前回の比較により、NOKTON 58mm F1.4(復刻版Topcor)はPlanar 50mm F1.4と同じ現代的なレンズであることが判明したので、では、そのオリジナルはどんなもんかいな?ということで、新旧58mm F1.4の比較となります。今回、Planarは出てきませんが、その理由はPlanar - NOKTON - Topcorと関連付ければ描写の差が分かることと、完全に同仕様のレンズが手元にあるなら、素直にそちらを選択したほうが合理的だからです。

それにしても、RE.Auto-Topcor 58mm F1.4は一部で異様に高い評価がありながらも、具体的にその良さが語られることが稀な不思議なレンズで、当Blogで最初にこれを取り上げた数年前はほんとうに謎のレンズでした。おそらく、TOPCONというメーカーそのものがマイナーもマイナーかつ、そのマウントも他に転用が不可能なEXAKTA(改)だったため、実際にこれを使い込んでいる人が少なかったのだと思われます。しかし、ようやく、デジタルのミラーレス時代になってTopcorも簡単に使いまわせるようになったので、いまではだいぶ実用品として普及し、その人気も高まってきた雰囲気があります。

そんなわけで、当時の記事では反射防止性能の低さがTopcorの味わいであると結論付けた自分もフルサイズミラーレスの威力を十二分に活用して、もう一段、深く描写性能を探ってみることにします。


ピントの出方とその前後の描写を見るために、いつもの定規チェック。
ひとつ注意点として、Topcorは実効焦点距離が57mm付近なので、NOKTONと同じ位置から写すとあきらかに広く写ります。画角が広いということはボケ量も小さくなる(ボケが硬く見える)ということなので、この定規撮影ではTopcorを寄り気味にし、被写体の像倍率を合わせていることを頭に入れておいてください。

A: RE.Auto-Topcor 58mm F1.4(東京光学)
11966

B: NOKTON 58mm F1.4 SL IIN
11965


これ、撮影結果を等倍で確認してかなり混乱しました。

というのも、何度やり直しても、AのTopcorのほうがピントがしっかり出ているのです。アサヒカメラの収差図では、Topcorは典型的な過剰補正型なので、ピントの線が細い代わりにハロで滲んで低コントラストになるはずですし、これまで比較した他の過剰補正型もそのような描写特性でした、それなのに、完全補正型のPlanarと同等以上だったNOKTONよりもさらにピントが太い過剰補正型ってなに?(たしかに、やや低コントラストではあるけれど……)

正直、わけが分からなくなったので、とある仮定を立てて少し遠い距離で撮影したのが以下となります。


C: RE.Auto-Topcor 58mm F1.4(東京光学)
11970

D: NOKTON 58mm F1.4 SL IIN
11969


う~む、なんとなく納得できたかも。

最初のAB比較よりも距離を離すと、Cはぼや~と低コントラストになっています。まさにこれが過剰補正型の特長で、要するにつまり、全体的に収差の多いTopcorは寄ることでだいぶ球面収差が変わっているのかもしれません。Aの200線がBよりも太いということで、近距離では球面収差曲線がマイナス側に膨らんでいるのでしょうか?
もうひとつ残念なことが判明したのは、BDのNOKTONはどうやら偏心があるらしく、左半分のハロが右半分よりも大きくなっています。となると、NOKTONのより良い個体はPlanarよりもさらに上を行く可能性があり、58mmというやや長めの焦点距離と新しい硝材は本当に有利なんだなと思います。

話をピント以外に戻すと、ACは色収差が良く補正されていて、これは1960年代のいくつかの標準レンズに共通する傾向です。ボケはACに前ボケのやわらかさがありますが、後ボケの差についてはBDの色収差が強いためよくわかりません。



次はマクベスチャートです。
AはBよりも明確に黄色く、これは当時の高屈折率ガラスの特性でしょう。さらに、Aの写りは全体的に軟調で、反射防止性能の低さにより黒が浮いてしまっています。

A: RE.Auto-Topcor 58mm F1.4(東京光学)(F5.6)
11968

B: NOKTON 58mm F1.4 SL IIN(F5.6)
11967