マウントアダプターに関するさまざまな問題は、はっきりいって“ミラーレスを使ってください”ですべて解決するんですが、現状、フルサイズがα7シリーズだけではなかなかそうもいかないのが現実です。正直、一眼レフのレンズをミラーレスに転用するのなら、小型化なんて無視してがっしりした操作性重視のボディが欲しいところ。


で。CONTAXレンズをEOSで使う際の問題点は…

  1. レンズの無限遠でのばらつき(経年劣化こみ)
  2. アダプタの厚みのばらつき
  3. EOS本体の製造公差

と書くだけでうんざりしますが、特に3に当たってしまった自分はマウントアダプターの選択肢にずっと不自由しています。

まず1ですが、無限遠の届き方がAE/MM、あるいは単純な個体差で違う場合があります。これはマウントアダプターの厚みが正確なほど影響を受ける問題で、中国製品によくあるオーバーインフ設定ではレンズ側のプラスマイナスを吸収できますが、精度がきちんと出ているものでは逆にレンズ側の個体差がそのままあらわれ、無限遠が出ないという事態も起こり得ます。

次に2は、アダプタメーカーがどこまでフランジバックの正確さを守るか、守らないかで中国製品は基本的にオーバーインフ傾向で扱いやすいのは確かですが、その度合い(品質)は一定が保障されません。同じメーカーでもロットごとにばらつきがあったりと、いくつか買ってそれぞれの相性を見てみないとなんともいえない部分があり、これは中国製のアダプター特有の問題となります。

そして、すべてを決定づけてしまうのが3のEOS本体の製造公差で、これにより無限遠の届き方やミラー衝突の可能性などが一定せず、個体によっては通常問題ないと言われているレンズでもミラーが当たってしまう現象なども発生しているようです。


まとめとして、CONTAX + EOSできちんと遠景撮影まで楽しむには手間暇かけて現物合わせでマッチングを確かめていく必要があるということです。自分はEOSのミラーを多めに削ってオーバーインフのアダプターを常用していますが、ここまでしてようやくストレスフリーで多くのレンズを楽しめるのがC/Y - EOSのアダプター撮影となります。ただ、フルサイズでミラー衝突が起こる多くは広角系ですし、人によっては無限遠が出なくても問題ない(絞り込めば実用上OK)など、使う側に妥協があればそんなに難題ばかりでもないことも付け加えておきます。

【注意】
旧来のユーザーには常識になっているので書き忘れていましたが、CONTAXレンズとEOSのフルサイズ/APS-Hはミラーボックスのフチに連動ピンやガードが当たります。一番詳しく解説されているのはRAYQUALさんのサイトですが、EOSにC/Yアダプターを使う場合、最初にマウントを無理矢理、ガリっと入れ込む=干渉する部位を削ることが通過儀礼となります。

つまり、APS-C以外のEOSではボディを傷つけないとCONTAXレンズは使用できないということになるのですが、なぜ初期の5Dユーザーがそういったことを平気でしたかというと、当時はそれ以外にCONTAXレンズを生かす方法がなかったからです。


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以下がマウントアダプターの概念図ですが、ABのバヨネット(爪)の噛み合わせには遊びとなる空間があり伸縮する板バネによって支えられています。なぜかというと、ここに遊びがないとマウントの着け外しがスムーズにいかなくなってしまいレンズ交換の気軽さ、迅速さを失ってしまうからです。この空間を埋める板バネには様々な方式がありますが、C/Y - EOSのように薄いアダプターでは苦しい代替構造となります。

ただし、遊びがあるということは調整の余地があるということで、ユーザー自身でマウントの固さを変えることができます。また、カメラ側に接続するCのバヨネットは加工精度や相性のみが重要となり、マウント差込み時の固さやスムーズさは改善しようがありません。これはまれに純正同士の組み合わせでも起こる問題です。

