デジタルでのアダプター使用は実絞りになるのでオススメしません、と書いていましたが、フルサイズミラーレスの登場により実絞りが不便にならず運用できるようになったので、CONTAX含むオールドレンズは万能ではないが、とてもオススメである!と修正しておきます。

レンズ評価というのは何を重視するかで変わってくるので、正解を提示する内容ではないことにご留意ください。☆5つで最高。

9590


【Planar編】

Planar 50mm F1.4
オススメ度 ☆☆☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆☆☆

安い、軽い、ちいさい、大口径、万能画角と、ようするに一般の50mm F1.4が良い理由と同じでCONTAXに興味を持つならこのレンズから。もっとも手軽にPlanarが味わえます。ただし、ありふれたガウスタイプなので他と比較して特別な何かがあるわけでもなく、個性を重視するなら他のオールドレンズのほうが面白いと思います。CONTAXは全般的に現代と近代の狭間に位置するレンズで、その古臭さのなかに衰えない発色と階調の良さが持ち味となります。樽歪曲は酷いので、直線物を主題とする撮影はオススメしません。これで☆ひとつ減。

フルサイズより小さなフォーマットでは中望遠になってしまうので、そこも考慮が必要。



Planar 50mm F1.7 
オススメ度 ☆☆☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆☆

本来は☆5つのオススメ度なのですが、50mm F1.4との上下関係から外装がプラ鏡胴、最短60cmと微妙に制限をかけられているのが残念なところ。それ以外の描写性能としては、まさに“暗いレンズは高性能”という定番文句を体現していて、絞り開放のピントはくっきり、歪曲も微妙に改善、それでいて全体の写りは50mm F1.4の発色、階調を踏襲しているというお買い得レンズ。

絞り開放で撮ってもピント面がぼやっとしないので硬い物の描写に向いており、街中スナップには適任。重量の軽さも考慮すると、実用派にはたいへん助かるレンズとなるでしょう。ただし、デジタルでは色収差が50mm F1.4よりやや目につくので、そこだけが設計上のコストダウンと思われます。



Planar 85mm F1.4
オススメ度 ☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆☆☆

奇跡のような収差バランスで、光によってはウットリするような開放描写を見せてくれます。ただし、それが作画に生かせるかは別問題。ファインダーの中でカマボコのように立ち上がるピントは撮影者をおおいに惑わせますが、繊細な結像面は確かにその中に存在します。一眼レフでは三脚を立てて、ピントブラケットをしなければならないレンズ。ポートレートで美しい写真が撮れそうですが、それも被写体が石のように動かないといった条件つき。普通にAFの中望遠をオススメします(自爆)。絞っても繊細でやわらかなので、絶対にポートレートを想定して設計したはず。



Planar 100mm F2
オススメ度 ☆☆☆☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆

とても優等生で書くことがありません。Planarの持つ良さをそのままに、整った画質と見やすいピント。現実には実撮影で打率の劣るであろう85mm F1.4のほうが売れたということで、人間の業の深さを思いしらされます。正直に告白すると、自分も使い込む前に手放しました。不満がない描写が不満という……。絞り開放では85mm F1.4がボヤッふわっ、100mm F2がキリッぬめって感じ。真面目に解説すると、やわらかな開放画質から徐々にコントラストの上がっていく85mm F1.4に対し、最初からコントラストが十分というのが100mm F2。



Planar 135mm F2
オススメ度 ☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆

実は85mm F1.4よりも癖玉ではないかと思います。その理由はこのレンズだけ他のCONTAXレンズと根本的に写りがそろわないこと、腰高なかるい描写が被写体(状況)を選ぶこと、はまった時はなんとも言いがたい極上の階調を見せること、逆光に非常に弱いこと、そして使いがたい135mmの画角であるということ。全体としてはいろいろ矛盾を含んだレンズで、本気で撮れば撮るほどモヤモヤ、ヤキモキが溜まっていくはずです。85mm F1.4と比較してピントはきちんと見えるので、ポートレートには良いかもしれません。

とにかく、単調に写るときと(特に赤い光の色再現がオレンジ一辺倒で良くない)そうでないときの落差が激しいレンズで、800g近くの重さが恨めしくなります。かといって、簡単にはあきらめきれない外観の良さと、“望遠のPlanar”という希少性を持つマニアにとって魔性のような存在。



Planar 135mm F2 + Mutar III(1.4×)
オススメ度 ☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆

そんなに難しいならテレコン使って200mm相当ならどうじゃ~~!っと奢ってみましたが、レンズの本質なんて変わらず。無駄手間でした、とほほ。



S-Planar 60mm F2.8
オススメ度 ☆☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆

