このレンズはすごく分かり易い良さがありました。さすが人気レンズといったところ。


注記なければ絞り開放f1.4 Planar 50mm f1.4の写真は一枚もありません。
Photoshop Camera RAWの現像設定はスタンダードでほぼ無調整、その他

映画の一場面をイメージして現像。
物凄いフレアー…ってわけではなく、これは前ボケ被りです。
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絞りf4
彩度、コントラストの補正なしで、冬の浅い夕暮れ。
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まずは発色を見ていきましょう。
前回のマクベスチャートで感じたのは、コントラストは標準的かやや高め、個々の色はすっきりとしていて、グレーバランスが青みがかっているのに黄色がスカっと抜けているのが印象的。という個人的な見立てをもとにしつつ……。

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色温度が偏っていても太陽光があればそれに反応して、イエローが強く出るといった感じで日中は華やか(鮮やかな発色だがくっきりとまではいかない諧調の平坦さがある)。陽射しが遮られると、もとの青みに支配されるといった印象。
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たぶん、このレンズの描写の秘密は一見薄味に見えるコントラストの高さと濁りのないブルー寄りの中でイエローが強く発色することだと思います。(※長く使っていないので仮説)
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次は解像ですが、絞り込むとPlanar50mmと同等で、恐らくは開けて柔らかく絞れば高解像という標準レンズのごく一般的な画質だと思います。開放のピント合わせは明らかにPlanarよりこのレンズの方が簡単ですが実際の等倍画像に格別なキレがあるわけではなく、やはり大口径レンズのピント合わせに影響を与えるのは解像力だけではないということを今回のテスト撮影でも実感しました。

絞りf8
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絞りf5.6
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絞りf5.6
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樽歪曲はPlanar 50mmとは雲泥の差で、とにかくフレーミングがし易いです。
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お待ちかねのボケにいきましょう。
このレンズは標準系ですので本質的にボケ像も小さくややざわつく場面もありますが、Planar 50mm f1.4に慣れきっている人間からすると、非常にスムーズとしか言いようがありません。これは58mm f1.4というスペックの余裕なのか、現代の硝材だから性能に不足がないのかはわかりませんが、とにかくピント操作によるアウトフォーカスの変移は自然で苦手な場面がありません。

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光が固くなるとボケがざわつくのはどんなレンズでも同じ。
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唯一の弱点かつ意図的に与えられた特性として、色収差があります。普段、あまり色収差には言及しないのですが、このレンズは発生する頻度がやや高く気にする気にしないの限度を超えて目に入ってきます。
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部分拡大
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丸ボケの輪郭部に色付き。
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近接でぐるぐるボケを狙ったのですが、簡単には発生しません。Planar 50mmでこの絵なら確実に周辺が回り始めているはずです。
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ゴリゴリ現像。
最短撮影距離でやっと回り始めたかなという程度。
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明確に青いシグマのカミソリマクロのように、現像で意図的にイエロー寄りに戻しているわけでもなく無補正の5200kです。非常に感じの良い薄味加減がクラシカルな大口径標準レンズの絵に合っていると思います。
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やや彩度上げ。
この甘ったるい画質は実は不正確なピントのせいで、本来はもう少し手前にピント面を手繰り寄せると中央の傷がしゃきっとします。
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絞りf4
最後に冒頭の画像を発色ブースト。
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もっと使い込まないとこれらの感想は確定できませんが、全体的なまとめとしては色感の良さ、ボケのスムーズさ、歪曲のなさ、絞り開放の暴れなさ、ピントの見易さ、絞り込んだ時の高解像、最新のコーティングによる逆光の強さ、そして何よりも新品が低価格で買えるということで、オールドレンズが欲しいけれどコンディションに気をつかうのは煩わしいし、マニアでもないので気難しいのも困るという方にはまさにうってつけの優等生レンズです。

この優等生っぷりは例えるなら機能優先のプラスチックやスチール家具ではなく、現代の程よい品質で生の風合いを楽しめる木工家具といった具合。当然ながら、1960年代のTopcor 58mm f1.4がこんな風にすべてに渡って印象が良いわけがなく、そこには現在のコーティング性能が大きく関わっているはずです。

デジタル時代はとかく解像解像と騒がれますが、写真の第一印象を決めるのは色とコントラストで、実はレンズの印象の違いはほとんどそこに集約されているのではないかと思うのが最近の自分です。
ZEISSがMTFを重視し、ユーザーがその色彩コントラストを高く評価してきたのは、平面に立体を描くには適切な色と諧調が必要であるというカラーフィルム時代の当然の帰結だったと思います。(それと恐らくは、35mmフィルムで得られる解像力などたかが知れているというZEISSの冷静な見解も)
当Blogに何度か書いているMakro-Planar 60mmよりもS-Planar 60mmの黒マウントが好きというのも、後期型で色彩コントラストの改善があったが故にボケも固く感じるようになってしまったからで、当然ながらNokton 58mm f1.4もこのすっきりした色感がボケのスムーズさを生んでいるはずです。

ここで一端締めておきましょう。
このレンズは現代の色彩コントラストと逆光耐性を持ったオールドレンズスタイルの優等生。

なぜなら、前述のまとめをCONTAX Planar 50mm f1.4と対比させるなら、Planar 50mmは発色は安定しているが時にくどく、ボケは癖があり、歪曲は強く、絞り開放は時に暴れ、ピントは場面によって見づらく、絞り込んだ時は高解像、T*コーティングによる逆光の強さ、そして何よりも中古の癖に安くはないということで、むしろお勧めできない評価になってしまうくらいなので。

……とはいえ、58mmと50mmの焦点距離の差は無視できないですよね。と、最後の最後でふと大事なことを思い出して今回は終了。


次回はこういった感想がどこまで大袈裟で撮影者の多大なる思い込みなのか、現実的な比較をしてみます。

Planar 50mm f1.4再考 #7
http://sstylery.blog.jp/archives/54227153.html