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マウントアダプターには大なり小なりガタがあるのですが、バヨネットの噛み合わせがゆるい時に起こる縦方向のガタ(赤矢印)、ピント操作時に回転方向にズレてしまうマウント停止位置のガタ(青矢印)という2種類があります。この内、縦方向のガタはセンサーとの平行維持に影響しますが前述のように調整可能、回転方向のガタはマウント停止に関する加工精度がシビアなことが原因で、レンズ受け側/カメラ差込み側の両方で起こる可能性がありますが描写には無関係なのである程度の我慢が必要です。ただし、安い中国製品などで、あまりにもピント操作時に回転方向のガタつきが気になるようなら買い換えたほうがいいでしょう。

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たまたま増えてしまった国産アダプター三種。左から右に向かって順に新しい物となります。

この中で、左端のKindaiは絞り指標の中心が傾き、ミラー衝突の危険が増すので中古では買ってはいけません。見わけ方はレンズ装着時の摩擦を減らす浅い段差がなく受け側が真っ平なことです。真ん中はHANSAですがRAYQUAL第一世代のOEM、右端はRAYQUAL第二世代で、手持ちの個体を見るかぎり無限遠が出やすいのが第二世代で、新しい方はごくごく微妙にオーバーインフ側に安全マージンをとっているのかな?と思われます。(あるいは逆に、第一世代がアンダーインフぎみ)

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RAYQUAL第二世代はバヨネットのシルバーを隠す構造になっており、レンズロックの艶消し塗装と合わせてかなり贅沢な仕様です。さらに現行品となる第三世代はアダプタの装着感に配慮したのか、レンズ接触面の金属地をあえて残すなどオーバースペックの域にまで達しています。

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Kindai
受け側のバヨネット全体が端に向けて割れている古いタイプ。この方式はライカの古いリング類にも見られて調整が簡単ですが、かなり少数派で今ではほとんど見かけません。世代的にはデジタル一眼レフが一般化する以前のものでしょうか。
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HANSA
宮本製作所がRAYQUALというオリジナルブランドを始めた頃のOEM。受け側のバヨネットに溝が入れられていて、その隙間を拡げることで抵抗を作り出します。初代EOS 5DでCONTAXレンズを使うことが盛りあがっていた時期の製品です。
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RAYQUAL第ニ世代
受け側の構造については第一世代と同じです。付け替えを頻繁にしているとバヨネットが次第にゆるんでくるので溝に精密ドライバーなどを差し入れて慎重に膨らませます。RAYQUALは他の中華アダプタよりもこの部分が固いので、しっかりとレンズを保持できる期間が長いようです。
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CONTAX中間リング(※参考 この画像のみ受け側が下向き)
アダプターの厚みに余裕があるとボディと同じ板バネ方式が可能で、スムーズな装着感となります。正確にはボディの構造とは違いますがレンズマウント - 板バネ - アダプター本体という作りは余裕があり安心感が違います。
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C/Y-m4/3(※参考)
一般的な板バネ方式はこれ。構造的にはベストですが、中華アダプターはろくな調整なく出荷されているので装着が固い物が多いです。構造は単純なのでプラスドライバーで分解して調整し直すか、割りばしなどで裏側からえいえいっと板バネを潰しましょう。
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メーカー問わず、さまざまなカメラやアクセサリーを使用してみると、実はこのバヨネットマウントというのはすごく繊細(面倒)な物だと気づくはずです。レンズの個体差やアクセサリーの種類によっても装着時の固さが違う場合があるので、厚みがないC/Y - EOSなんて言わずもがな。なので、しっかりと余裕のある構造でアダプターが作れ、ミラー衝突の心配のないミラーレスがベターでは?と最初の言葉に戻るのです。アダプターもボディに着けっ放しが可能ですからとても経済的ですね。

RAYQUALなど国産品の値段に疑問を持つ方もいると思いますが、長く使っていれば確実に精度、剛性、安心感で差を感じると思います。逆に言えば、着けっ放しかちょっとした腰掛け程度の使用なら中国製で十分です。中国製のマウントアダプターの中には出来の良い物もありますが、いつ買っても同じ品質であるといえないのが難点。





