まずはこの写真が発端でした。
このレンズは逆光でどんな写りをするのだろうと構えてみたらこの有様。
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次にこの場面。
普通にまとまる状況を選んだはずなのに、また下半分に盛大なフレア。
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どちらかというとMM派だった自分はこれまでの経験から外れるこのフレアにおおいに首をひねりました。あれ? CONTAXって、こんなに逆光に弱かったっけ?
 
ものすごーく解せないので、なにか原因があるはずと、S-Planar 60mm F2.8の鏡胴をなめ回すようにしつこく観察してみると、レンズブロック内部にいかにも反射の原因となりそうな平らな部位があることに気づきました。おそらくは、斜めから入ってきた強い光がここに反射し、冒頭の写真のような盛大なフレアを発生させるのでしょう。

そこで、ふと過去のいやな記憶を思い出しました。Planar 135mm F2のありえないほどの逆光耐性の低さ。

Planar 135mm F2もちょうどこのレンズのように、作画効果としてごまかせない無粋なフレアを出します。当時は、たかが5群5枚のレンズなのになぜ?って首をひねりましたが、逆に思い切って光源を画面のど真ん中に入れこむと盛大なフレアは収まり普通の逆光写真になるのです。

直射光が斜めから入るとNG、正面から入るとOK。
そもそも、フレア、ゴーストって一般的にはどうして起こるの?


ここでお勉強。

株式会社レンズ設計支援 レンズ設計光学講座
http://www.lenses-ds.co.jp/myweb11_29.html

ゴースト:
・高輝度物体の正規の像以外に存在しなかった像を作る現象
・レンズ面で反射を繰り返すことにより光の輪や玉で画像として写る

フレーア:
・輝度一様な物体の像の周りに広がりむらになる現象
・レンズ面や内で光の反射が複雑に起こり発生する光のカブリ現象
・画像の一部や全体がに白っぽくなったり色のにじみが生じる

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正直、このページに書いてあるほとんどが専門的過ぎて分かりませんが、“鏡筒内面反射広域フレーア”という項目があり、ようするに今回のケースはこれかなと思いました。

ふと気がつけば、Planar 135mm F2にも鏡胴内部にまっ平らな側面が多く存在します。レンズの逆光性能を語る際に、一般的な解説ではコーティングやガラスの枚数ばかりが取り沙汰されますが、実は鏡胴の内部構造にも問題となる要因はあるということですね。これ、おそらく作りの甘いオールドレンズなら珍しくない事例でしょうが、なにぶん自分はCONTAX専門でしかも後期型のMMJ主体なのでずっと気がつきませんでした。

しかし、室内の電灯にレンズを向けて明確に明るくなる部位があるか? たったそれだけのことなのにカメラ専門誌がこのことにふれていないのはとても不思議です。いまどきのAFレンズはガラスの薄型化が進み、内部構造に余裕があるからか、こういった指向性のあるフレアはすでに問題とはならないのでしょうか?



……とまあ、現在のAFレンズの話はさておき、手持ちのCONTAXレンズをながめてみると、内部構造はおおまかに2種類にわかれていました。一方はフレアカッターのような段々のみのタイプ、もう一方は段々の間に平らな面が目立つタイプ。おそらくはこの違いによって、逆光に強いグループとそうでないグループにわかれるのではないかと思います。


Planar 85mm F1.4 MMJ
見るからにまずそうな平面があり、85mmで盛大なフレアが発生する場合はここに強い光が当たっているはずです。
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Distagon 35mm F1.4 MMJ
明確な反射要因がなく、CONTAXのこのタイプはおおむね逆光に強い印象があります。
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Tele-Tessar 200mm F3.5 AEG
鏡胴内部の懐が深く、レンズ枚数が少ないので反射要因が極小の望遠レンズ。実撮影でもかなりの無茶ができた記憶があります。
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“光を切る”という行為は反射防止の基本中の基本であり、ハレ切りはもちろんのこと、レンズ内部の様々な部位にはネジのような溝切りがあり、これに究極を求めると蛇腹という存在になるのでしょう。

S-Planar 60mm F2.8も開放から1段絞って光を切るだけで、前述の内面反射によるフレアは綺麗に消え去ります。ただし、S-Planarの場合は前玉があれだけ奥まっているのにも関わらず画面外の逆光に影響されることが不思議で仕方がなく、どうも手前のすり鉢上の部分が逆に有害光を導いてしまっているような気がしてなりません。あのパーツ、等倍繰り出しに必要なヘリコイドの空間を埋めているのだと思いますが、普通に円筒形にして光をざくっと切る構造のほうが性能が良かったんじゃ……。


最後にひとつだけ。

CONTAXはAEJ/AEGからMMJに移行する際に反射防止関連の改良があるので、もしかしたらS-PlanarもMakro-Planarに名前が変わるタイミングで問題箇所の改善がおこなわれているかもしれません。Planar 135mm F2も記念レンズのMMGでは小改良があったなんて話も聞きますし。


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カテゴリ :「S-Planar 60mm F2.8」