標準マクロが主流でない理由をヒシヒシと実感するレンズです。60mmということで中~遠景はやや狭く、寄ると近すぎて前ボケが扱いづらいなどの画角的な問題があり、ただ被写体をとらえるだけになりがち。結像面はキレがあり、CONTAXの階調や色の良さをそのままにマクロレンズとしての迫力を楽しむことができます。

レンズ描写としては非常に真っ当な方向性で、開放からのシャープネスと歪まない直線は雰囲気重視の50mm F1.4と対照的で、この二本を使いわけると楽しいかも。時代によって描写が若干変わっているようで、現代的な発色の良さとコントラストが欲しい場合は銀マウント(Makro-Planar含む)、古めかしいおだやかさが欲しい場合は黒マウントがいいようです。

APS以下は中望遠となるのでオススメですが、鏡胴の重さも加味して☆ひとつ減。



Makro-Planar 60mm F2.8C
オススメ度 ☆☆☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆ 

一般的な標準マクロの撮影シーンを考えると、撮影倍率を割り切ったこの仕様は正解だと思います。寸胴の等倍タイプで寄ってみればわかりますが、1/2倍付近ですでに鏡胴先端が被写体の一部に触れそうになり難儀します。ただし、この時代のMakro-Planarはかなりヌケの良さがあるので、シャープ、クリアー、発色良しをCONTAXとしてどう思うかが選択のキモ。

鏡胴の作りが良く、マクロで唯一のギザギザにならない絞り羽根だったので、所有していた当時はカワイイ奴でした。



Makro-Planar 100mm F2.8
オススメ度 ☆☆☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆

一般的なマクロレンズの持つキレの良さをもたないので、解像による迫力を期待すると肩透かしを食らいます。とはいえ、CONTAXの良さがそのままマクロ域に持ち込まれた立体描写は、国産マクロに慣れ親しんだ方にそれなりの驚きを与えるようです。発色も派手とはいえず、独特の厚みとなる抜けの悪さを大人しくてつまらないと見るか、上品で美しいと見るかは普段の常用レンズ次第かも。定価20万円近くの物がずっと中古の安値安定という事実がユーザーの正直な評価なのかもしれません。今ならコシナのMakro-Planar 100mm F2のほうがおもしろいはずですが、基本的に描写は同じ方向性なので注意。



S-Planar 100mm F4 Bellows
オススメ度 ☆☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆☆☆

開放描写がやさしいCONTAXという常識を覆すハイコントラストですが、よくよく考えれば開放F4の暗いレンズなので当たり前かなとも思います。描写のイメージとしてはCONTAX Gレンズのハイコントラストに初期のAEタイプのおだやかな色と厚みが加わりながら、中判レンズの優雅なボケを持つといったところ。マクロ域での解像力が凄いらしいですが、それを現代のレベルで語って良いのかは未確認。しかし、実際の撮影でピント合わせに迷ったことはありません。

ヘリコイドがないので星を減点しましたが、最近はアダプタ関連のパーツも多いのでなんとかできないこともないはず。ベローズは重すぎるうえに縦方向のアオリができないので、あまり意味がありません。



Apo-Makro-Planar 120mm F4(135判で使用)
オススメ度 ☆☆
チャレンジ精神でのオススメ度 ☆☆☆☆☆

レンズ構成が似ているS-Planar 100mmのハイコントラストをマイルドにして、ゆったりしたボケとキレ、分厚い階調はそのままに、MMJ最後期の高発色を足したような決定版です。さらに、アポクロマート補正とフローティングによって∞から1:1まで保証された描写性能は完璧!と言いたいところですが、残念なことに等倍解像の物足りなさがあるのです。その理由は、中判レンズに135判ほどの画質を求めなかった昔の設計方針がからんでいそうですが、わざわざ高価な電子接点付アダプターを用意するのに解像が手持ちの135用レンズに負けてしまうようでは星評価を下げざるをえません。

等倍のキレ以外ではとても力のあるレンズで、逆光でも色収差は見えがたく、分厚い階調にどわっと湧きでてくるような色の多彩さはRAW現像がとても楽しいです。開放F4なので重さはMakro-Planar 100mmと同程度ですが、かなり太くカメラバッグの容積を取るのでご注意を。

【関連】
CONTAXレンズのオススメ度 Distagon、Tessar、Sonnar編
http://sstylery.blog.jp/archives/15859771.html

はじめてのCONTAX 購入ガイド 中古相場の雑感なども
http://sstylery.blog.jp/archives/40152845.html

とにかく楽しいPlanar 85mm F1.4。
唯一、うるさ型の人に向かないのは強い逆光時の色収差でしょうか。