あんまりしょーもない記事ばかり書いてんじゃないよーと知人にお叱りを受け、とうとうピントの見やすいS/N:581の黒刻印をお借りしました。感謝感謝。

人様のものですので外観の画像はありませんが、いつもの定規で比較した結果はなんというか、言葉のイメージというのは恐ろしいなあと感心した次第です。

Planar 50mm F1.4には解像力の高い当たり玉がある
→微妙に間違い


解像力というのが無駄に良いイメージを増幅していると思います。通常、漠然とこのような言葉をもちいると、線が細く文字などをより高精細に写せると思いがちですが、ピント面にフレアがやや少ないというだけでも解像力は高くなるといえるはずです。つまり、収差が少ないわけですから。

だとすると、素直に考えて故障品でもない限りは同一銘柄のレンズで観察できるピントの見やすさの差は微細なフレアやコントラスト、微妙なボケ方の違いなどが原因で、冒頭で述べたような一般的なイメージでの解像力の高さ――分解能が明確に違うなんてことはありえないと思います。もし、それがあるとしたら途中で設計が変わったか。

ということで、AEJ初期型2本、MMJ1本を比較した結論は確かにピントの見やすい固体はあるようだけど、世間で騒がれるほどの差ではなくほぼ同一描写、しかも今回お借りした黒刻印にしてもPlanarの設計上の特性があり、単純にピントピークの見やすさで比べたらRollei Planar 50mm F1.4 HFT(Carl Zeiss)の方が上だといえます。


以下、呼び方が面倒なので581番台 AEJ黒刻印をA、通常の581番台 AEJをBとして、主題となる固体をAとするのはいつもと同じ。

撮影は同条件で設定固定。差を認識しやすくするために、コントラストを上げていることに注意。

A 
250

B 
251


Aはピントの中心が微妙に濃く、前ボケの硬さも若干やわらいでいます。ぜひともこの2枚の大きい画像をクリックして、タブ切り替えで比較してみてください。この差を世間の噂と照らしあわせてどう評価しますか? 


続いて、MMJとの比較。ここからは581番台 AEJ黒刻印がA、79番台 MMJがBとなります。

新たに撮影をやり直しているので、先のテスト画像とは別に見てください。AとBは赤の200線よりもやや前ピンに見えますが、ピント位置自体は同一のものを選んであります。

A
252

B
253


実際の使用感としては、確かにAはピントが見やすくスッと追い込める感触があります。ただし、もともとの描写特性は変わらないので油断するとピンボケをやらかすリスクもそれほど変わらないように思います。この辺は他人の所有物ということで経験値不足。

以下、追試として適当チャートを撮ってみました。色が薄いのはマット紙用のインク切り替えでクリーニングが入るのが嫌だったからです(怨)。並びは上と同じく581番台 AEJ黒刻印がA、79番台 MMJがBです。

A
525

B
526


このテストで興味深かったのは、ファインダーでピントが掴みやすいのはAですが、ばらしピントでよりくっきりとしたピントが出やすいのがBなんです。AはB同等のピントを出すのに何セットも繰り返してやっと同等の描写が得られましたが、それでも微妙な差があり、無圧縮画像をきちんと見比べるとBの方が微妙に細い線を分離しているようにも見えます。

このことから分かるのは、ある領域まではピントの合わせやすい固体があったとしても、等倍の精度はまた別の話ということですね。通常の立体物は光のにじみや反射の様子を手がかりにできるので、平面のチャートほどにはシビアではありませんが……。


というわけで、上記を踏まえるとだいたいこんな感じ。

  • 計測的な画像を等倍近くで観察すれば、ピント付近の描写にわずかな差が見える。
  • ピントの見やすさの差は結像面の描写そのものよりも、そこへ至るコントラストの立ち方やボケ方が重要かも。
  • しかし、野外の実写では区別がつかない。
  • 光学ファインダーでピントの見やすい個体は確かにあるが、等倍の精度に関わるようなものではない。