【C/Y-EOSを買った時の調整例】
コピーされまくっている中国製のマウントアダプター。可もなく不可もない物ですが、まずはレンズにあてがってみます。
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かなりきつかったので、途中でねじ込みをやめ爪の調整をおこないます。このアダプタは爪の寸法に余裕がないのか、板バネの役割となる溝をかなり潰した状態でようやくスムーズになりました。
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レンズロックもきつきつなので、逆方向に曲げを戻しました。ここは好みと自己責任で。結果的にはこの曲がり具合がマウント時の抵抗を強めていた原因だったようで、ドライバーで外して調整し直すと、装着感も若干ゆるくなったので爪の溝を少し膨らませました。ちなみにこのパーツをよく見るとネジ穴に幅があり、この部分の位置決めで回転方向の遊びが決まるようです。
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EOSへの装着も固かったので、マウントに擦れる部分をていねいに拭き直したら気持ち感触が良くなりました。これ以上、なにかするには爪の研磨が必要になってしまいます。最後に遠景のピント具合を見て、とりあえず実用開始といったところですが、Planar 50mm F1.4 AEJにはちょうど良いけどMMJにはまだ固めといった相性があります。
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このアダプターの個体評価は、1: 装着感はいまいち、2: ごく普通のオーバーインフ、3: レンズロックの調整いまいち、といったところでABC評価のB-。



【C/Y-EOSを買った時の調整例 その2】
コンタックスでは非常に珍しい薄型の板バネ式アダプター。これの生産元はhttp://www.kentfaith.com/で、一般的なアダプターの評価を1: 精度、2: 質感、3: 装着感とするならば、2と3が高級品に匹敵しつつも1が完璧ではなく、Amazonでも品質のばらつきが報告されています。ただし、一貫してメーカー名入り、プリントされた箱つきで商品展開していることからも、低価格品ながら当たり率が高いアダプターメーカーとして自分は認識しています。ABC評価ならAが手に入りやすい。
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このメーカーの製品はすでにいろいろ買っていますが、C/Y-EOSにはレンズマウントが妙にたわむ感じがあるので分解してみました。中国製マウントアダプターを分解するのは簡単で、当然ながら低コスト品にゆるみ止めなど塗られていないので0番ドライバー1本でバラバラにできます。
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ドライバーは、ネジ頭への食いつきと力の掛かり具合などから有名メーカーをお勧めします。きちんとしたものでも、たかだか数百円ですので。



裏側の部分拡大。下の画像と合わせて見るとこれでいいのか…?という疑問がわきます。レンズマウントを支えているのはネジ受け部の狭い面積とフチのわずかなでっぱりのみで、内側三段目の接地はありません。マイクロメーターがないので、この二段目も本当にきっちり板バネリングを挟み込む精度が出ているのか不明です。
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まあそれはそれとして、本体のネジ穴周囲にバリが出ていたので不要なマイナスドライバーでガリッと削りつつ、板バネがリング一体型だとキツさ調整の逃げがないので、思いきってパーツを三つに切ることにしました。(※レンズ装着時の感触が適切なら不要)
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作業途中の画像は省略、板バネリングはバラになっても落ちない構造になっているので、うまい具合に元通りになりました。マウント金具がたわむ原因はネジ穴のバリだったようで、きちんとカッチリ感が出るようになりました。


以上、このような作りなので重量級のレンズは怖いと思いますが、手持ちの中ではオーバーインフが一番多くて、無限遠の怪しい広角系やズームレンズは確実にピントが行き過ぎる様子が確認できました。(つまり、ボディによってはミラー衝突の危険度が上がる

このマウントアダプタを選ぶ方は以上の実態を知っておいて、軽めの標準~広角系に使うと良いかなと思います。個体評価は、1: 装着感は非常に良い、2: がっつりオーバーインフ、3: やや疑問のある構造、といったところでABCの注釈付きA評価。この会社が従来のワンピース構造のC/Y-EOSも併売してくれれば助かるんですけどね。

※レンズロックの材質が柔らかいのか、EOSから外す際にレンズが勝手に外れ、アダプタがボディに残ってしまう現象が発生しています。ロック部品の曲げをペンチで直線的にしたら改善しました。
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