100


2101


2098


2099


柔らかい光だと諧調が落ち着き、黄色味の中に強い発色が垣間見えるようになります。
2088


2089


ボケは典型的な過剰補正タイプで輪郭線強め。
2082


2083


絞りf4
2092


2093


歪曲は数値上でも多く、Planar 50mm以上かもしれません。
2110


2111


2108


ボケの輪郭などに見える色収差だけはNOKTON 58mmの劣るところ。
2109



各レンズの元画像(立ち位置は共通)
2112


RE.Auto-Topcor 58mm f1.4(東京光学) 絞りf1.4 一部切り出し
かなり暗い時間帯ですが、弱い光が差し込んでいる背景の木々が明るく写っています。
2113


NOKTON 58mm f1.4 SLII 絞りf1.4
2114



ん~~まず身も蓋もないことを言うと、同時代の他の58mmを知らないので名レンズかどうかは判定不能!(゚∀゚)

とりあえずこのレンズを一眼レフで覗くと真っ黄色で、じゃあ実際の画像も真っ黄っ黄かというと、そこはガラスの黄変ではないので普通に使える程度です。むしろ諧調が曲者で、おそらくはコーティング性能の低さ由来の一定しない写りで逆光に弱く、逆光でなくとも画面内に強い光を受けている部分が明るく浮きます。
これだけならPlanar 50mm f1.4 AEJの反射防止の甘さのように、より豊かな諧調を描き出すポジティブな要素とも捉えられますが、絞り開放は元々の描写が軟調かつ球面収差の過剰補正によるハロが加わり、逆光では明確な滲みになるなど、画質変化の多い複雑な描写特性となります。一言でいえば完全にクラシックレンズですね、これ。

そのハロのおかげか絞り開放のピントピークはいまひとつコントラストが立たずにファインダーでのピント合わせは苦行、被写体が高コントラストになる状況でやっとこさピントが見易くなる始末。しかも、そんな状況なのに周辺部で画質低下があるから被写体を端寄りに配置する実際の撮影時にはさらにピントが見え辛くなり、合焦に自信がないので液晶ですぐに確認してもハロで滲んでいてピントが合ってるんだかそうでないのかよく分からないという……。(ただし当たり前ですが、本当のガリピンが来ると細い線で合焦面が繊細にきちんと描写されます。)

なんかこういう状況を体感すると、Planar 50mmの初期玉神話の検証結果に強力な実感が沸くのです。ファインダーのピント合わせに必要なのはきちんとピントピークが立ち上がるコントラストの強さである。RE.Auto-Topcor 58mm f1.4はピントピークが見え難いしハロは邪魔するわで、かつてないほどの撮影の大変さでした。

これがまあ個体差かもしれないということは否定できないのですが、大まかな印象はこちらの記事と同じですね。つまり、強い日差しの下では低コントラストになり、柔らかい日差しではそれなりのコントラストが出る。

「帝国光学研究所」について9 
日本の最高傑作と言われたレンズ
http://www.photo-china.net/column/topcon.html

上記のやっかいな描写特性は絞り込むことで改善し、冒頭の画像のようにしっかりとコントラストは上がってNOKTON 58mmに近づきます。ただし、中間部に厚みを感じるのは絞り開放と共通でカラー時代のレンズとしては比較的個性の強い物に思われます。(オールドレンズマニアではないので絶対的な位置づけは不明です。)
このレンズに名声があるとしたらそれはフィルム時代のものでしょうから、これを90年代のポジ、ネガプリントに照らし合わせると、強い光で軟調化、柔らかな光で厚みのある高コントラストというのはメリハリの強いフィルムと相性が良さそうです。全体的な黄色被りはクールな国産フィルムでは人物撮影などの温かみとなって好印象でしょう。デジタルでWBの操作をすると、発色そのものは濁りのないはっきりとした色が出ているようです。

その辺り、実際にどういった写真が作れるかの道端撮り歩きは次回となります。

Planar 50mm f1.4再考 #11
http://sstylery.blog.jp/archives/65733914.html